
幻想的な舞台で舞を披露する坂東玉三郎(C)松竹
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今や恒例ともなった坂東玉三郎(76)の南座での舞踊公演。昨年は竹久夢二の世界を物語に仕立てた「長崎十二景」で歌舞伎の本公演とはまたひと味違った“異空間”に夢見心地になり、「藤娘」を見た時は引き込まれるような美しさとはかなさにしばらくボーッとした。
さて、今回は長唄2本。秋の夜長、物思いにふける女性を描いた「秋の色種(いろくさ)」と「時雨西行(しぐれさいぎょう)」。「時雨…」は平安末期の歌人、西行法師と遊女・江口の君(玉三郎)との不思議な一夜をつづった名曲だ。
しかし、私にとっては2曲ともあまりよく分かっていなかった。「不勉強で申し訳ない」としか言いようがないのだが、何とかこの玉三郎が醸し出す異次元の美しさを存分に堪能したい。
そこで思いついたのが「イヤホンガイド」だ。登場人物の背景や演出の見どころなどを的確なタイミングで解説してくれるシステム。テレビでいう「副音声」みたいなものだ。
初めて借りてみたのだが…。これが大正解だった。
「秋の…」はススキにキキョウなど、秋の草花が描かれた屏風が舞台いっぱいに広がり、時にはかなげな三日月が、降るような星空が現れ、転がるような虫の声が響く中、玉三郎がたおやかに舞う。
イヤホンガイドによると手に持つ扇の細かな動きにも意味があり、舞台はどうやら今の東京・麻布のあたりらしい。それが分かっただけでもグッと親近感がわいた。「時雨…」の舞台はガイドによると大阪・神崎川あたり。ますます身近に感じられて想像が膨らんだ。長唄の歌詞をところどころ説明してくれ、幻想的な世界に没頭できた。きっとあの情景はこの後、何年たっても思い出せるだろう。「難しそう」と思わず、この異次元の美しさを体感してほしい。
また19~21日は片岡仁左衛門(82)との対談付きで2人が共演した「仮名手本忠臣蔵」(19日)などを映像で楽しめる舞台も。こちらも当時の貴重な話が聞けるに違いない。(土谷 美樹)
