各メンバーの視点で知る
QuizKnock10年の歩み

――音楽の聴き方、探究の仕方もクイズの世界と共通するものが多いんですね。お話を聞いていろいろ納得しました。ここからは『QuizKnock10周年スペシャルブック 十字路』についても聞かせてください。この書籍ではQuizKnock10年の歴史を各メンバー視点で振り返ることで、伊沢さん自身も初めて知ることも多かったんじゃないかと思います。
伊沢:意外とみんな、冷静に物事を見ているんだなと思いました。僕はどうしても組織をドライブするという、マクロな方向性にフォーカスしがちですけど、逆にふくら(P)とかは1個1個の作品をどう作っていくか、どうブランディングと繋げていくかというミクロな目線が多かったりするので、改めて自分ひとりじゃここまで来られなかったなということを、大いに感じさせてくれるような1冊になりましたね。
あと、書籍としてまとめる際に過去を振り返ることって、意外と大事なことなんですよ。その時その時の温度感というのも思い出せますし、何よりいろんなメディアでQuizKnockについて取り上げていただいても、どうしても分量って限られているから、全部は伝えきれない。長くやっている分、ありがたいことに色んな人がいろんな面白がり方をしてくださっていますから、より多くの人が「そうなのよね~そこがいいのよね~」と思ってくれたら、作った意味がより増すのかなと思います。
――QuizKnockを知るきっかけはいろんなところに散りばめられていて、そこからYouTubeやテレビのクイズ番組にたどり着いたとき、さらに深く知りたいと思ったときに最適な、決定的な1冊があるとないとでは大きく違いますものね。
伊沢:大違いですよね。かつ、この書籍を出したことで「QuizKnockって10周年なんだ。意外と長くやってるんだね」と興味を持ってくれた人もいっぱいいますし。それだけでもありがたいですし、11年目以降がすごく戦いやすくなったなと、僕自身も思っています。
――きっと伊沢さん自身の中でも、いろいろ整理がついたこともあったでしょうし。
伊沢:今回の書籍のために5周年のときに出した本も読み返したんですけど、「忘れてることがいっぱいあるな」と今さらながら気づかされました(笑)。たぶん今後、また忘れるんですよ。でも、忘れてもここに全部書いてあるから、読み返せばいいだけで。まさしくセーブポイントなわけです。
――納得です。僕自身この書籍を読んでみて、クイズ関連のこと以上に伊沢さんがQuizKnockを立ち上げてから今日までの道のりについて、非常に興味を持ちました。
伊沢:ありがたいです。立ち上げの頃の話は、残しておいたほうがいいかなと思っていて。QuizKnockは別にクイズだけをやっているわけではなく、教育を最終目的にしているからこそ、利益を独占することには何のメリットもないので、ひとつの事例としてQuizKnockが歩んできた道のりを残す。しかも、それをポップな書籍にという。これまでもビジネスイベントとかでいっぱい喋っているんだけど、ポップな書籍の中にちゃんと入れておくことによって、まさに“十字路”から旅立っていく人の指針になったらということで、意識的に作った部分もあります。
――なるほど。
伊沢:QuizKnockの活動によって、直接的に利益を感じられる人が多くないと立ち行かないのが事実で。もちろん、僕たちはクイズをフックアップしたいって気持ちを持っていたけど、じゃあ「クイズをフックアップするため」の会社を作ってそれをミッションに掲げたところで、共感者が少ないと動かせるパイも少ない、少なくとも立ち上げ当初のクイズの受け止められ方を考えるとですけど。力点にかかる力が小さいから、作用も小さいわけですよね。
でも、教育をテーマに掲げて、そのためのツールとしてクイズを使うことで受益者も増えるから、当然応援してくれる人も増えて、力点にかかる力が大きくなる。結果的にクイズも盛り上がるわけですけど、社会のために資するという形を作っておいたことによってQuizKnockはうまくいったし、その軸がブレなかったからこそいろんな人を巻き込めたのかなと思っています。
――実際、クイズで遊びながら得られる教養ってたくさんありますし、そういうことに小さい頃から触れ続けていればいろんなジャンルに興味を持つきっかけにも繋がりますしね。
伊沢:なので、僕はクイズ自体が“十字路”だなと思うんです。クイズに出会ってほしいだけじゃなくて、クイズを通していろんなものに出会ってほしいですし、僕はまさにそうやっていろんな音楽にも出会ったわけですし、クイズを通して世の中のいろんなことをランダムガチャとして楽しんでほしいんです。なので、QuizKnockに触れることで、“知識のランダムガチャ”をいっぱい引いてもらえたらいいなと思っています。
