【写真を見る】賀来は本作で映画初プロデュースを手掛け、「SXSW2026」ミッドナイター部門で観客賞を受賞

    PRESS HORRORでは、恐ろしくも魅惑的なこの野心作を作り上げた賀来賢人と、ドラマ「SHOGUN 将軍」(24)で注目を集め、今作でヒロインの愛里を演じた穂志もえかのインタビューを敢行。プロデュースに乗り出した経緯や意図といった核心に触れながら、新しい地平を目指した撮影の裏側に迫った。

    ■「作品作りを自分たちで最初から最後までできるのか、目で追える形でやりたかった」(賀来)

    ――まずは『Never after Dark/ネバーアフターダーク』で賀来さんが映画のプロデュースに乗り出した経緯からお話いただけますか?

    賀来「やってみたいとはずっと思っていたんです。自分たち俳優は、基本的には受け身な仕事ですから。以前はそれでも別によかったんですけど、Netflixで自分が原案の『忍びの家 House of Ninjas』を作ったのがやっぱり大きくて。あの作品で、映像作品を企画して作るということをわかったつもりでいたんですが、あれはNetflixが製作費を出してくれていたので、自分たちの作品を1から自由に作るうえでいちばん大切なプロセスが抜けていた。なので、『忍びの家』で組んだ監督のデイヴ・ボイルと映像製作会社『SIGNAL181』を作り、製作委員会を組まず、僕とパートナーの資金で自分たちの作品作りを最初から最後までできるのかを目で追える形でやりたかったんです。その一発目だったので、もちろん大変でしたが、製作のプロセスをすべて知ることができたので、次はもう少しスムーズにやれるような気がしています(笑)」

    ――本作はデイヴ監督のアイデアをベースにしたホラー映画です。賀来さんのやりたいことと、監督のアイデアはどこで合致したのでしょう?

    賀来「ホラー映画に可能性をすごく感じていたし、ほかのジャンルに比べてローバジェットでクリエイティブなことができるホラー映画は僕たちにとっても希望でした。それに、デイヴが最初に『こういうのどう?』って送ってきてくれたアイデアが幽霊的な怖さではなく、人間の怖さにフォーカスしたものだったんです。それを見たときに、日本人だけじゃなく海外の人たちも楽しめる作品になるなと思って。それに(霊界や自然霊と直接交渉する呪術的な儀式を行う)シャーマニズムは日本の霊媒師の文化にも繋がると思ったので、日本のロケーションでそれを行う人を実際にいるように描くことができれば、世界的にも人気がある“ジャパニーズホラー”というジャンルにデイヴ独自の視点を入れた、僕らっぽい作品になるような気がしたんですよね。感覚的な話で、そこまで打算的なものではないですけど、そんな感じで自然に『この企画を一発目にしよう』という流れになっていきました」

    穂志「ほかにもいろいろな企画があったなかから、『これにしよう!』ってなったんですか?」

    賀来「そう。さっきも話したように、バジェット(との兼ね合い)も大きいですよ。やっぱり中途半端なものは作りたくないので、『このバジェットならどれだけのことができるのか?』ということも考えて。そのなかでデイヴが『これ、どうだ?』って出してきたものに対して、『あ~、違う!』、『これも違う!』というやりとりを重ねながら、『じゃあ、これでどうだ?』『うん、これだ!』っていう形で決まったんです」

    穂志「そうなんですね」

    賀来「そうそう。デイヴはアイデアの宝庫なんで(笑)。本当に怖いぐらい、いくらでもストックがある人だから、そのひとつひとつを見ながら話し合って、本作に行き着いたというわけです」

    ■「穂志さんはテクニックじゃなく“心の芝居”をされる方」(賀来)

    ――霊と交信できる能力を使って全国の怪事件を解決してきた霊媒師のヒロイン、愛里役に、穂志さんをキャスティングされた決め手はなんだったのでしょう?

    賀来「愛里は特殊なキャラクターですから、誰にお願いしようかかなり悩みました。そんなときに観た『SHOGUN 将軍』の穂志さんの姿に惹かれるものがあったので、出演作である今泉力哉監督の『街の上で』や『窓辺にて』を拝見して、テクニックじゃなく“心の芝居”をされる方という印象を持ったんです。その脆さが愛里にハマるんじゃないかと思い、デイヴと一緒に穂志さんと初めて会ったとき、その予感が確信に変わったので、すぐにふたりで『はい、決まり!』という結論になりました」

    穂志「あれは2024年の4月ごろでしたが、当時はまだフリーランスの私のアドレスに『賀来賢人のマネージャーです』というメールが届いたので驚きました(笑)。そのときに熱い思いと具体的なビジョンが見える企画書もいただいたんですけど、なによりもうれしかったのは『「SHOGUN 将軍」のパフォーマンスに感激して、ぜひ穂志さんに出てほしいと思いました』と書かれていたことです。『SHOGUN 将軍』が配信されたのはその年の2月末で、アメリカでは話題になっていたものの、日本ではまだそんなに観られていなかったころだと思うんですよね。そんななかで、いち早く観てくださった賀来さんとデイヴさんに声をかけていただいたことが本当にうれしくて。『忍びの家 House of Ninjas』で出会ったおふたりが、新しいアプローチでエンタメ業界を切り拓いていくという印象も持ったので、お会いした時点で『この人たちと一緒にやりたい』って決めちゃってました(笑)。」

    ――穂志さんは撮影に入る前、デイヴ監督に「この物語で伝えたいことはなんですか?」とメールで聞かれたそうです。それに対する長文の返答や、参考資料として観るように言われたというニコラス・ローグ監督の『赤い影』(73)、ギレルモ・デル・トロ監督が製作総指揮を務めた『永遠のこどもたち』(07)は、お芝居の助けになりましたか?

