PHOTO CREDIT:LOUIS VUITTON

    2027年春夏パリ・メンズファッションウィークで発表されたルイ・ヴィトンの最新コレクションは、サーフィン業界に大きな反響を呼んだ。

    単にサーフボードを持ったモデルがランウェイを歩くような”サーフ風ファッション”ではない。

     

    PHOTO CREDIT:LOUIS VUITTON
    PHOTO CREDIT:LOUIS VUITTON
    PHOTO CREDIT:LOUIS VUITTON

     

     

    メンズ・クリエイティブ・ディレクターのファレル・ウィリアムズは、ランウェイ中央に高さ約8メートル(26フィート)の人工波を建設。砂浜をイメージしたランウェイには実際に水が循環し、ショー全体が一つの”サーフスポット”として演出された。

    さらに南アフリカ出身のフリーサーファー、マイキー・フェブラリーを起用した映像作品を公開。ウェットスーツを思わせる素材や、潮風にさらされたようなデニム、ビーズ装飾、ロゴ入りサーフボードなど、コレクション全体が海とサーフィンをテーマに構成された。

     

    そして何より注目されたのが、フランス領ポリネシアでサンゴ礁の再生活動を行う「Coral Gardeners(コーラル・ガーデナーズ)」とのパートナーシップだ。

    しかし、このショーに対するサーフコミュニティの反応は決して一様ではなかった。

     

     

    カニエラ・スチュワートもランウェイを
    ウエットスーツやサーフボードにルイ・ヴィトンのロゴが

     

     

     

     

    最も肯定的な意見は、これまでファッション業界が表面的にしか扱ってこなかったサーフカルチャーを、ルイ・ヴィトンが本気でリスペクトしたというものだ。

     

    ショーに起用されたマイキー・フェブラリーは、競技サーフィンではなく、スタイルや表現を重視する現代を代表するフリーサーファーの一人。

    また、サーフボードやウェットスーツを単なるデザインモチーフではなく、素材や質感まで落とし込んだコレクションからは、サーフィンを単なる夏のレジャーではなく、一つのライフスタイルとして捉えている姿勢が感じられる。

     

    さらにCoral Gardenersとの協業についても、「単なるイメージ戦略ではなく、海洋保全への具体的なアクションを伴っている」と評価する声も少なくない。

     

     

     

    一方で、サーフィン専門メディアやコアなサーファーからは冷静な視点も多く聞かれた。サーフカルチャーは本来、高価なブランドとは距離を置き、自然の中で自由を求める価値観から発展してきた文化である。

    1960年代から70年代にかけてのカウンターカルチャー、DIY精神、ローカリズム。

    そこに数十万円、あるいは数百万円の価格帯となるラグジュアリーブランドが入り込むことに違和感を覚えるサーファーもいる。

    「サーフィンは買うものではなく、生き方だ。」

    そんな声は決して少なくなかった。

     

    https://eu.louisvuitton.com/eng-e1/magazine/articles/men-spring-summer-2027-show

     

     

     

    しかし、このコレクションを単なる”高級ブランドの便乗”と片付けるのは少し早計かもしれない。

    2024年のパリオリンピックでは、競技会場となったタヒチ・チョープーの映像がサーフィンを知らない世界中を魅了した。

    巨大なバレル、エメラルドグリーンの海、そして自然と共存するポリネシアの文化。

    あの映像によって、サーフィンは競技スポーツとしてだけではなく、美しさや哲学を持つカルチャーとして世界中へ発信された。

    その流れを受け、ファッション、アート、建築、音楽など異業種がサーフィンに注目するようになっている。

    ルイ・ヴィトンも、その大きな流れの一つと言えるだろう。

     

     

    今回、多くの海外サーフメディアが共通して評価していたのは、Coral Gardenersとの取り組みだった。

    ファッションブランドが海をテーマにすることは珍しくない。しかし、サンゴ礁再生活動までコミットするケースは決して多くない。もちろん、「環境活動をマーケティングに利用しているだけではないか」という見方もある。

     

    近年、ラグジュアリーブランドにはサステナビリティへの説明責任が求められており、こうした取り組みがブランド価値向上につながることも事実だ。

    それでも、もし資金や認知度が実際に海洋保全へ還元されるのであれば、その効果は決して小さくない。

    重要なのは、その活動が一過性のキャンペーンで終わるのか、それとも継続的な支援へと発展していくのかだ。

     

     

    かつてサーフィンは、一部の沿岸地域だけのカルチャーだった。

    それが映画となり、音楽となり、アートとなり、オリンピック競技となり、そして今や世界最高峰のラグジュアリーブランドのランウェイの中心に巨大な波がブレイクする時代になった。

     

    これはサーフィンが”商業化された”という見方もできる。しかし一方で、サーフカルチャーが世界中の文化に影響を与える存在へ成長した証でもある。

    重要なのは、その本質が失われないことだ。海への敬意。自然との共生。自由を愛する精神。それらを置き去りにしてしまえば、サーフィンは単なるデザインモチーフになってしまう。

    逆に、それらの価値観まで伝えることができるなら、ファッションはサーフカルチャーを世界へ広げる新たなメディアにもなり得る。

    ルイ・ヴィトンの2027年春夏コレクションは、単なるファッションショーではない。

    それは、「サーフカルチャーは誰のものなのか」、そして「世界的なカルチャーとなったサーフィンはこれからどこへ向かうのか」を私たちに問いかけた、一つの象徴的な出来事だった。

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