みなさん、こんにちは。 わたしは一般社団法人北海道ブックシェアリングの代表理事の荒井宏明(あらい・ひろあき)と申します。本会のプロジェクト「 さまざまな学びの場における読書環境づくりをサポートします 」のページをご覧いただきありがとうございます。

一般社団法人北海道ブックシェアリング 代表理事 荒井宏明
【プロフィル】
1963年 北海道北見市生まれ
北海道大学大学院 教育学院 学校経営論専攻 修士課程修了
著書に『なぜなに札幌の不思議100』(北海道新聞社)、『北海道建築 北の大地に根づく建物と暮らし』(TWO VIRGINS)など。
一般社団法人北海道ブックシェアリングについて
本会は「すべてのひとが格差のない読書機会と読書環境を享受できる社会づくり」を目的に、2008年に教育と図書の関係者が設立したNPO(徹底非営利型一般社団法人)です。

札幌市教委と協働運営する「図書再活用センター」の定期活動に集まったボランティアスタッフ
【主な活動】
①教育や福祉施設などへの再活用図書の無償提供(これまで約300施設に約7万冊を提供)

子どもたちと職員さんが持ち帰る本を選ぶ 学校図書館づくりを担う生徒たちが本をセレクト
②学校図書館や公民館図書室などにアドバイザーを無償派遣(これまで16市町村、80施設で実施)

新設校の学校図書館づくりのアドバイス ラオス国立図書館の運営アドバイス
③図書や読書に関するイベントやフォーラムの支援や運営(これまで200を超える事業を実施)

キャンプ場で図書館車の臨時図書館を開館 多世代交流を目的にバザーを開催
他にも読書環境に関する調査や研究、提言などを行う自主自立型のシンクタンクとしても活動しています。
【これまでの主な助成事業】
2012 みやぎ復興支援図書センターの設立・運営(NHK厚生文化事業団)
2019 北海道の学校図書館に関する地域包括調査(公益財団法人トヨタ財団)
2020 コロナ禍における子どもの読書機会の創出(休眠預金等活用法助成)
2020 絵本・児童書のばくりっこ(交換)会(札幌市さぽーとほっと基金)
2025 学校統廃合に伴う学校図書館のリスタートに関する研究(小林董信基金)2025
【これまでの主な受賞】
2009 第一回札幌市環境賞
2020 Library of the Year 2020 ライブラリアンシップ賞
2023 第13回 地域再生大賞準大賞
ホームページURL https://booksharing.wixsite.com/bookshare
ブログURL http://ameblo.jp/booksharing/
プロジェクトを立ち上げたきっかけ
近年、不登校の児童生徒の急増や、カリキュラムの多様化といった社会情勢の推移により、学びに関する制度設計やスタイル、施設等「学びの場のあり方」に変化が生じています。
【北海道における学びの施設(一部)】※校数は一部を除き2026年4月現在

