『超節約生活で星野リゾート全制覇に400万使ったOLの極論』#04

    OLのミカ。

    2026/06/22/ 16:30

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    嘉助天台にて、「漢服体験」を行った著者・OLのミカ。さん
    嘉助天台にて、「漢服体験」を行った著者・OLのミカ。さん
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     創作大賞2025(note × TALES主催)朝日新聞出版賞を受賞し、星野リゾートを全制覇するための節約術を綴ったエッセイで出版も決まった。書籍内に海外の施設の情報も入れるならばタイムリミットはすぐそこ。交通の不便さから後回しになっていた中国の星野リゾート「嘉助天台」を予約し、着いてみると、そこには無料の贅沢体験が待っていた――。前代未聞の旅行ガイド✕節約術✕エッセイ集『超節約生活で星野リゾート全制覇に400万使ったOLの極論 』(OLのミカ。さん著)から、一部抜粋してお届けします。

    【写真】星野リゾート全制覇! 前代未聞の旅行ガイド×節約術×エッセイ集はこちら

    受賞作>>「約4年間の超節約生活で“星野リゾート全制覇”に300万使ったOLの極論。」

    ※書籍化までに海外の施設も全制覇したため、書籍タイトルは“400万”に更新

    *   *   *

    中国で『キングダム』合宿しながら、悲しげに笛を吹く女を演じる

    2025.11.27 >>> 29 「嘉助天台」

     中国で「キングダム』が読みたい。ずっと妄想はしていたけど、先延ばしにしていた。ぐだぐだと悩んでいたのは、「嘉助天台(かすけてんだい)」の公式ページのアクセス方法を見たら、空港の候補が8個あったからだ。どの空港から行っても車で3時間以上かかる。グーグルマップで調べたら出て来なかった。国内全制覇を達成して、海外施設も続々と予約を済ませ、あと残っていたのは「嘉助天台」だけとなっていた。

     10月末、はじめての朝日新聞出版さんとの顔合わせがあった。「ちなみに、海外の施設も制覇して本に入れるとしたら、いつまでに行けばいいですかね?」とスケジュールを確認したら、「 …… 2月ですかね」と回答をもらった。この先の私のスケジュールはだいぶ詰まっていて、10月「リゾナーレグアム」、12月に新施設の「リゾナーレ下関」、1月「星のやバリ」、2月「サーフジャック ハワイ」に行こうとしている。つまり空いているのは、11月しかなかった。

     これは行くしかない。来月だとか関係ない。誰かに背中を押してもらわなければ、私はまた寝かせてほっといてしまう。ChatGPTに聞いたら一発で、「嘉助天台」は“上海”にあって、日本から行くには「虹橋(ホンチャオ)空港」か「上海·浦東(プードン)空港」から行くのがいいとわかった。次の日、山手線の中で、「嘉助天台」と飛行機の予約をした。

     「嘉助天台」へは、上海市内から高速鉄道に2時間乗って、そこからさらに車で40分くらいの場所にある。この高速鉄道に乗り遅れたら全てが終わると思ったので、不安すぎて空港の近くに前泊して、順路と乗り場を念入りに予習した。ここ数年の中で一番緊張している。上海はセキュリティーが厳しく、高速鉄道に乗る際もバスポートの確認と荷物検査があった。無事ゲートを突破して「21」乗り場を確認。もしかしたら、高速鉄道が途中で立ち往生とかあるかも、と不安になりすぎてカステラもポテチもドライフルーツもいっぱい買った。20分前に並ばうとしたら列が進まない。皆焦り始めている。

     列が崩壊して、怒涛のズル込み合戦が始まる。隣で同じく不安そうな表情のインド人ビジネスマンにこれで合ってるよね?と英語で話しかけられ、うん、私もそれに乗るよ、「アイムベリーナーバス」だよと結託した。しれっと2人で、割り込み軍団に忍び込み、ゲートを通った。グッドポーズを見せ合い、インド人ビジネスマンとは別の車両に乗った。上海の高速鉄道は、車内販売はないけど、みんな事前に注文したであろうスタバやケンタッキー、プチトマトなど、次々とデリバリーされてきたものを受け取っていた。カップ麺を食べている人もいた。車内が心地よい温度で猛烈に瞼が重くなってきたけど、とにかく耐えた。電光表示が「天台山」に変わり、ようやく降りる駅が次になった。

     降り立つと思ったよりも近代的で大きな駅だった。“星野集団”という看板を持つ、おじさんが改札越しに見える。絶対に、絶対に私の迎えのおじさんだ。「MIKA!」と眼力強めで言うと、「オーーーー、待ってたよーーー!」とテンション高く迎えてくれた。父親が迎えにきたくらいの安心感。あーーー!!! 私、星野リゾートに行ける! そうだよ、私このために来たんだよーーーーと不安な気持ちから解き放たれて、ちょっと泣きそうになった。芸能人の送迎車みたいなふかふかシートで全然揺れない安全運転で、山をズンズン登っていき、見晴らしがどんどん良くなっていた。上海市内は黄砂がすごくて少し頭が痛かったけど、天台山は空気が澄んでいた。

