Billboard JAPANが展開する「Billboard JAPAN Book Charts」は、“いま何が読まれているのか”が見える注目の書籍チャート。話題のベストセラーはもちろん、SNSで人気を集めた作品や、アニメ化・映像化をきっかけに再浮上したタイトルがランクインすることも少なくない。そこで本稿では、2026年4月のチャート(※)をもとに、現在の読書トレンドをひもといていきたい。
※集計期間:2026年3月30日~2026年4月26日

■Book Hot 100
「Book Hot 100」は、紙書籍(店舗・EC)、電子書籍、図書館貸出、SNS指標を合算した総合書籍チャート。マンガや文芸といったジャンルの垣根を越え、あらゆる書籍を一つのランキングとして集約している。
〈第1位〉
『SPY×FAMILY』17巻(遠藤達哉/集英社)
凄腕スパイのロイド、殺し屋のヨル、超能力者のアーニャが、それぞれの正体を隠しながら“仮初めの家族”として暮らす痛快ホームコメディ『SPY×FAMILY』。店舗、電子書籍ともにトップを獲得した同作が、総合チャートでも首位に輝き、その圧倒的な人気を改めて証明してみせた。
最新17巻では、ロイドとヨルのデート回が描かれるほか、ロイドが長らく動向を追ってきた“標的”にまつわる意外な事実も判明。物語の核心に迫る展開が、大きな注目を集めている。
〈第2位〉
『名探偵コナン』108巻(青山剛昌/小学館)
『名探偵コナン』最新108巻は、黒ずくめの組織のNo.2が暗躍するなど、物語が大きく動く重要巻。かつてダ・ヴィンチWebで配信された『少年サンデー』編集長インタビューでは、作品の魅力として「物語の緻密さ」を挙げていたが、最新巻はまさにその言葉を裏付ける内容に…。また、店舗ランキングでは2位を獲得している一方、電子書籍では20位にとどまり、その購入動向の差も興味深い。長年続く国民的人気作だけに、紙のコミックスを購入するファン層の厚さが表れた結果と言えるかもしれない。
★少年サンデー編集長「コナンの本筋は“黒ずくめの組織との戦い”ではない!?」。ヒット作連発の根底にある「面白がることの大切さ」【大嶋一範インタビュー 前編】
〈第3位〉
『イン・ザ・メガチャーチ』(朝井リョウ/日本経済新聞出版)
3月の総合チャートで11位だった『イン・ザ・メガチャーチ』が第3位に急浮上した。2026年4月に発表された「本屋大賞2026」で大賞を受賞したことが順位アップの大きな要因だろう。ユーザー投稿サイト(ブクログとnote)などの記事数をもとにしたSNS指標でも1位を獲得しており、その注目度の高さがうかがえる。
作品のテーマとして据えられているのは、ファンの熱量や行動によって巨大なムーブメントが生まれる「ファンダム経済」。単なる“推し活小説”ではなく、大衆心理や熱狂の構造に踏み込んだ内容も大きな見どころだ。なおダ・ヴィンチWebでは、刊行を記念した著者インタビューやレビュー記事を配信中。
★朝井リョウ 作家生活15周年&『イン・ザ・メガチャーチ』刊行記念インタビュー
★朝井リョウ『イン・ザ・メガチャーチ』。生活を切り詰め、舞台俳優の「推し活」に励んできた35歳の女性。ある日、思わぬ報道が…【書評】
★<インタビュー>“今の時代、人を動かすものは何なのか”――『イン・ザ・メガチャーチ』を通じて朝井リョウが問う、人間にとっての推進力とは【WITH BOOKS】
『SPY×FAMILY』や『名探偵コナン』のほかにも、総合チャートのTOP10には『ONE PIECE』『ダンダダン』『夏目友人帳』など、アニメ化でも人気を博すコミックスが多く並んだ。また第10位には「マンガ大賞2026」で大賞を受賞した『本なら売るほど』の最新3巻も登場。同作は4月23日公開の急上昇チャートHot Shot Books(※)において、店舗、EC(通信販売)、電子書籍、SNSの各指標で1位を獲得し、首位に輝いている。定番人気作の強さに加え、賞レースや口コミをきっかけに支持を広げた新鋭タイトルの躍進も目立つ結果となった。
※集計期間:2026年4月13日~4月19日
★【Hot Shot Books】児島青『本なら売るほど 3巻』が首位、6月発売の辻村深月『ファイア・ドーム 上巻』がSNS話題で14位
■Culture
Culture部門では、総合書籍チャート「Book Hot 100」から文化・芸術関連書籍を抽出してランキング化。写真集やエッセイなど、多彩なジャンルの作品が並ぶ。
〈1位〉
『乃木坂46川﨑桜 1st写真集「エチュード」』(新潮社)
乃木坂46の5期生として活躍し、“さくたん”の愛称で親しまれている川﨑桜。自身初となるソロ写真集『エチュード』では、憧れの地・フランスを舞台に、これまでとは異なる表情を披露している。発売前から重版が決定するなど高い注目を集めていた同書だが、発売後もその勢いは健在。店舗ランキングでは首位、ECでの売上も第2位を獲得した。なおEC指標の第1位は、Cultureチャート第4位にランクインした瀬口黎弥の2nd写真集『Lei』。