これらのなかには読書環境が未整備あるいは不十分なまま、子どもたちの読書機会を担保できず、読書意欲に応えられていないという施設が少なくありません。 その背景には、予算や専門員の不足だけでなく、文科省管轄(一条校)(注1)に当たらないことや、学校図書館法(注2)の適用外であることから、読書環境の整備や読書活動の推進に関する情報に触れる機会が少ない等の理由があります。
しかし子どもたちが人生をより深く生きる力を身に付けるためには言葉を身につけ、表現力を育み、豊かな創造力を養うことが大切です。あらゆる学びの場において読書活動は欠くことのできないものであり、その環境整備は必須と言えます。2009年に文部科学省が静岡大学に調査を委託した「学力調査を活用した専門的な課題分関する調査研究 C.読書活動と学力・学習状況の関係に関する調査研究」では「読書好きな児童生徒ほど教科の学力が高い。科目、学力層、領域、設問形式によらずこの傾向が確認できるという意味で、これは非常に強固な傾向であるといえる」と報告しています。 このことから学びの場において読書を好ましいと感じる指導の重要性が再確認されたといえます。
子どもたちの学びにおける制度設計やスタイル、施設等が多様化するなかで、読書環境の整備や読書機会の享受に格差が生じている現状に鑑み、このほど本会は
①一条校以外あるいは学校図書館法適用外の施設
②義務教育学校(注3)や学びの多様化学校(注4)、教育支援センター(注5)など新たな制度設計のなかで誕生した施設
③フリースクール(注6)や子どもの居場所(注7)など、地域に根差しながら子どもたちを受け入れ、支えている施設
を対象に読書環境整備と読書活動推進のサポートに積極的に取り組むこととしました。
【注釈】
1 学校教育法第1条で「学校」と定義された学校の総称。国・自治体・学校法人などが設置し、文科省の管轄を受ける。カリキュラムは学習指導要領に準拠する
2 学校図書館の定義や学校図書館の設置義務を規定する法律。対象は小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校。
3 小学~中学までの義務教育を9年一貫のカリキュラムで行う。学校教育法の改正により2016年に新設された学校教育制度。北海道が突出して多い。
4 旧不登校特例校。学習指導要領の枠を一部外し、授業時数や教科構成を柔軟に組み替えられる文部科学大臣指定の学校。
5 旧適応指導教室。不登校や学校に行きづらい子どもが在籍校と連携しながら学習支援や心のケアを受ける。多くは市区町村教育委員会が設置。従来は学校復帰を主眼としていたが、近年は社会的自立や自分らしい進路選択を支援する方向へ。
6 学校に通いにくい子どもが学校外で安心して学び・過ごせる場として民間団体などが運営する多様な学びの施設。法律上の「学校」ではなく、カリキュラムや活動内容は施設ごとに異なる。
7 児童館や学童保育、子ども食堂、NPOによる学習支援など、地域において子どもが心安らかに集う拠点。
プロジェクトの内容
本事業の 活動方針としては
①再活用図書の提供やアドバイザー派遣など従来の本会のサポートをより積極的にアナウンスする
②それらを実施しながら状況やニーズのきめ細やかな把握(調査・分析)を進める
③読書活動の推進や読書環境の整備の必要性に関する啓発や情報提供を行う
④希望する施設への定期的なサポートや、校種や施設を横断した情報交換や先駆事例の紹介など実施する
を掲げています。そしてこれらをを通じて、各施設における読書環境整備の持続を促します。
2026年度の事業計画
本事業は2026年4月にスタートする予定でしたが、1月8日未明に発生した火災の類焼によって、本会事務所および資材や備品が失われました。その後、最高気温が氷点下という連続する真冬日のなかで、火災後の後片付けをしていた代表の荒井は、13日夕方に急性大動脈解離を発症。7時間にわたる緊急手術によって一命をとりとめましたが、入院やリハビリによって3カ月にわたって活動停止を余儀なくされました。
幸い5月7日に新事務所を開所し、従来の活動をすべて開始。本事業も約3カ月遅れの6月25日にスタートすることができました。
未明の火事は隣接9棟の家屋に延焼 鎮火まで18時間。本会事務所も類焼
手術後にリハビリ開始 多くの支援や励ましを得て、札幌に新事務所を開所
2026年度の事業計画の概要は以下の通りです。

