愛知県陶磁美術館(愛知県瀬戸市)で、特別展「巨匠ハインツ・ヴェルナーの描いた物語メルヘン -現代マイセンの磁器芸術-」が5月30日から開催されます。
ヨーロッパを代表する名窯、マイセン。現在のドイツ、ザクセン州の古都・マイセンで18世紀に王立の磁器製作所として創業しました。ヨーロッパ初の磁器焼成に成功したマイセンは、現在まで多くの名品を世に送り出してきました。
日本においては初期のマイセン製品が特に人気を集めてきましたが、実は1960年頃からのいわゆる「現代マイセン」にも知られざる優れた製品が数多く存在します。マイセンの培った高度な磁器作りの技術と、成型・デザイン・人形制作などの芸術家グループの豊かな才能が合わさって生み出された磁器は、極めて質が高く、まさに“磁器芸術”と言えるものでしょう。
本展では、現代マイセンを代表する《アラビアンナイト》《サマーナイト》《ブルーオーキッド》などのシリーズを生み出した巨匠ハインツ・ヴェルナー(1928-2019)の作品が多数紹介されます。ヴェルナーはドレスデン芸術アカデミーの分校として1764年に設立されたマイセン養成学校で絵付けを学び、後に様々な名作のデザインを手掛けました。ヴェルナーがデザインを手がけた多彩なサービスウェアの数々、プラーク(陶板画)などの作品を通して、その魅力を体感できる展示内容となっています。
特別展「巨匠ハインツ・ヴェルナーの描いた物語 -現代マイセンの磁器芸術-」
会場:愛知県陶磁美術館(愛知県瀬戸市南山口町234)
会期:2026年5月30日(土)~9月27日(日)
開館時間:
5月30日(土)~6月30日(火)9:30~16:30
7月1日(水)~9月27日(日)9:30~17:00
※いずれも入館は閉館の30分前まで
休館日:毎週月曜日
(ただし7月20日、9月21日の祝日は開館し、7月21日は休館)
観覧料:一般1,400円、大学生1,200円、高校生以下無料
※各種割引制度あり。詳しくは公式サイトをご覧ください。
アクセス:
東部丘陵線(リニモ)「陶磁資料館南」駅から徒歩約15分
長久手ICから車で約5分
詳細は、愛知県陶磁美術館公式サイトまで。
展示構成と主な出品作品
プロローグ:名窯の誕生
18世紀の伝統的なマイセン製品と、その手本となった17世紀の柿右衛門窯の製品などを交え、名窯マイセンの誕生と歴史が紹介されます。
《色絵龍虎図輪花皿》肥前有田 江戸時代中期(1670-90年代) 愛知県陶磁美術館蔵/西欧が憧れた日本の「柿右衛門」
《色絵梅竹虎図皿》マイセン 1740年代 愛知県陶磁美術館蔵/マイセンは柿右衛門写しから始まった
第1章:磁器芸術の芽吹き
東ドイツ時代のマイセン養成学校で、絵付師となるべく厳格な教育を受けたヴェルナー。「芸術の発展を目指すグループ」のひとりとしてデビューした直後の1960年代初期の作品が紹介されます。
《エンゼルフィッシュ》花瓶 マイセン 1958年 装飾:ハインツ・ヴェルナー 器形:ハンス・メルツ 個人蔵/ハインツ・ヴェルナーのデビュー作
《スウィトピーの文様》コーヒーサービス マイセン 1962年 装飾:ハインツ・ヴェルナー 器形:エアハルト・グローサー、アレクサンダー・シュトルク、ルートヴィッヒ・ツェプナーの共作 個人蔵/マイセン創業250周年記念の品
第2章:名シリーズの時代
1960年代後半~1970年代後半にかけてヴェルナーは、《サマーナイト》《アラビアンナイト》《ミュンヒハウゼン(ほら吹き男爵)》《狩り》《ブルーオーキッド》をはじめとした名シリーズを次々と生み出します。シェイクスピアの「真夏の夜の夢」にインスピレーションを得て創作した《サマーナイト》はオーベロンとティターニア像を中心に夢溢れる世界が広がります。あわせてウニカート(1点物)として制作された陶板画なども紹介されます。
