中高生のためのファッション育プロジェクト「フューチャー・ファッション・インスティテュート(FUTURE FASHION INSTITUTE、以下FFi)」は、「ファッション育」を通じて子どもたちの感性を磨き、未来の業界を担う人材や、センスを生かして働く力の育成を支援する。展示会訪問や業界人へのインタビューを重ねる中高生メンバーは、自らの体験を発信し、周囲に刺激を与えている。FFiはこうしたポジティブな循環を通じて、子どもたちが「未来の自分」を思い描き、夢に近づくことを目指す。

    FFiが2019年秋より見学を続けてきた「楽天ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」も今回で14シーズン目を迎える。今年は、Vol.13で紹介した日本ファッション・ウィーク推進機構(以下JFWO)ディレクターの今城薫氏からの学びを経てショーを見学した。そショーを楽しむだけでなく、ファッション業界を支える仕事の視点を持ちながら、5つのブランドや企画のショーを観覧。プロの仕事の迫力を改めて肌で感じたひとときとなった。  
     

    3月16日
    「台湾セレクト(TAIWAN SELECT)」

    写真:谷遼太郎

    写真:谷遼太郎

    写真:谷遼太郎

     
    見学のスタートを飾ったのは、台湾テキスタイルフェデレーション(紡拓会)主催の「台湾セレクト」。「チャー(CHIA)」「ペシズ(PCES)」「イェンティティ(YENTITY)」の3ブランドが、台湾の豊かな文化的多様性をデザインと素材で表現し、それぞれの個性を鮮やかに打ち出した。  

    光沢感のあるテキスタイルをふんだんにまとったドレス、レイヤードやオーバーサイズのアウターが生み出す圧倒的なボリューム感など、実際に目の前で繰り広げられるショーの迫力にメンバーたちは圧倒された。

    【参加メンバー・メンターの感想】

    「これまでにも何度か足を運ばせていただいている『楽天ファッション ウィーク東京』ですが、今回は特に台湾ブランドが持つクリエイションの凄さに魅了されました。 特に心引かれたのは、今回初めて出会ったブランド『チャー』。一枚の大きな生地を折り紙のように畳んだり、同じような色の生地を重ねたりするスタイルは、どこかアジアっぽさを感じさせる不思議な魅力がありました。フリフリした飾りとはまた違う、布そのものが持つ『クシュクシュとした繊細なシワ』の質感が、たまらなくかわいかったです。  

    今はSNSで何でも見られる時代ですが、こうしたコレクションには『意図しない偶然の出会い』があります。初めて知るブランドの、プロが時間をかけて作り上げた最高の表現を、その場の空気と共に体験できる。これほど光栄で嬉しいことはありません」。(鈴木咲空/FFi大学生メンター)  
     
    「人生で初めて、ファッションショーを見学させていただきました。テーマに沿った音楽や照明などの演出が、ファッションのメッセージ性をさらに際立たせ、とても引き込まれる魅力的なランウエイでした。

    特に印象的だったのは、言葉を一切使わずに行われているという点。デザインの意図を言葉では説明せず、見学者の感性に委ねた上で視覚や聴覚に特化したパフォーマンスは、ファッションショーにおける醍醐味のひとつなのではないでしょうか。実際に、それぞれのテーマから感じられるストーリー性を想像することで、その世界に没入できるような臨場感や高揚感があり、心が躍るような感覚になりました。
     
    このように言語や国境の枠を超え、ファッションの魅力を最大限に引き出しながら伝えるという点において、ファッションショーはとても価値のある素晴らしいコミュニケーション手段のひとつとも捉えられるのではないかと思いました」。(住風花/FFiシニアメンター)  
     

    3月16日
    「ユェチ・チ(YUEQI QI)」 

    写真:谷遼太郎

    写真:谷遼太郎

    写真:谷遼太郎

     
    セントラル・セント・マーチン美術学校ニットデザイン科を卒業後、「シャネル(CHANEL)」の刺繍アトリエで経験を積んだデザイナー、ユェチ・チ(Yueqi Qi)。ニットデザインやビーズ使いに宿るクラフツマンシップに定評があり、今回のショーでもその真骨頂が余すところなく発揮されていた。  

    会場となった自由学園明日館は、建築家の巨匠フランク・ロイド・ライト(Frank Lloyd Wright)が設計した重要文化財。ショーごとに異なる会場の空気感も、参加メンバーにとって楽しみのひとつだ。当時革新的な教育理念のもとに建てられたこの空間に、「ユェチ・チ」の懐かしさと新しさが共存するルックがマッチしていた。  

    【参加メンバー・メンターの感想】
     
    「ショーの開催場所に着いたと同時に、ショーのすごさを感じるほど、来場者の方々の個性的なファッションに釘付けに。1人1人違う系統の服を見事に自分のモノにして着こなし、到着したときからショーが始まっているようで鳥肌がたちました。そんな魅力にあふれている人たちを魅了する『ユェチ・チ』のショーはとても凄いのだろうという確信を持ち、期待にあふれていました。

    今回のショー会場は教会の中で行われ、どこか神秘的な雰囲気。けれど、ショーが始まりモデル達が出てきたと同時に、シンプルな教会が『ユェチ・チ』の色とりどりな唯一無二の服とマッチし、このショーのためだけの場のように錯覚するほどの世界に変わりました。

    フラワーのデザインが入った黄色の服には神秘的なメイクを合わ、幼さを感じさせないどこか大人びた幻想のようなムードを演出していたのも印象的でした。またモデルのまつ毛にビーズを垂らしたりと、今まで私が見たショーの中で、服以外の魅せ方も一番個性が溢れていたと感じました。終わった後も『もう一度見たい』と思うようなショーでした」。(寺門璃子/高校3年)  
     

