昭和の名女優で、広島市出身の月丘夢路さん(1921~2017年)の主演映画「乳房よ永遠なれ」(1955年)が27日、広島市映像文化ライブラリー(広島市南区)で上映される。今春の施設移転を記念し、一般財団法人「井上・月丘映画財団」(東京)が購入費を寄付した。長女で同財団代表理事の井上絵美さん(66)は「一人でも多くの人に見てもらえたら」と話す。(清水裕)
「多くの人に見に来てもらいたい」と話す井上さん(広島市南区で)
月丘さんは広島市の薬局の長女として生まれ、1937年に宝塚音楽歌劇学校(現・宝塚音楽学校)に入学した。同期には乙羽信子さんや越路吹雪さんらがいる。娘役として活躍し、宝塚退団後は日本映画の黄金期を支えた。2014年に宝塚歌劇の殿堂入り100人の一人に選出。23年には生誕100周年を記念し、同市中区の平和大通りに「祈りの記念碑」が建てられた。
23歳の時に終戦を迎えた月丘さんは原爆被害に対し、強い思いがあったことでも知られる。当時、家族は関西へ出掛けていて難を逃れたが、生まれ故郷の惨禍や被爆者の悲境に心を痛め、公演の収益金を寄付し、原爆孤児の支援活動にも取り組んだ。
核兵器の恐ろしさを伝え、二度と悲劇を繰り返してはいけないという気持ちは強く、被爆者の困苦を描いた映画「ひろしま」(53年)に無償で出演。専属契約していた映画会社からは猛反対されたが、意志を貫いた。井上さんは「母からは、『きれいなイメージできているのに、なんでボロボロの姿をさらさなければいけないのかと会社に言われたけど、譲れなかった。初めてわがままというか、反抗した』と聞いた」と明かす。
教師役で出演した月丘さんは撮影日記に「原爆の悲劇を、その犠牲となって生命をささげられた恩師先輩方に代わって世界の人々に知らせることは、世界のどこの人々よりも日本人のやるべきことだと思います」と記した。
同ライブラリーは地元出身の映画人を再評価したいと考え、「乳房よ永遠なれ」を収集できないかを井上さんに相談したところ、購入費の寄付を快諾してもらったという。俳優の田中絹代さんがメガホンを取った3作品目で、乳がんに侵された新進歌人の心持ちが活写されている。同ライブラリーの森宗厚子映像文化専門官は「70年以上も前に乳がんを取り上げた先駆的な映画で世界的にも評価されている。広島が生んだ大スターの演技に触れてほしい」と呼びかけている。
当日は午前11時と午後2時半、同6時半の3回上映。鑑賞料は大人380円、65歳以上と高校生180円。小中学生無料。問い合わせは同ライブラリー(082・298・0551)へ。
月丘さんの生誕100周年を記念して建てられた碑(広島市中区で)
関西発の最新ニュースと話題
あわせて読みたい
