6月8日(現地時間)、フランスのファッションメゾン「カルヴェン(Carven)」は、新たなデザインディレクターとしてカイ・ネッセルラート(Kai Nesselrath)を任命したことを発表した。ネッセルラートは、2026年4月に退任したマーク・トーマス(Mark Thomas)の後任としてブランドを率いることになり、2026年10月開催のパリ・ファッションウィークで2027年春夏コレクションを発表する予定である。

    Summary

    カルヴェンは、カイ・ネッセルラートを新デザインディレクターに任命
    ネッセルラートは、2026年4月に退任したマーク・トーマスの後任としてブランドを率いる
    デビューコレクションは、2026年10月開催のパリ・ファッションウィーク2027年春夏シーズンで発表予定
    ネッセルラートはサンローランで約10年にわたり経験を積み、ウィメンズウェア部門のヘッドデザイナーを務めた
    今回の人事は、2023年から進められているカルヴェン再建の重要な一歩と位置づけられる

     

    サンローランでキャリアを築いた実力派デザイナー

    ローマ生まれのネッセルラートは、フィレンツェのポリモーダ(Polimoda)を卒業後、ローマ美術アカデミー(Accademia di Belle Arti di Roma)やロンドンのセントラル・セント・マーチンズ(Central Saint Martins)でも学んだ経歴を持つ。

    キャリア初期にはシャネル(Chanel)で経験を積み、その後2016年にサンローラン(Saint Laurent)へ入社。約10年にわたり同ブランドでキャリアを重ね、最終的にはウィメンズウェア部門のヘッドデザイナーを務めた。

    カルヴェンのCEOであるショーナ・タオ(Shawna Tao)は、今回の任命について次のようにコメントしている。

    「今日の時代において、新しい世代の視点は特に重要だと考えています。カルヴェンの本質は、フレッシュで勇敢なクリエイター精神にあります。そして私たちは、カイこそがその精神を解釈し、表現するのに最適な人物であると信じています。」

    創業80年を迎えたメゾンの原点回帰

    カルヴェンは1945年、マリー=ルイーズ・カルヴェン=グロッグ(Marie-Louise Carven-Grog)によって創設された。創業者は本名をカルメン・デ・トマソ(Carmen de Tommaso)といい、エルザ・スキャパレリ(Elsa Schiaparelli)やガブリエル・シャネル(Gabrielle Chanel)と並び、20世紀フランスを代表する女性クチュリエの一人として知られる存在である。

    第二次世界大戦後のパリにおいて、快適さや自由な動きを重視したデザインを提案したことで支持を獲得。レスリー・キャロン(Leslie Caron)、エディット・ピアフ(Édith Piaf)、ミシェル・モルガン(Michèle Morgan)ら著名人にも愛された。

    ブランドは今回の発表の中で、ネッセルラートの就任を次のように説明している。

    「カイの就任は、2023年に始まったカルヴェン再生の重要な一歩となります。私たちの目標は、1945年の創業時に掲げられたブランドのビジョンへと立ち返ることです。それは、妥協のない創造性、優れたプロダクト、そして現代のライフスタイルとの関連性を基盤とした、フランスらしく包括的なファッションのあり方です。」

    再建が続くカルヴェンの現在地

    カルヴェンは2018年に経営破綻を申請した後、中国系ファッショングループであるICCFグループ(ICCF Group)に買収された。同グループは「アイシクル(Icicle)」も展開している。

    その後、ブランドは再建に向けた取り組みを進めており、近年ではルイーズ・トロッター(Louise Trotter)がクリエイティブディレクターとしてブランドイメージ刷新を主導した。トロッターの退任後はマーク・トーマスがデザインディレクターとして後を引き継ぎ、洗練された実用性を軸としたデザイン路線を継続してきた。

    また、過去にはギヨーム・アンリ(Guillaume Henry)、アレクシス・マーシャル(Alexis Martial)、アドリアン・カイヤドー(Adrien Caillaudaud)、セルジュ・ルフィユー(Serge Ruffieux)など、多くのデザイナーがブランドの方向性を担ってきた。

    「軽やかさと楽観主義」を掲げる新章

    ネッセルラートは就任にあたり、「軽やかさと楽観主義を胸に、カルヴェンに参加できることを嬉しく思います」と抱負を語っている。

    さらに、「私は、人が深呼吸できるような服や空間、そして会話を愛しています。マダム・カルヴェンの価値観を受け継ぎ、その精神を生かしていけることを光栄に思います。ショーナの信頼と、これから共に歩む旅路に心から感謝しています」と述べた。

    2023年以降、着実に再建への歩みを進めてきたカルヴェンにとって、ネッセルラートの起用は単なる後任人事ではない。サンローランで培った経験を持つ新世代デザイナーが、創業80年を迎えたメゾンの価値観をどのように現代へ接続していくのか。その第一歩となる2027年春夏コレクションに業界の注目が集まりそうだ。

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