《ミュンヒハウゼン(ほら吹き男爵)》 コーヒーサービス マイセン 1964年 装飾:ハインツ・ヴェルナー 器形:エアハルト・グローサー、アレクサンダー・シュトルク、ルートヴィッヒ・ツェプナーの共作 個人蔵/メルヘンを題材にしたシリーズの記念碑的作品
《ミュンヒハウゼン(ほら吹き男爵)》コーヒーサービス 部分
《ミュンヒハウゼン(ほら吹き男爵)》コーヒーサービス 部分
《ブルーオーキッド》プレート、カップ&ソーサー マイセン プレート:1977年 カップ&ソーサー:1978年(1987年頃製作) 装飾:ハインツ・ヴェルナー 器形:ルードヴィッヒ・ツェプナー 個人蔵/あのブルーオニオンに並ぶ名シリーズ
《狩り》大燭台 マイセン 1973年 装飾:ハインツ・ヴェルナー 彫像:ペーター・シュトラング 個人蔵/マイセンの高度な技術が証される巨大な燭台
《サマーナイト》ティーサービス マイセン 1969年(1974年以降製作) 装飾:ハインツ・ヴェルナー 器形:ルードヴィッヒ・ツェプナー 個人蔵/シェイクスピアの『真夏の夜の夢』を描いた傑作
《サマーナイト》部分
《サマーナイト》ティーサービス 部分
《アラビアンナイト》コーヒーサービス マイセン 1966年(1974年以降製作) 装飾:ハインツ・ヴェルナー 器形:ルードヴィッヒ・ツェプナー 個人蔵
《アラビアンナイト》ティーサービス マイセン 1966年 装飾:ハインツ・ヴェルナー 器形:ルードヴィッヒ・ツェプナー 個人蔵
第3章:光と色彩の時代
1970年代後半からヴェルナーのデザインは、具象を超え、生命力あふれる美しい色と線や面の共演となっていきます。1975年には初来日し、日本の風景を描いた作品も創作します。円熟を見せつつも、常に新しい挑戦に満ちたヴェルナーの作品が紹介されます。
《ヴィジョン》コーヒーサービス マイセン 1990年 装飾:ハインツ・ヴェルナー 器形:ルードヴィッヒ・ツェプナー 個人蔵/新機軸を打ち出した幻想的かつクールなシリーズ
《アフロディーテ》コーヒーサービス マイセン 1998年 装飾:ハインツ・ヴェルナー 器形:ルードヴィッヒ・ツェプナー 個人蔵/踊るような筆致で軽やかに
《インプレッション》カップ&ソーサーほか マイセン 1985年 装飾:ハインツ・ヴェルナー、フォルクマール・ブレッチュナイダー 器形:ルートヴィッヒ・ツェプナー 個人蔵
エピローグ:受け継がれる意志
マイセンを引退した後も、ヴェルナーは幻想的で美しい作風の絵画などを意欲的に制作します。彼の晩年を辿るとともに、現在のマイセンで活躍する、ヴェルナーの意志を継ぐ若いアーティストたちが紹介されます。
《マスケラーデ》 カップ&ソーサーほか マイセン 1991年 装飾:ハインツ・ヴェルナー、アンドレアス・ヘルテン 器形:ルードヴィッヒ・ツェプナー 個人蔵/みずみずしい感性がはじける作品
《ドラゴンメロディ》 コーヒーサービス マイセン 1994年 装飾:ハインツ・ヴェルナー 器形:ルードヴィッヒ・ツェプナー 個人蔵/ヴェルナー自らの創作メルヘンを題材にした作品だ
18世紀の創業以来、ヨーロッパ磁器の頂点に君臨し続けるマイセン。その長い歴史の中でも、20世紀後半に彗星のごとく現れた巨匠ハインツ・ヴェルナーの功績は計り知れません。本展は、これまで日本ではあまり語られることのなかった「現代マイセン」の知られざる魅力にスポットを当てた、ファン待望の展覧会です。ヴェルナーが描いたメルヘンや幻想的な物語の世界は、磁器という枠を超えて、見る者を夢溢れる芸術の旅へと誘ってくれることでしょう。本展は、巡回展の中でも最大規模の展示作品数が揃い、まさにヴェルナー芸術の集大成を見ることができる貴重な機会となります。名窯の伝統と現代の感性が融合した、美しき磁器芸術の粋をぜひ会場で体感してみてください。(美術展ナビ)
