NHK土曜ドラマ『ムショラン三ツ星』にて、川口心平を演じる 俳優・玉置玲央さん(撮影:写真映像部・松永卓也)
    NHK土曜ドラマ『ムショラン三ツ星』にて、川口心平を演じる 俳優・玉置玲央さん(撮影:写真映像部・松永卓也)
    この記事の写真をすべて見る

     刑務所内の知られざる食のありようを描いたNHK土曜ドラマ「ムショラン三ツ星」(毎週土曜夜10時~10時45分)。刑務所に勤務する現役の管理栄養士・黒栁桂子さんが著した傑作ノンフィクション『めざせ! ムショラン三ツ星』が原作となり、待望のドラマ化。腕利きのイタリアンシェフとして名をはせた主人公・葉子(小池栄子)が、ひょんなことから刑務所の管理栄養士として働くことになり、塀の中の刑務官や受刑者たちとのトラブルや騒動を乗り越える姿を描いた“刑務所社会派コメディー”だ。

     過失致死罪により服役中の受刑者・川口心平を演じる玉置玲央さんのインタビュー記事を再配信する。(「AERA Books」に2026年5月29日に掲載されたものの再配信です)。

    【写真】NHK土曜ドラマ原作 何も知らず刑務所の炊場に飛び込んだ栄養士による傑作ノンフィクション

    *   *   *

    「刑務所を舞台にした“食”をテーマにする作品ですが、受刑者たちが食を通して感じていくことを、見てくださる方に取りこぼすことなく伝えないといけないというのが最初の印象でした。そしてそれは、黒栁さんが伝えたかったこととも齟齬があったりしてはならない。そういうふうに感じました」

     川口は、勤務先の工場で工場主とのトラブルの末、相手を殺してしまい男子刑務所に服役し、自分が犯した罪に向き合っていくという役どころだが、玉置さんはこの川口心平という役にどう向き合ったのだろうか。玉置さんは少し考え、

    「過去にも受刑者役を演じたことがありますが、どんな立場であれ、受刑者には罪を犯した事情というものがある、と思うんです」

     と、「事情」という言葉を軸として語りはじめた。

    「もちろん事情があるとはいえ、罪を犯した人間を正当化するつもりはありませんが、多くの場合は何かやむを得ない理由や背景がある。受刑者の人生はその後どうなっていくのか、そして受刑者自身変われるものなのか、ということを“食”や“炊場”での経験を通して体現していく存在ではないかと感じました」

    俳優・玉置玲央さん(撮影:写真映像部・松永卓也)
    俳優・玉置玲央さん(撮影:写真映像部・松永卓也)

     このドラマには、「炊場」という、一般には聞き慣れない刑務所ならではの言葉が登場する。原作にも詳しく記されているが、受刑者の中で炊場を担当するのは、素行の良い、いわゆるエリートだという。

     受刑者の中でのエリートであるということを意識しながら演技したというが、「しかし、これが難しくて」と話す。

    「演じるうちに楽しくなってしまい、受刑者であること、炊場が刑務所の中であることを忘れる瞬間もありました。しかし念頭に置いたのは、刑務所内の空気や料理、食事の再現、それらをリアリティーとコミカルさにおいてどのぐらいバランスをとっていけばいいのかという部分です。炊場に選ばれるということをリアリティーとして考えたときに、受刑者の立場からすると、それはエリートだから“選ばれた”というよりも、“回していただいた”という思いのほうが強いのではないかと」

    「ムショラン三ツ星」で炊場を担当する受刑者たちは、調理経験の有無は関係なく選ばれることもあり、混乱や成長もまた見どころのひとつだ。玉置さん自身は日常的に調理することがあるため、自然と身についている感覚を取り払うことも難しかった点だと話す。

    俳優・玉置玲央さん(撮影:写真映像部・松永卓也)
    俳優・玉置玲央さん(撮影:写真映像部・松永卓也)

    「不器用に演じなくてはいけない、という部分は確かにありました(笑)。たとえばブロッコリーが目の前にあったとします。僕はこれまでの経験から細かい房に分かれていて、ひとつずつ切り分けていくことが知識としてわかっている。しかしその知識がないと、いきなりど真ん中から二つに割ろうとするかもしれない。道具もそうで、ピーラーというものが何をするもので、どう使うのか……それこそ表裏もわからず困惑するかもしれない。そのぐらい演じたほうがいいのかな、どのへんまで不器用にやるべきか、そのあたりのリアリティーを考えるのが楽しくもあり難しい部分でもありました」

     玉置さんの演技を見て、それを読み取っていくのも、ドラマの醍醐味かもしれない。

    (※)NHK総合毎週土曜夜10時~10時45分(全5話)、NHK ONE(新NHKプラス)で同時・見逃し配信

    (ライター/太田サトル)

    現役の刑務所に勤務する管理栄養士・黒栁桂子氏による傑作ノンフィクション

    「クサいメシ」と言われる刑務所の給食。実は作っているのは受刑者自身。

    そんなことも知らずに、日本一小さな男子刑務所で刑務所栄養士として働くことになった著者を待っていたのは、調理経験ほぼゼロの受刑者たち。

     ふかしたジャガイモを冷ますために水をかけたり、冷凍コロッケが次々と爆発したり、料理初心者たちが真剣に取り組むあまりに起こる珍事件の数々。

     現役刑務所栄養士である著者と受刑者たちは、数々の失敗にも負けず、刑務所給食を、少しでも健康的に、少しでもおいしく、少しでも簡単に、少しでもワクワクできるものにしようと試行錯誤を重ねてきた。さあ、目ざすのは「ムショラン、三ツ星獲得」だ!!

    こちらの記事もおすすめ
    【もっと読む】受刑者は“罪”とどのように向き合い、“救い”を得ることができるのか

    Share.

    Comments are closed.