【写真】NONA REEVES 西寺郷太

    ブラックコーヒーにミルクを加えてカフェオレにするように、世界中の音楽の歴史を混ぜた音

    内容は1983年の「モータウン25」のステージ。映画『Michael/マイケル』でも物語の核となるシーンのひとつでしたが、ジャクソンズのパフォーマンスの後、マイケルがソロで「ビリー・ジーン」を歌い、会場が熱狂したショーです。

    その年、アルバム『スリラー』が世界的大ヒット。マイケルがゾンビの集団と踊る映像が日本でも頻繁に放送されてからは、友達と教室でムーンウォークを真似し合っていました。

    マイケルの音楽は、それ以前よく聴いていた豪華絢爛な日本のポップスとは違っていました。まず、リズムがシンプルで強靭。楽器の音数が少ない。「ビリー・ジーン」に象徴されるように、音の鳴っていない空間こそが気持ちいい。

    マイケルはシンガーでダンサー。ジェイムズ・ブラウン直系の「踊るため」のビート、ミュージカル界のフレッド・アステアやボブ・フォッシー的優雅なスタイルを混ぜました。

    ’80年代は音楽映像がつくられる時代になっていたことも、作品に強く影響しています。彼はミュージックビデオを積極的に制作していますが、質の高い短編映画のようでした。すると、音楽そのものも具体的で映像的になっていきました。

    ライヴで披露し映像を撮る前提で楽曲がつくられると、歌詞も物語性を帯びます。なかでも「ビリー・ジーン」は独特です。

    歌詞の主人公は、ビリー・ジーンという女の子とダンスを踊っただけで彼女につきまとわれます。あなたの子よ、と男の子も見せられます。自分の母親も相手の肩を持ちピンチに陥る。

    その後の音楽シーンで歌詞も多様化しましたが、’80年代はそんなストーカー被害のような詞を歌うシンガーを僕は知りませんでした。当時の日本の歌詞でも類を見ないテイストです。しかもタイトルはビリー・ジーン・キングという、女子プロテニスの4大大会を制覇した世界的な選手の名前と同じ。プロデューサーのクインシー・ジョーンズは反対したようです。

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