動揺した。日曜劇場『GIFT』(TBS系)が最終回直前、主要人物である宮下涼(山田裕貴)が肥大型心筋症により亡くなったのだ。あまりに強烈なクリフハンガーである。『GIFT』は難病ものではない。スポーツものだ。宇宙物理学者・伍鉄文人(堤真一)が車いすラグビーの弱小チーム・ブレイズブルズのコーチとなり、物理学の難問を解き明かすようにチームの力を高めていく。
作戦のみならず、チーム一人ひとりの意識も変化していくヒューマンスポーツドラマ、と思って見ていたら、チームの要の涼が病を押して試合に出て、生きている実感を味わったすえに病に倒れた。終盤から徐々に涼の健康のことを匂わせていたとはいえ、予想外の展開でSNSはざわついた。

スポーツもので話の途中で重要な人物が亡くなることは少なくない。たとえば野球漫画の『タッチ』(小学館)。主人公・上杉達也の双子の弟で優秀な和也が交通事故で亡くなる。和也は幼なじみの南(アニメ版の声は日髙のり子)の「甲子園につれていって」という願いを叶えようとしていて、その目標を達也が引き継ぐ。亡くなっても和也は物語のなかで極めて重要な役割を果たし続ける。あるいはボクシング漫画の『あしたのジョー』(講談社)。主人公・矢吹丈の宿命のライバル力石徹が無理な減量がたたってジョーとの試合直後に亡くなる。最期に力石の見た景色を求めるかのようにジョーは過酷な試合に突き進んでいく。
テニス漫画『エースをねらえ!』(集英社)でも主人公・岡ひろみを見出し育てたコーチ・宗方仁が志半ばで亡くなる。彼の残した言葉がタイトルの「岡、エースをねらえ!」。ひろみは恩師の悲願を叶えるべく世界的なプレイヤーの道を歩む。名作スポーツものには死はつきもの。それが主人公を駆り立てる強力なエンジンとなる。とはいえ、涼の死はあまりにも衝撃だった。
ここからは過去の日曜劇場のスポーツものがどうだったか、振り返ってみよう。日曜劇場は1956年からと歴史が長すぎるのでここでは2010年代以降に絞る。

2014年、唐沢寿明主演の『ルーズヴェルト・ゲーム』は社会人野球が題材。『半沢直樹』の原作者である池井戸潤の作品だ。企業ものを得意とする池井戸が企業の再生のみならず、野球部の再生を描くことで、「再生」の物語に厚みが出た。「野球でいちばんおもしろいゲームスコアは8対7だ!」というセリフのように、土壇場でどう逆転するか、人間力が試される。
日曜劇場のスポーツものは以後、このように事業とスポーツの両輪で人間の復活劇を描いて人気を博していく。仕事もスポーツもどちらも最後まで諦めない。制限時間まで全力で闘い抜いて逆転の希望を謳う。役所広司主演の『陸王』(2017年)も池井戸潤作品。老舗足袋メーカーが足袋のノウハウを生かしてランニングシューズ開発に挑む。そのシューズを履いて企業の陸上部の選手たちがひた走る。

会社経営×スポーツの必勝パターンに限らない? 『ノーサイド・ゲーム』から考える日曜劇場の変化
TBS日曜劇場の『ノーサイド・ゲーム』を毎週楽しみにしている。
原作小説(ダイヤモンド社)の作者は池井戸潤。チーフ演出は福澤…
会社とスポーツのふたつの再生の物語は、迫真の画づくりに支えられている。実際の駅伝ロケを行ったり、たくさんのエキストラが参加したりと、汗や熱を感じる場面が多いことも人気の要因のひとつだった。その点で、大泉洋主演の『ノーサイド・ゲーム』(2019年)は、大企業から弱小ラグビー部に飛ばされたエリート社員の奮闘記で、池井戸企業スポーツものの集大成といえるだろう。ラグビー部のメンバーはほぼラグビー経験者ばかりなうえ、東芝ブレイブルーパスの練習場や熊谷ラグビー場といった本物のラグビー関連施設でロケを行った。それを撮るチーフディレクターの福澤克雄をはじめディレクターの平野俊一もラグビー経験者だったため、画に臨場感がハンパなかった。平野は『GIFT』の原案、チーフディレクターで、このときの経験が『GIFT』に生きているに違いない。
