松岡美術館(東京都港区白金台)で、「風そよぐ情景 ヴィクトリア朝絵画・フランス印象派」が6月16日から開催されます。
松岡美術館所蔵の19世紀のイギリス・フランス絵画に描かれた美しい景観や女性像は、予備知識を必要とする神話や歴史を描いた作品とは異なり、年代を問わず多くの方が純粋に絵画鑑賞を楽しめる絵画です。ヴィクトリア女王の治世(1837-1901)はイギリス史上最も繁栄し、美術活動も大いに活性化した時代です。一方、1800年代後半のフランスでは日常の何気ない風景や人々を主題として活き活きとした臨場感をカンヴァスにとらえようとする印象主義が現れ、その後に巻き起こる芸術活動の先駆けとなりました。
本展では、イギリスの美しい自然を捉えたベンジャミン・ウィリアムズ・リーダーの風景画や、チャールズ・エドワード・ペルジーニの清楚な女性像に代表されるヴィクトリア朝時代の絵画、さらにフランス印象派からはモネやピサロ、ギヨマンらの作品など約35点が披露されます。英国アカデミー系作家による写実的な自然描写の美しさやフランス印象派の大気や光の表現を、心ゆくまで楽しんでみてはいかがでしょうか。
クロード・モネ《サン=タドレスの断崖》1867年
カミーユ・ピサロ 《羊飼いの女》 1887年頃 展示期間 6月16日(火)-8月16日(日)
企画展 風そよぐ情景 ヴィクトリア朝絵画・フランス印象派
同時開催 五窯響宴 宋から元までの中国陶磁
会場:松岡美術館(東京都港区白金台5-12-6)
会期:2026年6月16日(火)~10月12日(月・祝)
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)
観覧料:一般1,400円/25歳以下700円/高校生以下無料
※障がい者手帳をお持ちの方と介助者1名まで上記料金の半額
※25歳以下の方、障がい者手帳をお持ちの方は証明書の提示が必要
アクセス:東京メトロ南北線・都営三田線「白金台駅」1番出口より徒歩7分
詳細は、松岡美術館公式サイトまで。
展覧会の見どころ
1. 心やすらぐイギリスの風景画
森林や河川の美しさが細密に描きこまれた牧歌的な風景に心癒やされるのは、現在作品を鑑賞する私たちばかりではなく、100年以上も前の制作当時の人々にとっても同じでした。産業革命による工業化、都市化の流れによって、すでに“失われゆく景観”へと移行していた美しい自然は人々の田園風景への郷愁を喚起し、こころを癒やすものとして大変好まれたのです。
ここでは臨場感豊かに景観が描かれたペンジャミン・ウィリアムズ・リーダー《北ウェールズの穏やかな午後》や、ラモーナ・バーチ《ペンザンスの西の谷》をはじめ、同時代に活躍したピーター・ポルティーリエ《オリエントの少女像》や、ジョン・エヴァレット・ミレイ《聖テレジアの少女時代》といった人物画も出品されます。
ベンジャミン・ウィリアムズ・リーダー 《北ウェールズの穏やかな午後》 1885年
エドウィン・メドウズ 《家畜と風車のある風景》
2. 印象派のモネを生んだ師匠ブーダンと印象派の画家たちの作品
貧しい家庭に育ち仕事の合間に好きな絵を描いていたウジェーヌ・ブーダンは、20歳代半ばからデッサン学校の講座に通い始め、画家への道を歩み出します。その10年後のこと、ブーダンは画材店で展示されていたカリカチュア(風刺画)を見て18歳のモネの才能を感じ取り熱心に油彩画の勉強を勧め、戸外での制作に誘いました。風景画のすばらしさに開眼したモネは画家になることを決意し、パリの画塾で出会った仲間たちとグループ展を開き、彼らは印象派と呼ばれるようになります。今展ではウジェーヌ・ブーダン《海、水先案内人》、若き日のモネの作品《サン=タドレスの断崖》、生涯にわたり印象主義を通したシスレーによる《麦畑から見たモレ》などが展示されます。
ウジェーヌ・ブーダン 《海、水先案内人》 1884年
オーギュスト・ルノワール 《リュシアン・ドーデの肖像》 1879年 展示期間 8月18日(火)-10月12日(月・祝)
アルフレッド・シスレー 《麦畑から見たモレ》 1886年
同時開催「五窯響宴 宋から元までの中国陶磁」(展示室4)
多様な文化や芸術が花開いた宋時代から、モンゴル民族の元時代までの およそ400年間に渡り、中国各地の窯で個性的な陶磁器が産み出されました。洗練された定窯の白磁、多彩な磁州窯の装飾技法、翠青色が美しい龍泉窯の青磁、幻想的な趣のある鈞窯の澱青釉、白い地を埋めるように複雑な文様を描いた景徳鎮窯の元時代の青花。
「風そよぐ情景 ヴィクトリア朝絵画・フランス印象派」と同時開催されるこの展示では、宋時代から元時代に五つの窯で製作された時代を代表するやきものを館蔵の名品でたどります。鮮やかな釉薬の色や神秘的な艶、さまざまな装飾技法、当時の人々が追い求めた美が紹介されます。
青花魚藻文大盤 元時代 14世紀 景徳鎮窯
《青磁双魚文盤》 南宋~元時代 龍泉窯
《澱青釉紅斑碗》 金時代~元時代 鈞窯
展覧会の見どころ:磁州窯の装飾技法
磁州窯は民間需要に応えた窯で、当時求められていた高価な白磁の美しい白さをめざし、灰色の素地に溶いた白土をかけて白化粧をした白釉陶器を完成させました。次第に白化粧をした表面を削り、灰色の下地を見せることで文様をつける掻落という技法が生まれ、白化粧の上に黒釉をかけて削る黒掻落など、彫り文様による装飾技法が発展しました。やがて、筆で直接上絵付けする加彩が本格的に始まり、この量産可能な絵付けの技法は後の元時代の青花磁器へとつながります。白と黒のコントラストがひときわ際立つ磁州窯の様々な装飾技法を見ることができます。
磁州窯の装飾技法
本展は、19世紀の英国を彩った写実的な風景画から、光の粒子を捉えようとしたフランス印象派の傑作まで、時代と国境を越えた「風」を感じられる贅沢な構成です。松岡美術館が誇る質の高いコレクションは、難しい予備知識を抜きにして、誰もがその美しさを堪能できるのが魅力です。同時に開催される中国陶磁の名品展も見逃せません。洗練された白金台の空間で、初夏の心やすらぐひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。(美術展ナビ)
