
ブロッサム プルミエール・ヴィジョン2027-’28年秋冬シーズンより。
今月、国際素材見本市プルミエール・ヴィジョン(PV)のプレビュー展、ブロッサム プルミエール・ヴィジョン(Blossom Première Vision)の2027-’28年秋冬シーズンがパリで開催された。
同展は、職人技とその担い手たちに光を当てる取り組みを強化し、新たな才能の発掘に力を注いでいる。今シーズン、スポットライトを浴びたのは、ロンドン在住の日本人フラワーアーティストである大槻嘉己(おおつき・かい)だった。
刺繍とアーティフィシャルフラワー(造花)を融合させた彼の作品は、卓越した装飾技術と豊かな表現力が目を引く。伝統工芸を現代的な視点で再解釈し、実用性を備えた斬新なクリエイションも魅力だ。
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アーティフィシャルフラワーのキーホルダー。中には、ジップを閉じることで、蕾の中に鍵を収められるものも。
文化服装学院オートクチュール専攻を卒業した大槻は、「すみれ会海外留学サポート奨学金」の支援を得て、2024年からイギリスのキングストン大学へ留学。現在は同大学大学院(Fashion MA)に在籍する。

京都出身の大槻さんは、きもの製作と日本刺繍に携わる祖母からも影響を受けたという。
昨年は、国際的な刺繍コンテスト「Hand & Lock」の学生ファッション部門で、手刺繍の技術力と革新性が高く評価され、Royal School of Needlework賞に輝いた。


Royal School of Needlework賞を受賞した刺繍作品。テーマは「Inheritance in Bloom(花開く継承)」。Dentsの歴史的な刺繍手袋と英国王室のレガリアから着想を得て、刺繍と花の装飾技法を組み合わせた彫刻的なジャケットを制作した。
「留学して、本当によかったです」と大槻は、この2年を振り返る。
「これまで見たことのないものを見ることができましたし、何より自信がつきました。こちらの人たちは、いいと思ったものをしっかり褒めてくれるんです。もともと自信を持てなかったので、自分の作品に自信を持たせてくれた2年間だったと思います」

チェーンで吊るして楽しむインテリア装飾の花。卓上スペースを取らず、空間に彩りを添える。
今回の展示では、著名ラグジュアリーブランドの関係者からも反響があったという。
「作品を見てくださった方々から様々な質問を受けました。革など別の素材でも同じようなクリエイションができるかと聞かれたのですが、できないと言うのも悔しい。そうしたニーズがあるなら挑戦してみたいと思いましたし、自分の表現にはまだ可能性があるのだと気づかされました」
今回、パリでの経験も積んだ若きアーティストは、伝統技術を礎に新たな表現領域を切り開こうとしている。修士課程修了後は帰国し、日本を拠点に活動する予定だ。今後の動向に注目したい。
Photographs:Chieko Hama(濱 千恵子)
Text:B.P.B. Paris
