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    校舎を本が満たしている。

    トップライトから中央の吹き抜けに光が差し込む。船に例えられる4階建ての校舎の〝右舷〟と〝左舷〟には教室が並ぶ。目を引くのが廊下や壁に沿って本棚が配置された光景。廊下を歩く生徒たちは本の海原を進んでいるようだ。

    大阪国際中学校高等学校(大阪府守口市)が掲げる「校舎まるごと図書館」。身近に本を感じる場は、令和4年4月の新校舎の開校に合わせて導入された。吉本卓(たかし)・副校長(69)は「主体的に学び、考える力を養うベースにあるのが図書教育です」と意義を説明する。

    特徴は洋書を含む約2万冊の蔵書の本棚への配置。「哲学」「歴史」など一般的な日本十進分類法ではなく、オリジナルの5つのテーマで配架している。司書教諭の角井(かくい)貴乃さん(37)が案内の途中で、1階の「世界へはばたく」のテーマの本棚から1冊を手に取った。

    「このマザー・テレサの本は、普通は『社会福祉』や『キリスト教』に分類されますが、あえて『インド』のエリアに置いています。まず『インドで活動した人』だと知ってもらい、そこから知識が広がれば」

    本来は並ばない本が隣り合う。本棚を眺めたり本を探したりするうち、意外な本が目に留まり、手に取る―。そんな本との出会いを目指しているという。

    1階のカウンターで貸し出しや相談に対応するのは、角井さんと紀伊國屋書店から派遣された司書の計7人。2カ所ある「今月の本」のコーナーでは毎月テーマを決めて本を紹介。カウンターには日々の感想や意見を書くことができる自由帳を設置するなど、生徒が本に親しめるように全員で取り組んでいる。

    ユニークなのは4年目を迎える「本の帯プロジェクト」。学校の本を借りて内容を紹介する「帯」の作成を、高校1年生の夏休みの課題としている。作品は文化祭で展示されるほか、紀伊國屋書店の梅田本店で実際に店頭に並ぶとあって、生徒のモチベーションも高い。

    大阪国際中学校高等学校 廊下に本棚が設置され、待ち時間などに本に触れることができる=大阪府守口市(彦野公太朗撮影)

    「多い日は100冊弱を貸し出します。もともと気軽な『立ち読み』を誘発することを狙っているので、数字に現れないデータも多いです。でも、この学校で1年間で1冊も本に触れない生徒はほぼゼロですね」(角井さん)。

    今年に入って、126冊の本を読んだという高校2年生の吉村蓮花(はすは)さんは「学校の本棚を眺めているのが好き。いろんな本を見つけて、こんな世界があるんだと気がつく。自分の世界が広がる感じがうれしいです」と笑顔を見せる。

    着実に生徒に届いている学校と司書の願い。本だけではない。本に出合う喜びを支える人の思いもまた、校舎をいっぱいに満たしている。

    筆者:堀川晶伸(産経新聞)

    司書教諭の角井さんの1冊は「言語化」がテーマ。著者は「あのー」など発話の前に無意識に出る「フィラー」と呼ばれる音に、実は大切な役割がいくつもあると分析しています。

    「言語化で、過不足なく整理し、順序立てて話せたら、物事は円滑に進むし、心も軽くなる。生きやすくもなりますよね」と角井さん。それでも「沈黙やフィラーや言葉にできない靄(もや)のかかった状態をだめと言いたくないんです。人間として生きている実感をくれるので」と打ち明けます。

    角井さんは「散らかっている場所にこそ、その人らしさが落ちているのでは」と指摘。きれいに整えられたものを評価してしまう社会では「聴いたり、想像したりすること」が軽視されがち―とし、「司書教諭としても、一人の人生としても、それらをすっぽかしたくないと考えさせられる本です」と話しています。

    ■大阪国際中学校高等学校 大阪府守口市松下町1-28。発祥は昭和4年に設立された帝国高等女学校。「大阪国際滝井高等学校」と「大阪国際大和田中学校高等学校」を発展的に統合し、令和4年4月に男女共学の私立中高一貫校として開校した。校訓は「人間をみがく」。

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