「“言語化”疲れで、“言語化”という言葉にモヤモヤする」
「即答するよりじっくり考えるほうが大事なのでは?」
「別に“口下手”のままでもいいじゃないか!」…
など、まったく新しいコミュ力を説いた書籍『言語化だけじゃ伝わんない –––– 絵を描くように「考える・伝える」技術』が発売された。著者でイラストレーターのヤギワタル氏は、これまで200冊以上の書籍でイラストや装画を担当してきて、今回が初の単著となる。本書では、昨今の「言語化ブーム」に対して警鐘を鳴らし、「言語化“以外”に目を向けること」をイラストレーターならではの視点で面白く解説している。本記事では、その中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

観察力を試す簡単なテスト
最近は、「言語化能力」が重要だと言われます。
自分の考えを整理する。
わかりやすく説明する。
相手に誤解なく伝える。
もちろん、それは大切なスキルです。
ですが、『言語化だけじゃ伝わんない』という本では、「言語化にはワナがある」と語られています。
それは、人は言葉にした瞬間、わかった気になってしまうということです。
人は「理解した」と思ってしまう
本書では、まずこんなワークが紹介されています。
次の写真を見てください。
そして、写っているものをすべて言葉にしてみてください。

いかがでしょうか?
写真を見ると、多くの人は、
「車」「木」「道路」「建物」
といった言葉を頭に浮かべます。
つまり、人は景色を見た瞬間、まず「ラベル」を貼るのです。
そして、ラベルを貼った瞬間、「理解した」と感じてしまう。
これが、言語化のワナです。
人は「名前」をつけた瞬間、観察をやめる
本書では、さらにこう続きます。
出てきそうな答えは、「車、2本の木、建物」あたりでしょうか。
もしかすると、「空、道路」と答えた人もいるかもしれません。
「車」や「建物」の固有名詞がすぐに出てきたかもしれません。
では、写真を見ずに、次の問題に答えてください。
「道路の白線」はどのように引かれていたでしょうか?
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
ここで、多くの人は止まります。
写真は見ていた。
たしかに目に入っていた。
でも、「白線がどう引かれていたか」は思い出せない。なぜでしょうか。
それは、「道路」という言葉でまとめた瞬間、人は細部を見るのをやめてしまうからです。
つまり、人は「言葉にしたもの」を、“もう理解済み”として処理してしまうのです。
「わかった気になること」が、一番危険
本書では、最後にこう語られています。
この質問に答えるのは難しかったと思います。
それは、写真に写っているものを、「言葉にしてしまったから」ではないでしょうか。
言葉にすると「わかった」という気持ちになり、それ以上、観察する気力がなくなります。
言葉であらわしたものがどういう形をしているかは見る必要がないと思ってしまう。
これがまさに、「わかったと思うとそれ以上見なくなる」の法則です。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
これは、かなり怖い話です。
なぜなら、この現象は、人間関係でも毎日起きているからです。
「あの人は真面目」
「部下はやる気がない」
「この人は優秀」
「彼女は怒ってない」
そうやって一度ラベルを貼ると、人は観察をやめます。
すると、本当は疲弊している部下の変化に気づけない。
本当は不満を抱えている恋人のサインを見逃す。
本当は限界が来ている同僚の異変にも気づけない。
つまり、多くのコミュニケーションの失敗は、「見ていないこと」から始まっているのです。
本当に頭のいい人は
「まだ見えていない」と考える
『言語化だけじゃ伝わんない』は、「言葉の便利さ」と同時に、「言葉の危険性」も教えてくれます。
言葉は便利です。
ですが、その便利さによって、人は「理解したつもり」になってしまう。
本当に観察力がある人は、「車」と言葉にしたあとも、まだ見続けています。
色は?
どんな停まり方をしている?
周囲との距離感は?
どんな空気がある?
つまり、「ラベルの先」を見ているのです。
だから私たちは、もっと観察しなければいけないのかもしれません。
部下のことを見ていない。
恋人のことを見ていない。
家族のことを見ていない。
「わかったつもり」になって、観察を止めてしまっている。
その観察不足が、人間関係のすれ違いや、仕事のミスや、取り返しのつかない失敗を生んでしまうのです。
ヤギワタル
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない –––– 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。
