カドブン meets 本が好き!

『少女Aが消えたとき』レビュー【本が好き!×カドブン】
書評でつながる読書コミュニティサイト「本が好き!」(https://www.honzuki.jp/)に寄せられた、対象のKADOKAWA作品のレビューの中から、毎月のベストレビューを発表します!
今回のベストレビューは、伊兼源太郎さんの『少女Aが消えたとき』に決まりました。ありがとうございました。
こういうクライム小説が読みたかったんだ、と気づいた。
レビュアー:クロニスタさん
最近ある賞を受賞した犯罪小説を読んだ。なんだか、登場する人物たちがドタバタと暴れまくり、落ち着きがなく、会話が軽い。もっと丁寧に人物を深掘りしたほうがストーリーに厚みが出るのに、と思った。
その次に読んだ小説がこの作品。あー、こういうことだよ、この重厚感、なかなか事件の展開が見通せないこのジリジリ感、これがクライム小説の醍醐味でしょ!
捜査の進展がなく悩みもがく捜査関係者、そして必死にネタをつかもうとする新聞記者。お互いがお互いを利用できるなら利用したい。でも失態をおかせない。その微妙な距離感での腹の探り合い。でも目指すところは同じ。犯罪被害者をなんとしても救いだすんだ、という鋼の意思が言葉の端々から読み取れる。
事件はある大型スーパーの駐車場から中学2年生の少女が行方不明になったことからはじまる。防犯カメラやドライブレコーダーの映像を解析しても、車に乗り込んだ、もしくは押し込まれた決定的な画像がなかった。いたずら目的の未成年誘拐なのか、それとも少女自らの意思で失踪したのか。最悪の事態も想定して捜査機関と新聞社が動き出す。
作中で幾度となく主人公の記者が、新聞社のことを世間ではオールドメディアとか、マスゴミだと揶揄されている、と口に出す。もう必要ないと思う人間が世の中にはたくさんいる、とも。
しかし、だけれども、そう思われていようとも、と場面ごとに主人公が使う言葉は違うが、俺はこの仕事が必要なものだと信じている、と芯が揺るがない。
どんなに斬新なアイデアでも、人間が描けていない小説はつまらない。
著者の深い人物描写に賞賛を惜しまない。
そしてタイトルの「少女A」に込められた意味が徐々に明らかになるラストシーン。とてもせつない。人の優しさ、弱さが滲み出ている。人を傷つけるのも人間だし、その傷を癒やすのも人間だ。悲しいところもあるけれど、救いがあった。
本の帯には「唯一無二の警察小説」とある。
嘘偽りはない。
▼クロニスタさんのページ【本が好き!】
https://www.honzuki.jp/user/homepage/no12301/index.html
書誌情報
書 名:少女Aが消えたとき
著 者:伊兼源太郎
発売日:2026年04月22日
誰も暴いてはいけない真相がある――警察と報道の交差を描く社会派ミステリ
千葉県美浜市のスーパーマーケット駐車場から、十四歳の少女が行方不明になった。誘拐・連れ去りの恐れから情報封鎖が実施されるが、報日新聞の記者「事件持ち」こと永尾は、ある手がかりを基に少女が姿を消したことをつかむ。県警幹部との取引で誘拐の報道をしないと約束する永尾。だが、この事件の報道を巡り支局内でトラブルが巻き起こる。一方、県警は同時刻に駐車場にいた前科のある人物を誘拐の容疑者として絞り、捜査を進めるが、県警捜査一課の刑事・津崎はその見立てにかすかな違和感を感じていた。少女が消えた理由とは? 警察と報道の存在意義とは? 事件を追う執念とあまりに切ない真相が心を飲み込む、一気読み必至の社会派ミステリ。
詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322512001928/
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