エリザベート王妃国際音楽コンクールで2位入賞した俊英が、昨年サントリーホールで行った凱旋コンサート・ライブ録音。冒頭のラヴェルの「高雅で感傷的なワルツ」から、その和声の移ろう様子を明瞭に印象づける演奏だ。リストをしなやかに弾き、バルトークを細密に形作る。コントラストではなくグラデーションで描くピアニストだ。ベートーヴェンの「熱情」ソナタは、慌てず騒がず、その組み立ての上手さに驚愕。第2楽章では、やはり和音の響かせ方、その移ろわせ方の鮮やかさに心奪われる。唯一残念なのは、演奏会で2曲目に演奏されたデュザパン作品が収録されていないことか。
    文:鈴木淳史
    (ぶらあぼ2026年6月号より)

    【information】
    CD『久末航 ピアノ・リサイタル 2025 at サントリーホール』

    ラヴェル:高雅で感傷的なワルツ/リスト:巡礼の年 第1年「スイス」より/バルトーク:3つのブルレスク/ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番「熱情」 他

    久末航(ピアノ)

    収録:2025年12月、サントリーホール(ライブ)
    オクタヴィア・レコード 
    OVCT-00218 ¥3520(税込)

    鈴木淳史 Atsufumi Suzuki

    雑文家/音楽批評。1970年山形県寒河江市生まれ。著書に『クラシック悪魔の辞典』『背徳のクラシック・ガイド』『愛と幻想のクラシック』『占いの力』(以上、洋泉社) 『「電車男」は誰なのか』(中央公論新社)『チラシで楽しむクラシック』(双葉社)『クラシックは斜めに聴け!』(青弓社)ほか。共著に『村上春樹の100曲』(立東舎)などがある。
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