〈2位〉
『大河の一滴 最終章』(五木寛之/幻冬舎)
1998年に刊行され、累計320万部超のベストセラーとなった『大河の一滴』。その続編にあたる『大河の一滴 最終章』では、著者・五木寛之が“93歳”となった今だからこそ語る人生論が綴られている。店舗指標で第2位、ECでは第6位にランクインしており、オンラインでの購入需要も高いことがうかがえた。今年4月にはYouTubeチャンネル「TBS CROSS DIG with Bloomberg」で、文芸評論家・三宅香帆との著者対談が配信されたため、その反響が順位を後押ししたのかもしれない。
〈3位〉
『ユダヤ人の歴史 古代の興亡から離散、ホロコースト、シオニズムまで』(鶴見太郎/中央公論新社)
およそ3000年に及ぶユダヤ史をまとめた『ユダヤ人の歴史』は、2025年1月に発売された書籍。店舗指標は第3位、SNS指標では第10位を記録し、3月のCultureチャートでも第4位に入るなど、継続して高い関心を集めている。今年2月末にはイスラエルとアメリカによるイラン攻撃が始まり、中東情勢への注目度も上昇。そうした国際情勢を背景に、同書へ関心を寄せる読者が増えているのかもしれない。
そのほかCulture部門では、3月のチャートで第11位だった『介護未満の父に起きたこと』が第7位に浮上。“老人以上、介護未満”の80代父と娘の奮闘を綴った実録エッセイで、4月6日に配信されたPodcast番組『太田光と15人のしゃべり手』では、著者のジェーン・スーがゲスト出演し、同書について語る場面も見られた。なおダ・ヴィンチWebでは、過去に彼女へのインタビュー記事も配信している。
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■Economy
Economy部門では、総合書籍チャート「Book Hot 100」から政治・経済関連を抽出してランキング化。ビジネス書や社会学系タイトルなどが並ぶ。
〈1位〉
『本当の自由を手に入れる お金の大学』(両@リベ大学長/朝日新聞出版)
『本当の自由を手に入れる お金の大学』は、お金に困らない人生を送るためのノウハウをわかりやすく解説した一冊。2020年に刊行されたロングセラーで、2024年11月には改訂版も発売され、2026年3月に累計200万部を突破した。そうした話題性も追い風となったのか、3月のEconomyチャートでは第3位にランクインし、4月には首位へと浮上。日経平均株価が“史上初の6万円台”を突破したこともあり、資産形成やお金に関する知識への関心が高まっているのかもしれない。
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〈2位〉
『思考の整理学』(外山滋比古/筑摩書房)
『思考の整理学』は1983年に刊行され、1986年に文庫化、2024年には新版として再刊された学術エッセイ。歴代の東大生・京大生から根強い支持を集めており、2008年から2024年までの17年間で、東大生協本郷書籍部では7回、京大生協では9回にわたって年間文庫ランキング1位を獲得している。
そうした学生人気はEconomyチャートにも表れており、入学シーズンとなる3月・4月はいずれも第2位を獲得。SNS指標でも両月とも第1位となった。一方で、店舗指標は2位から5位へと順位を下げている。新生活が始まる前のタイミングで購入する読者が多かったのだろうか。
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〈3位〉
『生きる言葉』(俵万智/新潮社)
歌人・俵万智ならではの視点で、言葉の使い方やコミュニケーションの本質をひもとく『生きる言葉』。今年2月に放送されたNHK番組「インタビュー ここから」でも紹介され、改めて注目を集めた同書は、3月に累計発行部数19万部を突破した。実際にEconomyチャートでも存在感を増しており、3月は第4位、4月には第3位へとランクアップ。SNS指標も第8位から第3位へ上昇し、同書に刺激を受けた読者たちが、思わず“言葉”について発信したくなった様子もうかがえる。
新書だけではなく、ロングセラーとなっている過去作も多くランクインした今回のチャート。第5位には玉川学園の創立者・小原國芳の代表作『全人教育論』、第6位には同氏の生涯や玉川学園の歴史などを綴った『全人教育の歴史と展望』がランクインしている。
「Billboard JAPAN Book Charts」では、ほかにもBungei(文芸)やManga(マンガ)といったカテゴリー別チャートに加え、いま読まれている昭和、平成、令和刊行の書籍をまとめた時代別チャートも見ることができる。定番ロングセラーから話題の新刊まで、多彩な角度から現在の読書トレンドを読み解ける点が大きな魅力だ。ランキングを眺めるだけでも、“いま何が読まれているのか”が自ずと浮かび上がってくるのではないだろうか。
★「Billboard JAPAN Book Charts」公式サイト

