Text: 岡本貴之
Photos: Sherwin Wong(♦)/ 望月秀記(●)
2026年4月9日と10日に、東京の渋谷パルコDGビル内にある「Dragon Gate」にて、音楽ショーケース&カンファレンス【CUEW Showcase & Conference】が開催された。主に音楽関係者向けのショーケースを企画する「CUEW(キュー)」主催の本イベントは、「日本と世界のあいだに新しいきっかけを生み出すこと」をコンセプトに、国内外の音楽業界キーパーソンによるトークセッション・パネルディスカッションを通して知識とアイディアを共有する機会を与え、それぞれの活動に即した音楽ビジネスに発展させることを目指している。
会場には国内外から多くの音楽関係者が集まり、あちこちで積極的に交流する光景も見られた。このレポートでは、当日行われたトークセッションの中から、いくつかのテーマを紹介する。
【アジア、ヨーロッパ、USをつなぐ音楽ネットワーク】

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近年、アジア圏内のアーティストたちがヨーロッパ、アメリカのフェス出演やツアーを積極的に行っている。そんな中、各地のフェス事情やショーケース、音楽ネットワークを取り巻く変化をテーマとして意見交換が行われた。
<進行>Chikara Kasahara (Made Management)
<スピーカー>Andy Jones (FOCUS Wales / Co-Founder & Head of Music)
Robin Werner (Reeperbahn Festival / Senior Partnerships Manage)
Romain Piquerez (RP Booking)
ここ数年の世界の経済状況や航空運賃の影響等、多くの変化を踏まえて各地の市場やフェス、ショーケースの状況は変わりつつある。フランスとカナダで活動するブッキングエージェントのRomain氏は、フランスのフェス市場の進化について、「大規模なフェスだけでなく、小中規模のフェスも多く存在します。そういったフェスで演奏することはトレンディでかっこいいとされている。ここ数年の感覚としては新人アーティストが大きなフェスやショーケースフェスで演奏することが以前よりも容易になってきていると感じています」と語る。

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英ウェールズで開催される国際ショーケースフェス【FOCUS Wales】の責任者であるAndy氏によると、イギリスのフェスは飽和状態といえるそうで、国際的な視点から見ると非常に魅力的ではあるものの、多くのアーティストが参加を望むため競争も激しいという。「例えば【The Great Escape】はイギリスの業界関係者や観客と交流してイギリス市場でのキャリアを築くための最初のつながりを作る場となっています。【FOCUS Wales】も開催されるこの時期(5月)は有意義な機会になると思うので、チェックしておいたほうがいいと思います」と述べた。
ドイツの【Reeperbahn Festival】のパートナーシップ統括兼ショーケース部門責任者であるRobin氏によると「ドイツの市場は国外音楽にオープン」とのことで、海外からどんなアーティストを連れてくるかが全フェスのポイントとなっていて、J-POPも人気だという。「海外アーティストをブッキングしたい小さなフェスもあり、日本の才能あるアーティストをプレゼンしたいです」と自身の仕事もアピールした。

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続いてChikara氏より「アジアのアーティストがヨーロッパに行くメリットと課題は?」とテーマが投げられると、「まず“宿題”をやってきてほしいですね。どういった人たちが自分たちに興味を持っているのか、どこのマーケットをターゲットにすべきか。足元を固めるための下準備も必要です」(Andy氏)、「宿題をするのは当然です。着実に一歩ずつ、自国でプロと繋がる道を探り、それがどこへ導くのかを事前によく考えること」(Romain氏)と、共に事前準備の大切さを語る。Robin氏は、「アーティストを発掘するとき、私たちは必ずしもビッグアーティストを見つけようとしているわけではありません。ニッチなアーティスト、特別なアーティストを求めています」と、ユニークな何かがブッキングチームの目に留まることも示唆した。
テーマは、日本を含むアジアのアーティストへの関心へ。「地理的に今までは欧米にフォーカスしていましたが、今ではアジアに興味を寄せています。なぜなら今はカルチャーが世界中にアクセスできるから。アニメ、ゲーム、音楽、日本に対する認識が変わり、ゲームフェスに日本のアーティストが多数出演しています。フィリピンやタイやインドネシアのアーティストに対しても同様です」(Robin氏)、「人々の音楽消費の仕方が変わってきています。K-POPなどいろんなシーンがありますが、日本のカルチャーにも注目しています。(自身が担当する)今年の【FOCUS Wales】には日本人アーティストはいませんが、来年は呼びたいですね」(Andy氏)、「韓国、日本、アジアに魅力を感じているオーディエンスは多いです。多くのアーティストも影響を受けています」(Romain氏)と、異口同音にアジア、日本のアーティストへの関心を語った。

