多様性と豊かさを世界に伝えることが私たちの役割

    ――歌詞が日本語であることは、日本国外でのキャリア拡大の障壁になると思いますか。

    Tiger:世界は確実に変わっています。ロザリアやバッド·バニーが証明しているように、スペイン語で歌っていても世界中のオーディエンスが熱狂する時代です。先日ロンドンのO2でロザリアのライブを観ましたが、観客は言語よりも彼女のエネルギーと表現に反応していました。言語を超えた何かを音楽とエネルギーで伝えることができる。英語の曲が多い方が有利な面はありますが、それが全てではありません。日本のアーティストやマネジメントに伝えたいのは、「完璧な英語でなければ世界に出られない」という思い込みを手放してほしいということです。

    ――これまで、どのようなアーティストとお仕事してきましたか。

    Tiger:私たちは、それぞれ個人として、またCHORUSの内外で共に多くの日本のアーティストたちと仕事をしてきました。お名前を挙げさせていただくとすれば、宇多田ヒカル、藤井 風、YOASOBI、Rina Sawayama、青葉市子、細野晴臣、常田大希、Tohji、羊文学、岡嶋かな多といった皆さんです。 こうした仕事はアーティストを取り巻く素晴らしいチームなしには成り立たないということについても、改めて御礼を伝えたいと思います。

    私たちはアーティストを「日本のアーティスト」ではなく「グローバルアーティスト」として捉えています。宇多田ヒカルを例に挙げると、彼女のことを「史上最高のJ-Popアーティスト」という切り口では紹介しません。彼女はただ、史上最高で、世界レベルのアーティストです。それがCHORUSの根本的な哲学です。

    宇多田ヒカルさんとご一緒した仕事も、本当に特別なものでした。彼女は唯一無二のアイコン的存在です。そして、ヒカルさんに対して素晴らしいビジョンを持つ沖田 英宣さん、梶 望さん、岡地 美奈さんとご一緒できることは大変光栄でした。アルバム『Bad Mode』は、Skrillex、A. G. Cook、Floating Pointsといったアーティストとのコラボレーションを通じて、日本国内にとどまらず、海外の音楽シーンにおいても文化的・芸術的な存在感を持つ作品となりました。

    デビュー25周年記念プロジェクトでは、Floating Pointsがプロデュースした楽曲「Electricity」に関連してさまざまなコラボレーションを企画しました。その一環として、私たちはヒカルさんとArcaをつなぎ、Arcaが同曲に参加するコラボレーションを実現しました。また、二人を特集した『i-D』誌での大型フィーチャーと撮影も行い、さらにヒカルさんはArcaのコーチェラ公演にスペシャルゲストとして出演しました。それはArcaにとってもヒカルさんにとっても非常に大きな出来事であり、そのようなクリエイティブなつながりが生まれる瞬間を目の当たりにできたことは素晴らしい経験でした。私たちは、楽曲制作の段階からグローバルなキャンペーン設計、そして実際のプロモーション展開までを一貫してサポートすることを大切にしています。それこそが、CHORUSが提供する価値の重要な部分だと考えています。

    Hiroki:藤井 風さんとの仕事は、私にとって特に印象深い経験です。2022年春、ロサンゼルスへの初渡航に同行し、最初にセッティングしたグラミー賞受賞ソングライターのTobias Jesso Jr.とプロデューサーのSir Nolanとの共同制作セッションで生まれた最初の曲が「Hachikō」で、そのまま3rdアルバム『Prema』のリードシングルになりました。その後、2023年から2024年にかけて、ロサンゼルスで何度も共に時間を過ごしながら、 風さんは『Prema』に収録される楽曲を書き上げていきました。そして最終的に、韓国·済州島にてプロデューサーの250を迎え、アルバムを完成させました。させ、Republic Records、Polydor Recordsとの契約、William Morrisとのライブ契約など、チームの尽力によってさまざまな重要な展開が実現していったことも印象に残っています。藤井 風さん、そしてアルバム『Prema』において、“インターナショナルプロデューサー & A&R”を務めることができたことは、私にとって大変光栄なことです。私たちは、彼を単にJ-Popの文脈におけるアーティストとしてではなく、すでに世界で最も偉大なアーティストの一人として捉えています。日本国内においても、『Prema』が【MUSIC AWARDS JAPAN】で「最優秀アルバム賞」を受賞したことを、大変嬉しく、誇りに思っています。

    ――日本のアーティストが「J-Pop」というジャンルで括られることへの課題についてはどうお考えですか。

    Tiger:ジャンルによるカテゴリー分けは、どんな場合でも限界を生みますよね。K-Popの成功モデルを踏まえて「Japan」をブランドとして押し出す戦略も一つの手ですが、私たちはそれが全てだとは思っていません。Hirokiと私のバイカルチャーな視点から言えば、私たちが一緒に仕事をするアーティストの多くはすでにそのカテゴリーを超えています。日本のポップミュージックはJ-Popだけではない。ロックもヒップホップもフォークもある。その多様性と豊かさを世界に伝えることが私たちの役割だと思っています。

    ――ではグローバルアーティストとは、どういった存在だと思いますか。

    Tiger: 定義するのはなかなか難しいですが、私たちにとって真のグローバルアーティストとは、文化的にも音楽的にも国籍のカテゴリーを超えて共鳴する存在です。バッド・バニー、ロザリア、ビョークのような人たちは、出身地は重要ですが、それに定義はされない。サブリナ・カーペンターやエド・シーランと同じ括りで語られます。繰り返しになりますが、日本のアーティストをJ-Popに限定するのではなく、グローバルアーティストとして捉えることが大切です。彼らは世界最高のアーティストたちと肩を並べる資格があります。日本の音楽業界にとって、意識の転換が必要です。

    ――【MUSIC AWARDS JAPAN】に対する期待をお聞かせください。

    Hiroki:CEIPAが業界全体をまとめ、日本音楽のグローバル発信に向けて動いていることは、本当に素晴らしいことです。【MUSIC AWARDS JAPAN】がグラミー賞やブリット・アワードのような存在へと成長することで、世界のより多くの人々が日本の素晴らしいアーティストを発見できるようになる。その可能性にとても期待しています。日本の音楽業界がグローバル展開に向けて一体となって動いているこの流れは、確実に未来の成功につながると思います。

    ――今後の展望を教えていただけますか。

    Hiroki:まずお伝えしたいのは、日本の音楽業界、そしてアーティストやそのチームは本当に素晴らしいということです。 CHORUSはこれまでも一貫して、アーティストやチームの皆さんと密接に連携しながら、長期的な国際戦略パートナーとしてグローバル展開を支援し、その勢いをさらに加速させるサポート役でありたいと考えてきました。 私たちは、楽曲制作やアーティスト育成といった根幹の部分から関わり、海外展開の実行段階まで一貫して携わることを重視しています。そうすることで、グローバルなビジョンをより自然かつ戦略的に構築できると考えているからです。 世界の音楽業界、そして日本国内の音楽シーンは常に変化を続けています。それに伴い、日本のアーティストやチームが求めるものも変化しています。

    だからこそCHORUSも、その変化に合わせて自らのエコシステムを進化させ続け、アーティストやパートナーの皆さんを最適な形で支援できる体制づくりに取り組んでいます。 私たちは、グローバルでの成功とは、一度のバイラルヒットや単発のフェス出演によって決まるものではないと考えています。長期的なビジョンと文化的なポジショニング、強固なクリエイティブ基盤とアーティスト育成、地域ごとに最適化された継続的なファンコミュニティの形成、そして何より信頼関係の積み重ねこそが、持続的な国際的インパクトを生み出すのです。

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