    穂志「なりました。なにかを丸ごと踏襲したということではないんですけど、演技をするときにそこから得た要素が自分の持っているものと混ざり合って自然と出てきたような印象があって。意識的に『ここはあの映画のあの感じでやってみよう』みたいなことはあまりなかったのですが、そういうことが起こるから、監督の思いを聞いたり、参考映画を観て世界観を共有することは大切なんだろうなと改めて思いました」

    ■「『こういう世界がある』ということを純粋に信じてやりきる、子どものころの“ごっこ遊び”みたいな感覚で演じられた」(穂志)

    ――本作の最もオリジナリティに富んでいてユニークなところは、霊媒師の愛里が、ある事件で霊になった姉の美玖(稲垣来泉)とバディを組んで事件の真相に迫るところです。あの鏡や車の窓ガラスに映る美玖とのお芝居は難しくなかったですか?

    穂志「そうですね。お姉ちゃんとのシーンはすべて目を合わせずに芝居をしていて。相手役の目を見ずにあんなに長くお芝居をしたことがなかったので、大変だったけれど新鮮でした(笑)」

    ――愛里がその日の霊媒師の仕事を終了し、お酒を飲みながら踊り出すシーンなどにも、日本映画にはあまりない西洋の監督ならではの優雅なセンスが感じられました。観ていていちばん楽しかったのは、ゾエトロープを使った一子相伝の儀式で肉体と魂を分離させ、霊界に足を踏み入れるシーンです。

    賀来「あそこは、この映画のエンタメポイントのひとつ。編集でもいろいろなトライをしたんですけど、とてもワクワクするシーンになったと思っています」

    穂志「撮影も楽しかったですね(笑)」

    賀来「結構アナログな撮り方をしていたしね(笑)」

    穂志「いい意味でお芝居をしている感覚もなく。『こういう世界があって』とか『こういう設定で』ということを純粋にみんなで信じてやりきる、子どものころの“ごっこ遊び”みたいな感覚で演じられたので楽しかったです」

    ■「恐怖がたたみかける従来のものとは違う、新しいホラー映画に」(賀来)

    ――賀来さんがプロデューサーの視点で見て、「ここはうまくいったな」と思うような会心のシーンはどこですか?

    賀来「全シーンです(きっぱり!)。すべてが会心のシーンだと思っています。もちろん、現場で『ここはどう撮ろう?』、『こういう感じでやってみよう』といった感じで相談したり、トライしたりすることはありましたが、撮影に入る前にホン(台本)読みをやっていますからね。しかも、プロデューサーやスタッフに内容を把握してもらうためにやるような、僕の知っているホン読みとは違い、デイヴが提案するホン読みは監督と俳優のために行うクリエイティブなもの。 “座学”に近いやり方なんですけど、そこで『ここはこういう見方もあるよね』、『こういうふうにやってみよう』という共通認識がとれたので、現場でネガティブな感情になることはなかったです」

    穂志「私は、(謎の男に扮した)吉岡睦雄さんとのアクションシーンも印象に残っています。撮影に入る前に結構練習もさせてもらいましたが、変な手加減をすると逆にそれが危なかったりするので、お互いに相手を信じてやりきることが大事なんですよね。そういった技術的なことを学べたのも、いい経験になりました」

    ――賀来さんは過去のホラー映画の傑作を観て、「これは踏襲しよう」、「こういうことはやらないようにしよう」といったことも考えられたと思います。

    賀来「ホラー映画は、『死霊のはらわた』などのクラシックなものまでいろいろ観ました。ですがどちらかと言うと、ホラー映画を作ろうと思って作っていなかったというか、『結果、ホラー映画になればいいかな』っていうスタンスだったんです(笑)。もちろんホラー映画として売りたいし、怖さを強調するシーンもあります。だけど、劇場に足を運んでくれたお客さんの感想はきっと『めっちゃ怖かった~』にはならないような気がしていて。そうなればいいなと願っているし、そこは恐怖がたたみかける従来のものとは違う。新しいホラー映画を提示できると確信しています」

    ――ちなみに、おふたりがこれまでに観たなかでいちばん怖かったホラー映画はなんですか?

    穂志「え~あんまり観てない!でも、ホラーじゃないけれど、いま頭のなかをパッとよぎったのは『羊たちの沈黙』。あの人の殺め方は本当に怖かったです」

    賀来「怖かったというか、いちばん嫌だったのは『死霊館』かな。あまりよく覚えていないんですけど、観たくないのに観せられたんですよ、誰かに!(笑)。それもあって、『なんで俺、こんな怖い思いをしなきゃいけないんだろう?』って思った記憶がすごく残っています (笑)」

    取材・文/イソガイマサト

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