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欧米で活動する上でエージェントの必要性はあるのだろうか。Romain氏は「バンドを発掘するのもエージェントの仕事です。現地のコネクションが大事で、そこからつながりが生まれる可能性はあります。また、現地メディアは重要なパートナーにもなります」と現地のプロの力を借りることの重要性を言いつつ、Andy氏は「高い手数料を求めてくるところはよくない。プロモーターも繋がっているので、噂は広がる」と自分たちで見極める必要性もあるという。
最後に「海外戦略の第一歩として、自国のマーケットでやるべきことは?」と問われると、「音楽業界人とつながること。そういう人たちをショーに招待し、自分たちの音楽が素晴らしいということを認識してもらうネットワークを構築することが大切です」(Robin氏)、「きちんと宿題を済ませてからフェスに応募することも大切です。ショーケースに出ることの投資のリスクも計算しなければいけませんから。エージェントと良好な関係を築ければブッキングされる確率も高くなると思います」(Andy氏)とアドバイスを送った。
【音楽フェスティバルにおける新しい潮流】

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各フェスの個性を起点に、ダイバーシティや社会的メッセージなど、「フェスは時代を映す鏡なのか」をテーマとしたトークセッション。
<進行>Cecilia Soojeong Yi (DMZ PEACE TRAIN MUSIC FESTIVAL / Artistic Director ALPS / CCO)
<スピーカー>Ivan Milivojev (EXIT Festival / Co-founder)
Tomas Daniel Alexander (WAY OUT WEST, Luger / Talent buyer)
Phuong Le (Wonderfruit / Music Director)
冒頭、進行を務めるCecilia氏が「ここに紹介されているフェスはすべて2000年以降に設立され、いずれも過去25年間で自国を代表する最高のフェスとなりました。彼らが最高のフェスになった理由は、最も有名なアーティストを呼んだからでも商業ブランドだけでもなく、フェスティバルの哲学や育まれたコミュニティと深く結びついた独自のアイデンティティを築き、守り続けたからです。彼らの視点からフェスの現在、そして未来のフェスシーンについてお話しします」と挨拶。3人の登壇者が自己紹介しながら、【Way Out West】、【Wonderfruit】、【EXIT Festival】、【DMZ PEACE TRAIN MUSIC FESTIVAL】と、それぞれが関わるフェスの映像がスクリーンで紹介された。

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トークは「フェス開始当時から変わったこと」から開始。【Way Out West】に携わるDaniel氏は「プリンスが出演した2011年。トータルで3~4時間ぐらい演奏したことが大きなブレイクポイントになった」と振り返る。2025年は過去最高のチケットの売り上げだったそうで、「今年はさらに若い人たちがより来やすいようにしたい」と意気込む。成長著しいフェス【Wonderfruit】について「コロナ禍以降、フェスの在り方は変わりましたか?」という質問に対し、Phuong氏は「タイの独立系フェスとして、コロナ禍の期間は簡単ではなかったものの、自分たちがフェスのフィールドを所有していたことは非常に運がよかったです。どう運営するかを真剣に考え、ただのレイブや音楽フェスだと認識されるのではなく、文化的なプラットフォームとして(来場者に)対話を促進したいと考えました」と、パンデミックをきっかけに気づきを得たことを明かした。ラインナップのダイバーシティを気にしているかを問われると、Phuong氏は「タイのフェスなのでアジアという地域を象徴することが大事だと思っています。そして、それぞれのステージにアイデンティティがあるので、多様的であることは不可欠です」と確固たる意志を伝えた。
ここでCecilia氏が「私たちフェス主催者はみな、公衆に対して大きな責任を負っていると認識しています。しかし同時に(フェスの映像内で映し出された)こうした幸せそうな顔を見ていると、今、世界で起きていることに対して私たちは活動家ではないのに罪悪感があります。みなさんはどうですか?」と投げかける。Daniel氏は「『なぜこんな時期にフェスを開催するのか?』と考える方ももちろんいるでしょう。むしろ今だからこそ、これまで以上に重要だと私は考えています。人と人が出会う橋を築き、一緒に音楽を探求することこそが、この世界の本質だと私はいつも言っています」と熱弁。「たとえ活発な戦争地帯でなくても、世界ではまだ戦争は続いていますし、何が起こるかわかりません。でも、私たち人間は何かをし続け、人生を生きていかなければならない。文化がなければ、何もないのと同じと言いたいです」というPhuong氏の訴えに、Ivan氏も「人々が共通で楽しめる場を提供すること。それが音楽フェスの醍醐味」と、フェスを通して生まれる人々の交流、そして音楽を楽しむ時間を提供するフェスの存在意義を共有した。

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最後に会場の参加者から、「紹介したいアーティストがいるとして、他国でパフォーマンスをしたことがない場合、ストリーミング数やプレス記事のほかに何に注目されますか?」という質問が。「SNSのフォロワー数よりも、見ていてワクワクするようなライブをやっているかどうかですかね」(Ivan氏)、「私たち【Way Out West】も同様です。ブッキングチームはいろんなライブを観ているので、やはりライブパフォーマンスを確認したいです」(Daniel氏)という意見があがり、「私がお願いしたいことは、まず【Wonderfruit】がどんなフェスであるかを理解していただきたいです。できれば実際にフェスを見ていただいて、アプローチしてもらえるといいと思います」(Phuong氏)と、それぞれがブッキング目線で答えて、このセッションは終了した。
