魚屋あり、あられ屋、雑貨屋ありの「はっぴいもーる熊野前」を歩くと、すぐに見つかった。

     前面がガラス張りなので、本がずらりの様子が外から見える。「店内の商品は全品100円」と張り紙。そう、ここでは単行本も文庫本も全てが100円均一。それに無人営業──という珍しい店なのだ。

     約10坪の店内に入る。控えめに音楽がかかり、本の居住まいは自由度が高いもよう。宮部みゆきの隣に戦後文学があり、岩波少年文庫の横に健康本がある。その雑多さが、妙に楽しい。お宝探しができそうだ。

     おっと、奥は作業途中の場のよう。20~30冊ずつ紐でくくられて山積み。無人なのに人の気配を感じる不思議。そして、中ほどに置かれていたのがアナログな券売機。本を買うとき、「1冊100円」「5冊500円」などのボタンを押してお金を入れる形式だ。

     店主・小国貴司さんが現れ、「久しぶりですね」。駒込で2017年から普通の古書店「青いカバ」を経営なさっている。「もうすぐ10年、めちゃくちゃ早かったです」とおっしゃる表情に、会心のほほ笑みを見た!

    「失敗しても100円だから、新しい作家にも挑戦できるでしょ?」と小国さん

     ここは去年オープンした2店目。「古本の仕入れには、『ほしい』本以外もついてくるでしょ。普通は店頭の『均一本』になるんですが」と小国さん。その「均一本」だけで全面展開しているのだ。

    「失敗しても100円だから、新しい作家にも挑戦できるでしょ? 自分も学生時代、古本屋でそうやって知らない本に出合ってきたから」

     営業時間中はいつも開いている。開・閉店時の鍵の開閉も、音楽を流すのも、小国さんがスマホの遠隔操作で行う。棚の整理は小国さんが週1~2回来て行うそう。このときも作業を始めるや、店内全域が生き生きとし始める。

    「植物に水をやる感じですかね(笑)」

     取材中、町屋から自転車で来たという80代の男性客が、棚をゆっくり眺めていた。2冊を手に、券売機へ向かいながら、「今日も面白い本に出合えた」とニヤリ。

    「古本屋は捨てるのも仕事。刷り部数が多かった本は、市場に大量に出るから、そのままだと価値が下がる。私たちが捨ててあげ、量を減らすことによって、残った本の価値が上がる。需給バランスをとっている」。取材の合間に聞いた、そんな話が頭にこびりついた。

    ◆荒川区東尾久5-18-3/日暮里・舎人ライナー熊野前駅または都電荒川線熊野前駅から徒歩5分/℡070-1241-0924/午前9時~午後9時、無休

    ウチの推し本

    「お話を運んだ馬」I.B.シンガー作、工藤幸雄訳

     お話の名手が愛馬と一緒に町や村を回り、子どもたちに物語の楽しさを伝え歩く8編。

    「著者はポーランド生まれ。イディッシュ語の中で育った作家。のちに米国の市民権を獲得しますが、執筆はイディッシュ語でのみ行い、イディッシュ作家として初めてノーベル賞を受賞したんです。並べると『2時間で売れる』と思っていたのに、3~4カ月動いていない。なぜでしょうね」

    (岩波少年文庫 古本売値100円)

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