Billboard JAPANブックチャートについて
――話題は変わります。Billboard JAPANブックチャートをご覧になった、伊沢さん視点での感想を聞かせてもらえますか?(編集部注:伊沢さんには2026年5月21日公開の総合書籍チャート“JAPAN Book Hot 100”をご覧いただきました。)
伊沢:数年前の本屋大賞系の作品が、リバイバル的に売れてますよね。『リカバリー・カバヒコ』なんて2、3年前の本屋大賞にノミネートされていたと思うんですけど、7位までジャンプアップしてるんですね。
――文庫化されたことが、ランクアップの要因みたいですね。
伊沢:ああ、なるほど。確かに文庫化は大きいですね。全体的に、とにかく小説がすごいなあという感じがします。実際、電車の中にも小説の広告がいっぱいありますし。僕は新書とかビジネス本を読みがちなので、改めて「ここにはまだ、私が面白がれていないけどきっと面白い世界があるんだな」みたいなことを感じました。
――ちなみに、『君のクイズ』が11位にあります。
伊沢:あ、本当だ。こういう盛り上がり方は嬉しいですね。若林(正恭)さんの『青天』もずっと売れてるなあ。こうやって見てみると、『十角館の殺人』とか『黒牢城』とか新発売以外の作品もランクインしてるんですね。すごいなあ。これだけ小説がたくさん売れているという事実は、「本離れ」とか「書店離れ」と言われる中ですごいことだなと思います。僕自身は、別に本を読めとは全然思わないけれども、本があることの意味みたいなことは常に感じるので、勝手に嬉しい気持ちになっちゃってますね(笑)。
――伊沢さん自身、読書は結構するほうですか?
伊沢:そうですね。とはいえ、本も音楽と一緒で無限じゃないですか。いろんなメディアを見て気になるものはチェックしてみたいなと思うものの、なかなか時間がないので、どちらかというと昔出た名作を読んだり、気になる作家さんの新刊が出たら読むぐらいかな。 僕は綿野恵太さんの本をよく読むんですが、それこそ最近だと『「逆張り」の研究』を読んだばかりで、やっぱり面白かったです。“ジャケ買い”ならぬ“表紙買い”をすることも多くて、最近はふらっと 『仮放免の子どもたち 「日本人ファースト」の標的』を購入しましたが、これは非常に意義深い読書体験でしたね。
――やっぱり人それぞれ、本の手の取り方って個性が出ますね。
伊沢:僕はもちろん本屋に行って“表紙買い”もするけど、「仕事上これを話さなきゃいけない」ことが突発的に出てきたときには電子で買うことが多くて。ネット検索ではうまく情報が出ないこともたくさんあって、AIでもうまくいかない時は、本を頼れば何かあるんじゃないか、という感じで常に選択肢として持っていますね。
なので、僕の中ではひとつの駆け込み寺というか。もちろん、本を全面的に信用しているわけではないですけど、気になったことを調べたときに相対的に時間をいっぱいかけて、頑張って調べた人の意見が聞けるっていう意味で書籍というのは、僕はすごくありがたいものだなと思っています。
――最後の質問になりますが、伊沢さん個人、QuizKnockの未来に向けた展望を聞かせてもらえますか?
伊沢:僕自身いろんなところでアウェーゲームをしたり、各地の会館とかビジネスイベントで講演会をすると、まだまだQuizKnockのことが知られていないなと感じる瞬間もあって。より多くの人、多くの世代に届けていくことは大事ですし、世の中を変えるために「楽しいから始まる学び」というコンセプトを掲げているので、一番はそれをどんどん広めていくことかなと思っています。そして、新規の方だけじゃなくて今まで応援してくれた人たちも含めて、10周年が終わったあとも「ここまでいろいろ美味しかったけど、なんだかまた今めっちゃお腹が減っていて。もっと食べたいな」と思えるようなワクワクを繋げていきたい。それが組織としての大きな目標ですかね。
個人としては、QuizKnockを大きくすることと同時に、ただ単に強いクイズプレーヤーであり続けたいし、もっと強くなりたいって気持ちは今も変わらず持っていて。いまだにクイズ大会にも出ているし、クイズの過程でいろんな面白いことをまだまだたくさん知れるので、まったく飽きることもない。なので、長生きしたいですね。そしていっぱい音楽を聴いて、出会ったことのない新譜を見つけて、「俺、○○の頃から知ってるんだよ」っていろんな人に自慢したいですね(笑)。
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