今秋(2026年10月25日に札幌エルプラザにて開催予定です。2026年7月中には詳細を決定)
に予定しているフォーラムは、さまざまな学びの場を運営する当事者の方々から、図書や読書に関する取り組みや課題を報告していただく予定で、オンライン配信を通じて全国の方々に無償で配信いたします。
本事業は終了年度を定めず、状況やニーズに応じて、単年度ごとの計画策定を行います。本年度はその把握を重点事業とし、訪問によるヒアリングや視察を通じて、課題の把握を進めていきます。併せて財源の確保として、クラウドファンディングやバザーを実施し、年度事業の円滑な運営を目指します。
2026年度 支出内訳
1.フォーラム「さまざまな学びの場における読書環境づくりを考える」開催に関わる経費
会場費 30,000円
講師・登壇者謝礼 120,000円
ポスター制作費 10枚 20,000円
チラシ制作費 3000枚 50,000円
運搬費 20,000円
オンライン配信業務委託費 100,000円
資料制作費 30,000円
通信・郵送費 20,000円
文具・消耗品 10,000円
小計 400,000円
2.「さまざまな学びの場における読書環境」の状況及びニーズ把握を目的とした調査訪問に関わる経費
交通・移動費(20市町村×15,000円) 300,000円
宿泊費(5回×8000円) 40,000円
報告書作成費 10,000円
小計 350,000円
3.会議・研究会・報告会の実施に関わる経費
会場費(3回×10,000円) 30,000円
資料作成 10,000円
報告書作成 10,000円
小計 50,000円
計800,000円
今回の目標金額800,000円から、プラットフォームへの手数料支払いや返礼品などを引くと、約600,000円が本事業の資金に充てることができます。事業費の不足分200,000円は、バザーの開催によって賄う予定です。札幌及び近郊の方はぜひ本会のホームページをこまめにチェックいただき、ご都合が合えばバザー会場にお越しいただき、活動の進捗などもご確認いただければ幸いです。
プロジェクトの展望・ビジョン
「そういうことって行政がやるもんじゃないの?」
2008年にNPOとしての活動をスタートしてから、このような質問を数多く受けてきました。考え方は人それぞれだと思いますが、個人的には半分正解・半分不正解だと感じています。
「子どもたちの学びの場における読書環境の整備状況の把握」については、行政の義務であることは法(教育基本法第四条および日本国憲法第26条)に照らしても間違いありません。では整備の担い手もすべて行政任せになるのかとなれば、そうではないとわたしは感じます。
それはなぜか
まず扱うものが「図書」である点です。いま児童書や絵本の分野が、過去に例がないほど充実し、新刊を手に取れる児童生徒とそうでない子どもたちとの格差が著しいものになっています。ですが日本では毎年7万点もの本が出版されており、1日あたりにすると約200点もの新刊が世に出ていることになります。読書や図書の専門職以外の行政職員が、これらのラインナップを把握し、整備を実施するのは困難であると考えられます。
では、北海道の各自治体に読書や図書の専門職が何人いるでしょうか。北海道では公共図書館の設置率の低さが特徴です。179自治体のうち、公共図書館を設置しているのは103自治体であり、設置率は57.5%と全国平均の77%を大きく下回っています。加えて小規模自治体(人口1万人未満)が124町村のうち、87市町村が人口5千人未満です。このなかで読書環境整備の専門知識を持つ行政職員を専従業務に就けることができる自治体は極めて少ないというのが現状です。
次に「読書」そのものにも変化が生じているという点です。スマホの登場によって、日本国民の読書のあり方が大きく変わりました。相次ぐ書店の廃業もその現われのひとつと言えます。しかし子どもたちは別です。小中学生の読書量は着実に増えていますし、北海道の子どもたちの読書意欲も全国平均を超えています。その背景のひとつに「読み物(小説・文学)以外のジャンルの充実」が挙げられます。出版社の月間児童書売上ランキングを見ても、「半分以上が読み物以外」という月は珍しくありません。
おとなが「自分が読んできた読み物の知識」だけで読書環境を整備するのは難しいのです。
このようなことから、子どもたちの読書環境の整備には、専門知識と最新情報を備え、かつ管轄(一条校)と法適用(学校図書館法)の枠組みを超えて活動できる機関が不可欠であると言えます。もちろん機動力や組織力、そして資金・資材に限りのある本会が単体で担えるわけではありません。これまでの19年の活動で培った道内のネットワークを生かし、オール北海道でこの課題に取り組んでいきたいと考えています。
最後にわたし自身についてお話します。
わたしはことし63歳になります。世間的には定年といわれる年齢であり、かつことしの1月に事務所の焼失および急性大動脈解離の発症によって、3カ月もの活動休止を余儀なくされました。手術の影響で、いまも声が十分には出ない状況です。この間「北海道ブックシェアリングは閉会するのでは」との声も伝え聞きました。ですが、今後は本会の代表理事兼アドバイザーとして「北海道の読書環境に関する整備支援」をより精力的に進めていく考えです。ことし3月に、北海道大学大学院(教育学院・学校経営論講座)の社会人修士生としての研究期間が終了しました。その研究成果も実践につなげていかなければなりません。
ここまで長きにわたるプロジェクトの説明をお読みいただき、本当にありがとうございます。ぜひ多くの方々に関心を寄せていただき、課題意識を共有させていただければと願っております。ご支援・ご協力のほど、なにとぞよろしくお願いいたします。
