浅野撚糸の浅野雅己社長(左)とスタイレム瀧定大阪の瀧隆太社長(5月14日、福島の「フタバスーパーゼロミル」で)

    スタイレム瀧定大阪と、独自の高機能撚糸「スーパーゼロ」で知られる浅野撚糸は、「スーパーゼロ」を活用した服地開発で戦略的パートナーシップを締結した。タオル分野で高い知名度を持つ「スーパーゼロ」を、ファッション用途へ本格展開し、国内外への発信強化を狙う。

    浅野雅己社長は、「日本ではタオル分野と双葉町の工場によって『スーパーゼロ』の認知は広がってきたが、海外での知名度はまだ低い。ファッション分野で圧倒的な開発力を持つスタイレムと組むことで、日本だけでなく世界市場に『スーパーゼロ』を発信したい」と話す。一方のスタイレムの瀧隆太社長も「撚糸の究極形態ともいえる『スーパーゼロ』は、服地にした際にも非常に優れた特徴を発現する」と期待を寄せる。

    浅野撚糸は2004年、水溶性ビニロンを組み合わせた特殊撚糸技術「スーパーゼロ」を開発した。糸内部に空気層を生み出すことで、軽量性、吸水性、速乾性、柔らかさを高次元で両立するのが特徴で、主力タオルブランド「エアーかおる」で広く知られている。

    同社は23年4月、福島県双葉町に総事業費約30億円を投じ、撚糸工場、カフェ、ショップなどの複合型工場「フタバスーパーゼロミル」を稼働。「スーパーゼロ」糸を年間約500トンの生産能力を持つ。実は浅野撚糸は、「スーパーゼロ」の開発当初から服地用途に挑戦してきた。ただ、特殊素材ゆえに編み・染色・仕上げなど各工程で高度な調整が必要で、継続展開には至らなかったという。

    浅野社長は「服地化には長年取り組んできたが、扱いが難しく、短期間で終わってしまうケースも多かった。服地卸のリーディングカンパニーであるスタイレムと、中長期視点で取り組めることは夢のような話」と語る。

    現在は綿100%の丸編み素材を中心に開発を進めており、パーカ向け裏毛やカットソー素材では、驚くほど軽くソフトな風合いを実現している。今後はウールや織物分野への展開も視野に入れる。スタイレムで開発を担当する金島一裕テキスタイル1部副部長は、「編み、染色加工、仕上げなど、各工程で細部まで作り込む生産設計が必要になる。現場知見や微細なチューニングを積み重ねたことで、かなり完成度の高い素材ができている。水面下では有力ブランドでの製品化も進んでいる」と明かす。

    浅野社長は、「今回の提携は、実際の取引金額以上のインパクトがある。ファッション分野で認知が広がり、海外市場で『スーパーゼロ』が浸透すれば、数十億円規模の可能性も見えてくる」と強調する。さらに、「服地業界の名門企業であるスタイレムと、地方の撚糸工場が直接組むこと自体、既存の産業構造の変化を象徴している」とも語った。

    両社は今後、「メード・イン・フクシマ」の発信も強化する考えだ。浅野社長は、原発事故から復興に取り組む双葉町を「世界的に見ても唯一無二の価値を持つ場所」と位置付け、「卓越したテキスタイルに福島発のテクノロジーが搭載されていることを世界へ伝えたい。それが双葉町や福島のブランディングにもつながる」と語る。

    瀧社長も、「そうした背景やストーリーも含め、世界市場にしっかり発信していきたい」と話している。

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