岸井ゆきのとツェン・ジンホア(曾敬驊)が主演を務めた「シンシン アンド ザ マウス/SINSIN AND THE MOUSE」の試写会が昨日6月18日に東京・アキバシアターで行われ、上映後のトークイベントに監督の真壁幸紀、プロデューサーの阿部豪、カメラマンの水本洋平が登壇した。
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吉本ばななの短編小説集「ミトンとふびん」に収められた一篇「SINSIN AND THE MOUSE」を映画化した本作は、悲しみが小さな幸せに変わるまでを描いた物語。母を失い喪失感を抱えた主人公ちづみが旅先の台湾でシンシンという男性に出会い、止まっていた心を動かしていく。岸井がちづみ、「霧のごとく」のツェン・ジンホアが台湾人の母と日本人の父を持つシンシンを演じた。
■ ツェン・ジンホアから学んだ芝居の本質
日本、台湾合作で贈る本作。真壁は「お芝居の面では日本と台湾の違いを感じました。例えば日本だとカットがかかって、ここを調整しましょうということになると、そこだけを直す。でもジンホアさんに『ここをもうちょっと短くしましょう』と言ったら、彼は全体のお芝居を修正してくるんです。毎回、毎回お芝居が違ってそれが新鮮でした。どこかを直せば、その前後も変わってくるもの。お芝居って本当はこういうものだよねと台湾のキャストの皆さんから学びました」と伝えた。
また真壁は「ジンホアさんは真面目で一生懸命に取り組まれていて、スタッフみんながジンホアさんのことが大好きでした。彼のためにいい映像を作ろうという空気になっていました」とたたえ、「彼は穏やかですし、すごく上品ですが、その中にちょっと狂気があるというか野性味がある。カメラを構えると、目の奥から狂気のようなものが出てくる。すごく魅力的だと思いながら見ていました」と回想。水本も「フレームの中のジンホアさんは本当にかっこいい。そう思いながら撮影していました」と述べ、阿部も「ジンホアさんはすごくひたむき。撮影終盤ではなぜか僕の涙腺が崩壊して、現場で泣いちゃいました(笑)」と明かした。
■ 台湾では登場人物の心情をビジュアル化する
本作には撮影指導として「白鳥とコウモリ」にも携わっているウェイン・ロー(羅偉恩)が参加している。水本は「日本のカメラマンではしないアプローチの仕方をすると感じました。準備段階で撮影方針を話し合う会議を開いたんですが、そのときにびっくりしたのが登場人物の心情を分析し、それをビジュアル化しようというプロセスを踏むこと。そういう思考に触れる経験がなかったので新鮮でした」と語った。
■ ちづみを演じられるのは岸井ゆきのしかいない
イベント終盤には観客の質問に登壇者が答える場面も。短編「SINSIN AND THE MOUSE」をなぜ映画化したいと思ったのか?と問われると、真壁は「台北が舞台だったことが理由の1つです。また僕らはROBOTという会社に所属しているんですが、残虐なシーン、暴力的な描写、誰かを傷付ける言葉みたいなもので映画を作りたくないんです。『SINSIN AND THE MOUSE』はそういうものじゃなく、観た人がちょっと勇気付けられる物語だと思った。だから映画化したいと思いました」と言及した。
印象的なちづみのシーンがたくさんあったと語る観客からは、キャスティング理由を聞きたいというリクエストが飛んだ。真壁は「原作を読んだ方には、ちづみを誰が演じられるだろうか?と想像してほしいんですが、30代ぐらいの女性で、小柄、そして繊細な表現ができる人。もう岸井さんしか思い浮かばなかった。何か大きい出来事があるわけじゃない作品。会話劇を成立させられるのは岸井さんしかいませんでした」と言葉に力を込める。またツェン・ジンホアのキャスティング経緯に話が及ぶと「何度かお会いして、品があって、狂気のようなものも表現できる方だと感じたんです。でも、なかなかいい返事をいただけなかった。直接言うのは恥ずかしいような言葉を通訳さんを通して、彼に伝えてもらって、出演OKをもらいました(笑)」と明かした。
最後に水本は「ちづみの心情をビジュアル化しようとこだわって撮影しました。映像の構図やライティングにも注目していただければ」と、阿部は「口コミで広げていただければうれしいです」と挨拶。そして真壁は「この映画が上映されるシネスイッチ銀座さんが閉館するというお知らせがありました。すごく悲しいことです。どうやって映画館を支えていけばいいのかなと考えたとき、僕らが一生懸命映画を作るということもそうですが、映画愛にあふれる方が映画って素晴らしいよねと、ほかの方に伝えていただくことが劇場の力になると思います。この映画が気に入ってくださったら誰かに伝えていただければ」と願いを込めた。
「シンシン アンド ザ マウス/SINSIN AND THE MOUSE」は東京・新宿バルト9、シネスイッチ銀座ほか全国で6月26日に公開。藤原季節、中田青渚、伊勢佳世、柄本時生、飯田基祐、リン・チェンシー、エンジェル・リー、リン・メイジェン、余貴美子もキャストに名を連ねた。
Copyright ©2021 by Banana Yoshimoto All rights reserved.
Japanese original edition published by Shinchosha Publishing Co., Ltd., Japan in 2021.
The permission to use the original novel to produce this movie has been arranged with Banana Yoshimoto through ZIPANGO, S.L. ©2026映画「SINSIN」FILM PARTNERS
