
ソニーグループ<6758>は、2026年3月期の研究開発費が前の期比3.7%増の7620億円になったと明らかにした。このうちゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野の研究開発費は同13.2%増の3161億円となり、主要セグメントの中で最も大きな増加率を記録した。そして国内ゲーム大手の年間売上高に匹敵する規模となった。ソニーはゲームソフト開発だけでなく、AI、ネットワーク、決済、データ管理などグループ横断のエンターテインメント基盤への投資を拡大している。
同社は長期ビジョン「Creative Entertainment Vision」の実現に向け、IPの創出・育成・拡張を支える技術やプラットフォームの開発を推進している。AIについては「人の力を引き出し、事業の価値を高めるもの」と位置付け、クリエイター支援や権利保護に活用する方針を示した。
2025年度の研究開発費を見ると、G&NS分野は2792億円から3161億円へ369億円増加した。一方でエンタテインメント・テクノロジー&サービス(ET&S)は1380億円でほぼ横ばい、イメージング&センシング・ソリューション(I&SS)は2385億円で4.4%増となった。
ゲーム分野では、ハードウェア、AI、オンラインサービス基盤など幅広い領域で投資を進めている。その代表例がPlayStation 5 Pro向けに配信を開始した進化版「PlayStation Spectral Super Resolution(PSSR)」だ。AIを活用した超解像技術で、AMDとの共同開発成果を活用している。対応タイトルでは画質の安定性向上や細部描写の改善に加え、パフォーマンスの一貫性向上も実現したという。近年のゲーム業界では、リアルタイムレイトレーシングや高解像度化によって描画負荷が増大しており、AIアップスケーリング技術は重要性を増している。PSSRの強化は、PlayStationプラットフォームの競争力向上を支える技術投資の一環とみられる。
また、ソニーグループ全体のエンターテインメント事業を結ぶ共通基盤「Sony Engagement Platform」の構築も進めている。同プラットフォームは、プレイステーションで培った技術をベースに、顧客情報管理、コマース、決済、データ管理などを統合するもの。ゲーム、アニメ、音楽、映画などグループ各社のサービスを横断し、クリエイターとファンの関係性を強化するエコシステムの構築を目指している。複数機能の提供を開始したほか、アニメ配信サービス「Crunchyroll」への売上管理システム導入も開始し、収益性向上につなげたという。
ソニーが近年掲げる「Creative Entertainment Vision」では、ゲームを単独事業としてではなく、アニメ、音楽、映画などを含むIPビジネス全体のハブとして位置付けている。Sony Engagement Platformは、その構想を支える中核インフラのひとつといえそうだ。
AI分野では、『グランツーリスモ7』向けに開発されたレーシングAI「Gran Turismo Sophy 3.0」も成果として挙げた。ポリフォニー・デジタルとソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)、ソニーリサーチが共同開発するGT Sophyは、強化学習を用いて構築されたゲームプレイAIだ。世界トップクラスのプレイヤーとも競争可能な性能を持つとされ、最新版ではより挑戦的かつリアルなレース体験を実現した。ソニーはGT Sophyで得られた知見について、『グランツーリスモ』シリーズにとどまらず、他のゲームタイトルへの応用も視野に入れている。ゲーム体験の向上だけでなく、開発現場におけるテスト工程の効率化への活用も期待しているという。
今回の研究開発費の増加からは、ソニーが単なるゲームソフト開発だけでなく、AI技術、共通プラットフォーム、サービス基盤などを含めた中長期的な競争力強化を進めていることがうかがえる。特にG&NS分野への積極投資は、PlayStation事業を軸にしながら、グループ全体のエンターテインメント事業を結び付ける戦略を反映したものといえそうだ。