同様に、メゾンBDN(MAISON BDN)のクリエイティブ・ディレクターであるユスラ・エルサディグは、スーダンとエジプトのルーツから着想を得て、業界特有の狭い美の価値観に挑んでいる。医学の道からデザイナーへと転身した彼女は、服を変革者のためのキャンバスと捉える。「私は、慎ましさと大胆さ、伝統と現代性のどちらか一方に収まることを良しとしない女性のためにデザインしています。女性は、文化的にも、スタイルの面でも、個人のあり方としても、自分を分断してまでどこかに所属する必要は決してない──私はそうした考えを掲げています」

    両デザイナーに共通するのは、ファッションを“アイデンティティの言語”として捉えている点だ。最も心に響くコレクションは、トレンドレポートからではなく、人間の切実で個人的な必要性から生まれることを示している。

    手仕事とデジタルツール

    AIがデザインプロセスから人間らしさを削ぎ落としていくなか、クリエイターたちは明確な境界を設けている。もはやテクノロジーを使うかどうかという議論ではなく、発想をどう守るか、そのためにどこで線を引くかが問われているのだ。

    サイム(SAIM)のファウンダー兼クリエイティブ・ディレクターであるサイム・ガーニは、コルカタの職人的な環境からムンバイのスピード感ある都市へと移った経験を背景に、独自の視点を持つ。インドの一流クチュールメゾンで技術を磨いた彼にとって、スケッチという行為は神聖な儀式だ。「テクノロジーはビジョンやクリエイティビティの妨げになり得ると思います。不完全な線やバランスの狂い、何度も消して描き直すこと、それこそが美しいものを生み出すプロセスではないでしょうか。なぜ創造の最初の段階から手仕事を排除するのでしょう。AIは、頭の中で描いたものをさらに変えてしまいます。その過程では、私たちの思考が介在する余地は残されていないのです」

    Share.

    Comments are closed.