3

    「池袋ウエストゲートパーク」(TBS系)のワッキー役、「ごくせん」シリーズ(日本テレビ系)のクマこと熊井輝夫役で広く知られている脇知弘さん。プロレスラー、ワークショップ開催、YouTubeチャンネル「-ないんずといろ-」開設、歌手デビューなど幅広い分野で活躍。映画「罪の棘」(植田尚監督)が公開中。7月17日(金)に映画「キングダム 魂の決戦」(佐藤信介監督)の公開が控えている。(この記事は全3回の後編。前編と中編は記事下のリンクからご覧になれます)

    ■お酒が飲めないのに新宿2丁目のゲイバーで

    さまざまなチャレンジを続けてきた脇さんは、2012年に公開された主演映画「ふとめの国のありす」(松国美佳監督)でゲイバーのママ役に挑戦。この作品は、学生による商業映画製作を目的とした「トリウッドスタジオプロジェクト」の第7弾。

    同じ学校の先生を愛してしまった内気なゲイバーのママと女子高生の恋の行方を通じて、傷つきながらも誰かと向き合いたいと願う人たちを描いたもの。それぞれが不安や悩みを抱えながらも前に進もうとする姿を優しい目線で描いて話題に。

    好きな人と結ばれることはないと最初から諦めているゲイバーのママ・ありす(脇知弘)と、学校にも家にも居場所がない女子高生のうさぎ(木咲樹音)が好きになったのは、うさぎの担任教師(坂東工)。しかし、その先生は、求められれば誰にでも応じてしまう人。性格も境遇もすべてが違う3人の人生が絡まり合って…という展開。

    「僕は、新宿の2丁目のゲイバーが大好きで、一時期かなり行っていました。平塚に住んでいた時も、かなり遠かったですが行っていて。僕はお酒が飲めないのですが、終電がなくて帰れなくなった時に知り合いのお店に行って、安い金額でお茶とかを飲ませてもらって朝までいてそのまま帰ったりしていました。

    それで、ゲイバーで出会った方たちがたくさんいて、実は、その中のひとりが僕の中でありすのモデルになっています。絶対こういうことをするだろうなとか、その方の動きを真似したりして、ありすのキャラクターを作っていきました」

    ――皆さんユニークなキャラでしたね

    「そうですね。実は、撮ってくれた監督は25、6歳ぐらいのすごく可愛いらしい方だったのですが、その方がよく新宿の2丁目に行っていて、いつも行っていたお店のマスターをモデルにしてママの役を書いていたそうなんです。

    そのマスターはもう亡くなられたのですが、監督はずっと何かのモデルにできるかもしれないと思っていて、映画で書けたことができたと喜んでいました」

    5月14日(木)に放送された「未解決の女 警視庁文書捜査官 Season3」(テレビ朝日系)に出演。脇さんが演じたのは、15年前に完全施錠された自宅で殺害された資産家・北柳愁一。事件は迷宮入りしていたが、遺族の要望で再捜査が進められていた。そして犯人が明らかに…というストーリー。

    「撮影は、朝イチで血まみれになって死んでいるところからスタートして、そのあと、そこのお風呂を借りて、またそこから何時間か芝居のパートを撮影しました。大変でしたけど、いろいろな役を演じられるのは、やっぱり面白いです」

    ■公開中の映画の始まりはカラオケボックスで

    (C)ストーンプロダクション

    (C)ストーンプロダクション

    6月26日(金)から公開が始まった映画「罪の棘」に出演。この作品は、仮釈放中の女、25年前に実刑判決を受けた男、25年前に父を亡くした刑事、3人の運命が複雑に絡み合っていく様を描いたもの。

    親の愛を知らずに育ち、悪い男に騙(だま)されて薬物事件で実刑判決を受けて仮釈放中の絵李香(雅び=びは王へんに比)は、他者との関係を築くことができず、依存と孤独を繰り返してきた過去を抱えている。

    彼女の保護司になったのは、25年前に強盗殺人事件で逮捕された過去を持つ岩永剛史(脇知弘)。二人は次第に信頼関係を築いていくが、新たな強盗殺人事件が発生。25年前の事件で刑事だった父親を殺された藤堂刑事(勝矢)は、事件に岩永が関与しているとみて、執拗に追い始めるが…。

    「このストーリーを考えたのは、僕と(エグゼクティブ)プロデューサーの松尾(典弘)さんで、2人でカラオケボックスに行った時に『何かやりたい役はありますか?』って聞かれて。そこから逆に『やったことない役はありますか?』となったので、『あまり固い役はやったことがない』とお伝えしましたら、『保護司はどうか』という話になりました。

    保護司のことは何となく知ってはいましたが、『あまりイメージがないです』という話をしたら、『保護司は職業じゃなく、お坊さんもいればスーパーをやっている人とか、いろいろな仕事をしている方が保護司を引き受けてやっているから、そこは難しく考えなくても大丈夫ですよ』とのことでした。