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     ついに、ついに、ついに、来てしまった。中国4000年の歴史感ある荘厳な瓦屋根の門構えと噴水がお出迎えしてくれた。自動で開閉する観音開きの扉。

    「嘉助天台」も、「星のや」とほぼ同じランク。ワンルームながら、ゆるやかに仕切られた空間。丸テーブルのダイニングとキングサイズのベッド、バスルームの大きな窓からは、色づきはじめた紅葉が見渡せる。ミニソファー、バスタブ、ミニソファという不思議な並び。何に使うのかわからない、このエリアがたまらなく好きだ。もちろん、そこでマンガを読む。

     ブラインドはボタンひとつでブイーンと昇降。あのシュコシュコしなくていいの、最高。そして、思わず「ここが『キングダム』の国か!」と叫びたくなるほどの見晴らし。遥か昔、この地に魏や呉や蜀や秦や趙があったのか …… と妄想が広がる。テラスには8人は余裕で座れる椅子とソファ。バチェラーのカクテルパーティーだって開けそうな広さだった。

     ここで、私は『キングダム』の67巻から74巻を読む。メインは、桓騎(かんき)の過去の話。しかも李牧(りぼく)と趙の戦いの話。そうだよね、当たり前なんだけど、『キングダム』って超面白い。「キングダム』を読むことだけに集中するこの瞬間がほんとに好き。

     星野リゾートに着いて、ほんとに一気に緩んじゃって、SPAではピアスを忘れ、スタッフさんが私を探してくれて、夕食会場にはスマホスタンドを忘れて、料理長が「あ~これ忘れたでしょう?」と笑いながら持ってきてくれて、アハハハハと受け取ったときに、椅子にカードキーを忘れていることにも気づいた。怖い。私って、星野リゾートのこと実家だと思っているのか。

    <<『超節約生活で星野リゾート全制覇に400万使ったOLの極論 』好評発売中!>>

     翌日、「漢服体験」が無料で出来るとのことで、『キングダム』っぼい写真が撮れるかな、と軽いノリで予約した。20種類以上のカラフルな衣装がズラッと並んで、ヘアメイクさんと専属のカメラマンさんまでいた。本格的な女優ミラーの前にコスメがいっぱい並んでいて、ヘアスタイルはお任せした。どんどん編み込みをされて、ねじりドーナツが完成した。ねじりドーナツに青いお花を付けたり、シルバーのアクセサリーを垂らしたり、真っ赤で白いパールが付いた太目のリボンを巻き付けると、いよいよ私の頭はクリスマスツリーとなった。自分が選んだピンクのドレスにくすみブルーのガウンを羽織って、カメラマンさんと撮影ツアーへ。

     翻訳アプリで、「私にポーズは任せてください。指示しますので」と言ってくれたから安心していたら、「右手を胸に。左手は指を伸ばして。目線は右上を見て! かわいい!  OK! 次は、うつむき目線。あーダメ、足動かさないよ! かわいい!  OK!」とほんとに全部指定があった。毎回華麗に、カートの中から、傘、扇子、ミニうちわ、ウサギのぬいぐるみまでポンポンと何でも出てきて、手に持たされてあらゆる写真を撮る。笑いが堪えられなくなりそうになったが、お兄さんは真剣である。そして後半は表情の指示、笑顔、悲しげになど演技指導も加わり、こちらも全力で女優をやりきるべきである。任せてくれ、私は今『キングダム』合宿中なのだ。

    『キングダム』合宿中、架空の設定で挑む「漢服体験」の様子(著者・OLのミカ。さん)
    『キングダム』合宿中、架空の設定で挑む「漢服体験」の様子(著者・OLのミカ。さん)

    「町に買い物に出掛けた途中、盗賊に襲われたところを、飛信隊に助けられ、その恩に、城に皆を招待し、夜の宴の後、星空を見ながら、信と語り、あれ? ちょっと恋仲になりそうな雰囲気だったが、結局ならず、また去っていく信を思い、城で笛を吹く女」という、架空の設定で挑んだ。写真は3枚までが無料で、そこから先は課金制だった。「YES/NO」で選んでたら35枚になって6万円と言われ冷静になったが、加工が上手くてかなり盛れた写真だったから記念に5枚だけ買うことにした。

     私が、上海に到着した日、浜崎あゆみの上海公演が突然中止になった。ネットニュースで色んな記事が絶え間なく上がっている。家族から「大丈夫?」とLINEがきた。でも実際の街は思っていたよりもずっと穏やかだった。地下鉄でQRコードが読み込めずに焦っていたときも、コンビニでヨーグルトのスプーンを探しているときも、現地の方がやさしくすっと教えてくれた。

    旅の値段:190,000円

    読んだ本:『キングダム』(集英社/原泰久先生)

    ひとことメモ:タ食は本場の中華料理。甘辛く味付けた豚肉ブロックと茶葉炒めと、サクサクなポン菓子をまぶして食べる海老マヨも美味しかったけど、1番美味しかったのは、料理長が育てたシャッキシャキで甘い豆苗炒めだった。

    【初回限定特典あり】書籍では、おすすめ星野リゾートランキング(家族旅・女子旅・恋人旅)/感動的な朝食ビュッフェ/忘れられない温泉……などを含む宿泊可能な全69施設を60章にまとめてお届けしています。

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