3月某日、大阪・梅田で作家の寺地はるなさんとのトークイベントに登壇した。


    なぜ天を仰いでいるのか。

    この日は互いの近刊の話がメイン。寺地さんは『世界はきみが思うより』(PHP研究所)、岩井は『あしたの肖像』(光文社)について。寺地さんは大阪在住、岩井は大阪出身ということもあり、大阪トークにも花が咲いた。

    会場は、TSUTAYA BOOKSTORE 梅田MeRISEさん。こちらのお店は、関西大学梅田キャンパスのなかにある書店。1階にはスターバックスコーヒーも入っていて、身近でかつ洒脱な雰囲気である。

    イベント以前にも一度訪問したことがあったのだが、少し店内を回っただけでも、陳列している商品の個性が見て取れた。その時から「あなたの書店で1万円使わせてください」で取材したいと思っていたため、このイベントが決まった直後に取材を申し込んだところ、二つ返事で快諾していただいた。イベント前の時間を利用して、取材させてもらうことに。

    というわけで、今回は大阪のTSUTAYA BOOKSTORE 梅田MeRISEが舞台。一風変わった都心の書店、ぜひご覧ください。

    *    *    *

    最寄り駅は複数ある。阪急・大阪梅田駅、JR・大阪駅、地下鉄谷町線・東梅田駅および中崎町駅など、いずれも徒歩で行ける距離にある。

    ちなみに私は当日、地下鉄御堂筋線・中津駅から歩いた。御堂筋線の梅田駅で降りても行けたが、梅田周辺のダンジョンを攻略する自信がなかったため中津を選んだ。このルートでも徒歩10分くらいで着けたので、案外いいかもしれない。

    国道423号に面した関西大学梅田キャンパスの1・2階が、TSUTAYA BOOKSTORE 梅田MeRISEである。なお、この店舗はキャッシュレス決済のみの対応となっている。現金での支払いができないため、来訪する際はご注意を。


    某ロゴが入らないよう撮影するのに苦労した。

    まずはカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社の三砂さん、相本さんにご挨拶。店内での買い物の最中、お二人が案内してくださることになった。お忙しいなか、ありがとうございます。

    本企画のルールは「(できるだけ)1万円プラスマイナス千円の範囲内で購入する」という一点のみ。さっそく自腹(ここ重要)の1万円を準備して、買い物スタート。

    店内上部のカーブを描いた本棚には、本がぎっしりと並んでいる。陳列用のフェイクではなく、どれも本物の「本」だという。


    壮観。

    1階は左手にスターバックスカフェがあり、その手前に何やら気になるゾーンがある。小さな冊子がずらりと並んでいる棚で、「書きたいが書けるに変わる創作講座フェア」と銘打たれている。


    これはいったい?

    これは、関西大学が主催する「書きたいが書けるに変わる創作講座」を受講した方々の作品である。1年間で2作品の出版に挑戦し、出来上がった本は実際にこちらの店舗で販売される(製作は田畑書店)。この講座から生まれた本は、2年間で累計1100冊以上が販売されているという。

    ちなみに、今年3月29日には仁木英之氏、木下昌輝氏、松永K三蔵氏を講師に迎えたブックフェスが開催された。


    講師の方々の著作も展開されていた。

    他ではちょっと聞いたことのない取り組みで、非常に興味をそそられる。

    作品には手書きポップも添えられていた。これも著者みずから書いたもの。書くことだけでなく、売ることにも関わることができるのだ。値段はすべて330円(税込み)。


    工夫が凝らされたポップ。

    色々とおすすめの作品を聞き、こちらの3作を購入することにした。いずれも20~40ページの短編だ。

    ・負け犬『口内猿』

    ・ハローはるお『silent tree』

    ・川嶋美奈『縁切り娘』


    3冊買っても990円。

    引き続き店内を見ていると、なんと、スタッフ・三砂さんの著作を発見。


    三砂さんは執筆だけでなく、本の企画、編集なども手がける。

    店頭に『本屋という仕事』や『本屋のパンセ 定有堂書店で考えたこと』などが並ぶなか、特に気になったのは、三砂慶明『千年の読書 人生を変える本との出会い』(誠文堂新光社)。本書は、「人生を変える一冊」に巡り合うためのヒントがちりばめられた読書エッセイ集だという。

    内容紹介から抜粋する。

    〈本には人の人生を変えるほどの力があります。俳優を目指していた著者の友人は、サン・テグジュペリの『夜間飛行』を読み、パイロットになることを決意しました。〉


    〈なぜ、本には人生を変えるほどの大きな力があるのか。


    そしてどうしたらそんな本に出会うことができるのか――。〉

    本が人生を変える、というのは大袈裟ではなく、真実だと思う。私自身、本によって人生を変えられた一人だ。三砂さんにとっての「人生を変える一冊」がどんなものか知りたくて、購入を決めた。


    本のたたずまいも良い。

    店内は雑貨売り場も充実。


    棚には、備中松山城の「猫城主さんじゅーろー」のグッズが。(当時)

    本屋大賞コーナーにはオリジナルのポップも。


    スタッフの方の手作り。

    手の込んだ装飾が、ところどころに見られる。


    これも手作り!

