佐藤優 知を磨く読書Photo:Chesnot/gettyimages


    最前線で働くビジネスパーソンが押さえておきたい、時代の変化とその背景を理解する上で欠かせない注目書籍を作家で元外交官の佐藤優さんが厳選する。GAFAMなど巨大プラットフォーマーの存在が「資本主義が末期にあることを示す」と言い切れる理由とは?その末期症状が端的に表れている日本のある市場とは?また、私たちが根源的に考える力を身に付けるために必要なこととは?『人新世の「黙示録」』『強欲不動産』『新版 哲学の謎』の3冊から「ここだけは読んでほしい重要な箇所」を紹介する。(作家、元外務省主任分析官 佐藤 優)



    「21世紀の地主」の存在が示す

    資本主義の末期症状

     斎藤幸平著『人新世の「黙示録」』は、知的刺激に富んだ好著だ。斎藤氏は2020年に『人新世の「資本論」』を上梓し、環境の観点からマルクスの思想の見直しを提唱し、社会に大きな影響を与えた。あれから6年を経て、本書『人新世の「黙示録」』において地球環境破壊が臨界点を超えつつあることをリアルに認識し、国家機能による資本の抑制に踏み込んで言説を展開した。


     特に興味深いのが『資本論 第3巻』の地代(レント)論を理論的に発展させ、現在の巨大プラットフォーマーが抱える構造的問題を解明したことだ。斎藤氏の知的強靱さが表現れている。




    〈ここで注意してほしいのが、レントをめぐる競争が、自動車や冷蔵庫など製造業における競争とは根本的に違うということだ。(中略)


     なぜなら、一般の企業には、巨大プラットフォーマーに依存し続ける以外の選択肢が存在しないからだ。(中略)


     そのことは、テクノ資本主義の中心である米国経済を見ればわかる。(中略)米国の経済成長を牽引しているのは、わずか七社のテック企業なのである。この七社はこれまでの資本主義を牽引してきたS&P500の大企業から莫大なレントの纂奪を行って、急速な成長を遂げているのだ。資本家が資本家を喰う、「共喰い」である〉(62~63ページ)


     産業資本家の利潤が、21世紀の地主であるGAFAMのようなプラットフォーマーにレントとして流れているのである。


     資本は本来、生産や販売などの運動によって得られるものである。それが所有しているだけで、利潤が生まれるという不思議な形態に変容している。マルクスはこれを「擬制(フィクションの)資本」と名付けた。レントや株のような擬制資本が主流を占める状態は、『資本論』の論理に従うならば、資本主義の末期症状なのである。


    Share.

    Comments are closed.