「太陽と北風」、「ウサギと亀」、「アリとキリギリス」など日本人にも馴染みぶかい寓話集「イソップ物語」。そのいくつかのエピソードをモチーフに、オリジナルストーリーを立ち上げた韓国発ミュージカル『Story of Aesops 〜イソップ物語の物語〜』が、2025年のリーディング公演を経て、2026年7月12日(日)から26日まで、東京芸術劇場 シアターイーストで上演される。
    冨岡健翔、門田奈菜、白鳥光夏らがキャスト陣に名を連ねる本作で、ヒロインの父親や王など、重要な複数の役を演じるのは小柳友。『Once』『セツアンの善人』など近年、ミュージカル、ストレートを問わず話題の舞台で存在感を発揮する小柳が、本作の魅力について語ってくれた。

    ――イソップ物語がどのようにして成立したのかを描く本作ですが、企画についての最初の印象は?

    小柳 台本もないなか、最初にリーディング版を見せていただいたんです。そこで初めて内容を把握したんですが、「これは立ち上げたら面白くなるだろうな」とワクワクしました。ただ、リーディング版でとても明るい話だと感じたことが、脚本を読むとかなり印象が違いました。決して悪い意味ではなく、自分が演じるパビロスという役を通して脚本を読むことで作品のイメージが大きく変わることが印象深く、同時にやりがいも感じました。

    ――そもそも「イソップ物語」についてはどんな印象や思い出がありますか?
    特にお気に入りの話や印象深いエピソードなどはありますか?

    小柳 子どもの頃に絵本で読んだりした程度、脚本を読んで「あ、この物語もそうだったんだ?」と気づかされたくらいの知識でした。ただ、「ウサギと亀」のお話については、昔から「ウサギが努力したら良かったんじゃないの?」ってずっと思っていました(笑)。そこから得た教訓として「自分は努力のできるウサギになろう」と思ったんです。もっとも、大人になって感じるのは「自分はウサギである」と考えること自体、驕りだと。
    ただ、今回の物語で随所に“不幸の神”というのが出てくるんです。「不幸の神って何なのか?」と考えたら、やはり驕りや油断みたいなものがもたらす存在ではと思います。そう考えると、自分が「イソップ物語」から得た教訓というのはあながち間違いではないのかなと思いました。

    ――今回、ヒロインのタナエの父親のパピロス、王など複数の重要な役を演じます。

    小柳 最初にいただいたのがこの3役で、4役、5役と増えていって、もしかしたらもっと増えるかもしれません(笑)。この作品は、出演者全員がほぼ舞台上にいることになっていて、必ず何らかの役を演じているんです。ミュージカル部分だけでなく映像作品も含めて、僕は今回、初めて“トメ”の位置を担います。そこで主人公たちの壁となる存在でいなきゃいけないという重みを感じていますし、その立場を楽しむ事が出来れば良い作品になると感じています。

    ――本作は“物語”についての物語ですが、小柳さん自身が物語に救われた経験や、物語の大切さを感じた経験などがあれば教えてください。

    小柳 ご質問の趣旨からは少し外れるかもしれませんが、自分の人生ってまとめたら、どんな方でも同じだとは思いますが、ひとつの物語になると思ったことがありまして。2023年に『アンドレ・デジール 最後の作品』で初めてミュージカルに参加して、その後、『ハネムーン・イン・ベガス』に出て「歌いたい!」と強く思ったんです。それが『Once』へとつながっていくんですけど、ある時、母から「音楽に逃げてない?」と言われて、自分でも「ちゃんと芝居に向き合わなきゃ」と思ったんです。『Once』はバンドの話ですけど、演出家に「楽器を持たずに演奏していることを表現してくれ」と言われて、それって自分の人生そのものだなと感じたんです。

    ――もともと、音楽活動をしていて、俳優に専念するためにバンドから離れた小柳さんが、ミュージカル(音楽)を通して俳優として芝居に向き合うという……。

    小柳 そうなんです(笑)。『Once』では「俳優こそ仕事だ」と思ってやってみたら、ものすごく難しく、「もう魂で歌うしかない!」と思って歌ったら、ご覧になった方から「あそこで何かが生まれた」と言っていただいたんです。「これは何かひとつ、自分の中で越えられたのかも」と思った矢先、東京公演の後に母が亡くなって、葬儀の後、名古屋に駆けつけたはいいけどボロボロの状態で。
    そんな時に鶴見辰吾さんが演じる役の「ただ生きろ。母さんを喜ばせろ」というセリフを聞いて母の死後初めて涙がダーッと出てきました。おさえられずそのまま舞台に上がり号泣しながら歌ったら、公演後に演出の稲葉さんが飛んできて「メッチャ良かったよ!」と言ってくれました。本当に芝居って何だろう……? これからも俳優として、自分の物語を完成させるために生きていくと思います。

    取材・文/黒豆直樹
    撮影/中村嘉昭

    <公演情報>
    musical『Story of Aesops ~イソップ物語の物語~』

    作・作詞・音楽:ソ ユンミ
    上演台本・訳詞・演出:相原雪月花
    音楽監督:伊藤祥子

    出演:
    冨岡健翔
    門田奈菜/白鳥光夏(Wキャスト)
    佐藤匠/若松渓太(Wキャスト)
    新野尾七奈/木下葵巴(Wキャスト)
    沼尾みゆき/雅原慶(Wキャスト)
    小柳友/川原一馬(Wキャスト)

    【東京公演】
    2026年7月12日(日)〜26日(日)
    会場:東京芸術劇場 シアターイースト

    【大阪公演】
    2026年8月8日(土)・9日(日)
    会場:サンケイホールブリーゼ

    チケット情報:
    https://w.pia.jp/t/story-of-aesops/

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