    特に法律に詳しい必要はなくて、担当する保護観察対象者を更生させる気持ちが一番大事なところだとおっしゃったので、ストーリーを2人で妄想しながらずっと話していました。

    そうしたら、そういう風にワイワイしゃべっていた他愛もない話を次の日に松尾プロデュ―サーが『こんな感じでいいですか』ってプロットにしてくださって。

    ある程度ストーリーになっていましたけど、『もうちょっと僕はこうしたいです』という感じでいろいろリクエストを出したら、『わかりました』と言って、その後すぐに、『脚本を書いてくれる方が決まった』とおっしゃって。

    後日、『罪の棘』の台本が出来上がっていたので驚きました。自分たちがしゃべっていたことがこんな風に脚本になるんだって。それで、制作会社も決まって、本当にとんとん拍子という感じでした。

    最初にカラオケボックスで話していた時はそこまでは考えてなくて、単にいろいろ話していただけでした。

    そうしたら、『脇さんは、結構コミカルな役とか明るい楽しい役が多いですね。じゃあ、ちょっと暗めにしてみますか』みたいな感じでこのお話ができました」

    ――25年前、自分を更生させようと尽力してくれていた刑事の殺人の疑いをかけられて…という役でした。

    「そうです。やっぱり多少気持ちは暗くはなりましたね。僕が演じた岩永は、25年前に初めて守ってあげたいと思った愛する人を守ってあげることができなかったので、今度こそは(自分が保護司として担当することになった)絵李香を助けたいという思いが強い。

    自分も元受刑者で彼女と同じような境遇にいたからこそ、絵李香を救えるのではないかと。

    それを念頭に、その一心で演じていました」

    ■パワフルな勝矢さんとのぶつかり合いは…

    (C)ストーンプロダクション

    (C)ストーンプロダクション

    脇さん演じる岩永に刑事だった父親を殺されたと思っている藤堂刑事役の勝矢さんとの迫力あるシーンも話題に

    「僕がお父さんを殺した犯人だと思っているから憎悪の感情がすごい迫力ですよね。勝矢さんとはプライベートでも何度かお会いしたことがありましたし、7月17日(金)に公開される映画『キングダム 魂の決戦』(佐藤信介監督)でもご一緒させていただいて。鎧とかいろいろ身につけて馬に乗って叫んでいる勝矢さんを見て、大変だなって思いました。

    乗馬の練習も2人でやっていましたし、『日本統一』シリーズもあったので、昔からお会いしていましたが、こうやってガッツリ絡むというのは『罪の棘』が初めてでした。デカい2人がぶつかり合うシーンも見どころだと思います。

    皆様からの反響が楽しみですよね。今までやってきた僕の明るい役とか怖い役とか、そういうのと違う部分を見ていただけたらいいなって思っています。

    僕は、この映画に関して目標があって、地元平塚で上映できたら、と配給会社にお願いしたら、僕の地元ということもあり、すぐに上映が決まりました。あと、僕がすごくお世話になっている川越でも上映できたらと思っています。『川越グルメ大使』の脇知弘がこういう役をやっているというのを川越の皆さんにも見てほしいので」

    ――撮影で印象に残っていることはありますか?

    「この作品の現場に僕と誕生日が1日違いの女の子がいて、撮影がオールアップした後で皆さんに一緒に祝っていただきました。植田監督がトランシーバーを持って立っている写真が前と後ろにプリントされているパーカーをプレゼントでいただいてうれしかったです」

    ――私生活では1男1女のパパですが、お子さんたちはこの作品はご覧になったのですか?

    「子どもたちに見てほしい作品ですけど、本作はR15+区分なので、15歳になってからですね。『こういうお父さんもいるんだよね。こういう役もやるんだよ』って知ってほしい。

    それと、主人公の絵李香は、どうしようもない生き方をしてきたし、いろいろなことがありましたけど、強く生きていくだろうという希望は見えるじゃないですか。

    人はいくつになってもこうやって変われるんだぞということも知ってほしいし、見てくださる方もそうですけど、自分の子どもたちにとっても、ちょっとでも何か伝わってくれたらいいなと思う作品です。

    うちの子どもたちは、『ごくせん』シリーズとかも見ていますけど、僕が出ている映画では『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』(塚本連平監督)が大好きで、小学生の頃は朝起きると毎日見ていました」

    ――俳優になりたいと言うことは?

    「言ってくれないですよ(笑)。息子に関しては俳優になるのもいいかなと思いますけど、娘に関してはちょっと…という感じですね」

    ――今後はどのように?

    「今回の映画の役もそうですけど、今までやったことがない役にどんどんチャレンジしていきたいと思っています。あと、『キングダム』のような作品もやっていきたいですね。

    とにかく役の幅を広げたいです。役の幅を広げるというのは、つまり芝居の幅を広げるということです。70歳になっても80歳になっても、僕は生涯死ぬまで現役でやりたいと思っています」

    将来は演出にも挑戦してみたいと話す。さまざまなことにチャレンジしてきた実績がある脇さん。演出家として活躍する日も期待している。(津島令子)

    Share.

    Comments are closed.