    人文書や理工書から何冊か紹介してもらったなかで、まず惹かれたのが加藤喜之『福音派 終末論に引き裂かれるアメリカ社会』(中公新書)。

    実は本書の著者と柳澤田実氏の対談を前に読んだことがあり、もともと興味はあった。正直に言えば、「宗教学の観点からアメリカを考える」という視点そのものが私にとっては新鮮に感じられた。いままでその類の書籍に触れたことがなかったせいかもしれない。

    熱心なオススメもあり、こちらは購入決定。


    加藤教授出演のポッドキャストを聞きました。そっちも良かったです。

    もう1冊、理工書から勧めてもらったのはカル・フリン/木高恵子訳『人間がいなくなった後の自然』(草思社)。正確には環境人文学の本らしいが、「広義の理工書」なので別によいのである。

    著者は戦争後の荒地や放射能で汚染された土地、経済が崩壊した都市など、いくつもの「人間が見捨てた土地」を訪れる。一見するとダークツーリズムのようだが、それとはまったく違うらしい。

    人間がいなくなった土地は死に絶えるのではなく、むしろ、自然が新生しているというのだ。地球上のどのエリアとも異なる、豊かな生態系。人間が見捨てた土地には、それが存在する。

    聞いたことのない視点からのアプローチに、好奇心を刺激された。こちらも購入。


    巻頭にはカラー写真あり。

    店頭では、トークイベントに向けたフェアも展開されていた。寺地さんと岩井の著作がずらりと並んでいる。


    ありがとうございます。

    ここで、2階へ上がってさらに本を探すことに。あと1冊か2冊は買えそうな気がする。


    2階へ続く階段。眺望◎。

    このお店の2階はTSUTAYAとスターバックス、そして関西大学とカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社が共同で運営する「スタートアップカフェ大阪」の拠点となっている。誰でも気軽に起業の相談ができる場所だ。また、会員制のコワーキングスペースも備えている。

    2階の棚に並ぶ本は、ビジネス書が多い。ここを訪れる人の特徴を捉えて選書しているためだろう。


    「起業」のワードを含む本も多い。

    奥側の壁には、ここを訪れた方々のサインが残されていた。


    サインの主は経営者、編集者、投資家、写真家などさまざま。

    ここでも何冊かオススメを教えてもらった。

    なかでも熱心に勧めてもらったのが、小国士朗『笑える革命』(光文社)。著者の小国さんは、「注文をまちがえる料理店」や「deleteC」といった企画を手がけた方。

    特に面白いと思ったのが、目次の「「北風」ではなく「太陽」のアプローチ」という一文だった。広告やPRでたまに見かける、「恐怖訴求」的な表現は何とかならないだろうか、と思っていた。(脱毛しないとモテない! とか、勉強しないと乗り遅れる! とか)

    小国さんの提案する「太陽」のアプローチは、その逆を行っている気がする。どのようにしてその発想に至るのか、シンプルに興味が湧いた。

    というわけで、今日最後の1冊はこちらに決定。


    NHKという「お堅い」組織出身なのも意外。

    ここで今日の買い物はフィニッシュ。短編3冊+書籍4冊で。書籍は割とボリュームのある本が揃った。

    こちらのお店は基本的にセルフレジなのだが、特別にお会計してくださった。


    すみません。

    さあ、今回は合計いくらになったのだろうか。


    good

    単価の高い本もあるためやや不安だったが、ニアピンと言っていいのではないか。

    何より今回は、お二人にオススメの本を聞きながら店内を巡ることができたので、とても贅沢な買い物だった。自分だけでは選ばなかっただろう本もいくつかあり、満足感はかなり高い。

    *    *    *

    TSUTAYA BOOKSTORE 梅田MeRISEには、一般的な「書店」らしからぬ空気が漂っていた。まず建築物としてのあり様からして少し違う。巨大なガラス壁面や美しい内装などが、唯一無二の存在感を醸している。

    ハードだけでなく、ソフトも独自である。「創作講座」の本が並ぶ点はもちろん、選書にも一貫したこだわりを感じる。

    そのこだわりを私なりに言葉にするなら、「架橋」だ。関西大学内にあるこのお店は、大学と社会の接点であることが強く意識されている。起業をキーワードに、老若男女をつなぐ役割も果たしている。カフェやご当地グッズの物販が充実している点は、書店という存在を社会に開く試みともいえる。TSUTAYA BOOKSTORE 梅田MeRISEは、いくつもの意味で「架橋」を実践する場なのだ。

    店内はコンパクトにまとまっていて、歩きやすい。訪れた際には、ぜひ店頭をじっくり眺めてもらいたい。

     

    それでは、次回また!

     

    【今回買った本】

    ・負け犬『口内猿』、ハローはるお『silent tree』、川嶋美奈『縁切り娘』(田畑書店製作/書店ゲーム「書きたいが書けるに変わる創作講座」)

    ・三砂慶明『千年の読書 人生を変える本との出会い』(誠文堂新光社)

    ・加藤喜之『福音派 終末論に引き裂かれるアメリカ社会』(中公新書)

    ・カル・フリン/木高恵子訳『人間がいなくなった後の自然』(草思社)

    ・小国士朗『笑える革命』(光文社)

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