    3月17日
    「グローバル ファッション コレクティブ(GLOBAL FASHION COLLECTIVE)」

    「楽天ファッション ウィーク東京」への参加は今回で8回目となる、カナダ・バンクーバー発の国際的なランウエイプラットフォーム「グローバル ファッション コレクティブ」。世界5大ファッション・ウイークのひとつで、新鋭デザイナーによる合同ランウエイショーを開催し、多様な才能を世界へ発信し続ける。

    今回発表されたのは、日本人デザイナーの「アオミヤサカ(AO MIYASAKA)」「マリカスズキ(MARIKA SUZUKI)」の2ブランドと、カナダ人デザイナーの「エドゥアルド・ラモス(WDUARDO RAMOS)」。いずれも独創性にあふれ、ひとつのショーの中にこれほどの多様性が凝縮されていることに、メンバーたちは大きな刺激を受けた。
     

    【参加メンバー・メンターの感想】

    「私がこれまで参加したことのあるランウエイショーと比較し、今回のショーは、来場者に占める外国人の割合が非常に高いと感じました。  3ブランド全く異なるテイストでありながら、どれも強い個性を持っていてとてもユニークでした。また、デザイナー3人のうち2人がインタビューの中で『自分はデザイナーではなくアーティストだ』と語っていたことも印象的で、ファッションを単なる衣服としてではなく、表現として捉えている姿勢が強く感じられました。  

    中でも印象に残っているのは、『マリカスズキ』のコレクション。ショー中はドリーミーでかわいらしい世界観だと感じましたが、後のインタビューで『カビにインスパイアされている』と語っていて、そのギャップに驚きました。見た目の印象だけでは捉えきれず、背景やコンセプトを知ることで、より深く面白さが広がるのがファッションの魅力だと感じました」。(Nijiho/FFi大学生メンター)  
     
    「ファッションデザインをただ毎日着る服のデザインだけでなく、『アート』として捉えている意思が伝わってくるようなショーでした。デザイナーが1つ1つの作品に込めた深いストーリーだったり、こだわり抜いた日本製のテキスタイルがたくさん見られて、とても贅沢な時間でした」。(nao/高校3年)
     

    3月18日
    「中国国際ファッションウィーク」推薦ショー
    (China Fashion Week Recommendation Show)

    写真:谷遼太郎

    写真:谷遼太郎

    写真:谷遼太郎

    写真:谷遼太郎

    中国国際ファッションウィーク組織委員会の推薦により、新鋭の中国人デザイナーを送り出すプログラム『中国国際ファッションウィーク』推薦ショー。東京という国際的な舞台を通じて中国発ブランドのデザイン力を発信し、日中間のファッション交流を促進することを目的とする。

    今回ルックを発表したのは、スー・シン(蘇新)が手掛けるブラン「ホワイトヌック(WHITENOOK)」。落ち着いた音楽が流れる会場に、終始シックなカラートーンで構成されたコレクションは、華やかなショーが続くなかでその静けさがかえって際立った。メンバーの心にじんわりと残る、印象深いステージとなった。  
     

    【参加メンバー・メンターの感想】

    「前回のショーとはまた異なる、1つ1つのお洋服が「着たい!」と思えるようなものばかりで楽しかったです。日本のファッション・ウイークに他国のデザイナーを呼んでショーをするということを知り、日本のファッション業界の寛容さやフレキシビリティーに驚きました」。(nao/高校3年)  
     
    「とても落ち着いた洗練された印象を受けたショーでした。特に印象的だったのは、17日と同じ会場であったにもかかわらず、雰囲気や構成が全く異なっていた点です。会場の照明や音楽、演出といったセッティングが空間全体の印象を大きく左右するということに改めて気付かされました。  

    また、大学生の私ショーの一般的な客層を詳しく知っているわけではありませんが、来場者の服装が非常に多様で、思わず1人1人にインタビューをしてみたくなるほどでした。全員が自分のスタイルを持っており、とてもおしゃれだったのが印象的です。ショーそのものを見るだけでなく、そこに集まる人々からも刺激を受けられることが、ショーを見に行く醍醐味のひとつだと感じました」。(Nijiho/FFi大学生メンター)  
      

    3月19日
    「セイブソン(SEIVSON)」  

     
    台湾出身のデザイナー、ヅゥチン シン(Tzu Chin Shen)が手掛ける「セイブソン」。「楽天ファッション ウィーク東京」やニューヨーク・ファッション・ウイークへの参加、伊勢丹 新宿店への初出店など、台湾人女性デザイナーブランドとして数々の”初”を切り開いてきた実力派だ。  
     
    モノトーンに赤を効かせたルック、ファスナー使いで自由度の高いアイテム、女性の身体を美しく見せるシルエット。パワフルで斬新なコーディネートが次々と繰り出され、演出の世界観も含め、参加メンバーが終始目を輝かせるショーとなった。  
     
    【参加メンバー・メンターの感想】 
     
    「『強い女性のデザイナーが作った、強い女性のためのデザイン』という感じがして、ワクワクするようなコレクションでした。中国や台湾のデザイナーは、トレンドをユニークかつスタイリッシュな方法で自分のスタイルに取り込んでいるように感じます。今回もミニ丈のスカートだったりファーだったり、たくさんのトレンドアイテムをコレクションに取り入れていました。台湾の街を連想させるような音楽やセッティングもとても面白かったです」。(nao/高校3年)  
     
    執筆:フューチャー・ファッション・インスティテュート
     

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