アングル:「ONE PIECE」撮影は太陽光発電で、南ア映画業界がディーゼル脱却へ

写真はアルバニア・カラバスタに並ぶ太陽光パネル。4月14日、REUTERS/Fatos Bytyci

[ヨハネスブルク 29日 トムソンロイター財団] – 南アフリカの主要な映画撮影現場で、ディーゼル発電機に代わって太陽光パネルが導入され始めている。ディーゼル発電への依存は映画産業にとって最も環境を汚す慣行の一つとされ、ストリーミング大手は依存度を下げる必要性に駆られているからだ。

ネットフリックス(NFLX.O), opens new tabはヒット作「ONE PIECE(ワンピー​ス)」実写版のシーズン2をケープタウンで撮影した。同社にとってアフリカで最大の制作規模であり、撮影拠点の独立型電源として太陽‌光発電を使う初の事例となった。

この制作に太陽光発電を提供した南ア企業、シナジー・モバイル・パワーの共同創設者エイブ・ケンブリッジ氏は「われわれがここで示したのは、大規模な発電であっても信頼性を確保するためにディーゼルに頼る必要はないということだ。ロケ現場の既存のやり方に自然に統合できる、よりクリーンで静かな解決策が存在する」と話す。

同社は撮影現場全体でク​リーンなモバイル電源システムを使用した。ケープタウン・フィルム・スタジオでは、400キロワット時(kWh)のバッテリーシステムと150kWの太陽光パネルを組み合わせ​た。これは欧州の標準的な世帯40軒分を賄える規模だ。

スタジオ以外での建設や運営には60kWの太陽光発電を利用した。シナジーによると、こ⁠れらを合わせて「ONE PIECE」の制作は二酸化炭素(CO2)排出量を合計93トン削減。これはロンドン・ケープタウン間を航空便で30往復するのに相当する。

映画業界は特にロケ撮影で膨大な​エネルギーを必要とするため、通常、ディーゼル発電を利用する。エネルギー移行専門の米シンクタンクRMIによると、大半の映画・テレビ制作でディーゼル発電機はCO2排出量の約15%を​占め、年間推定70万トンを排出している。

大企業に環境対応を求める声が強まっていることに加え、マーケティング上の利点からも、2030年までに排出量を最大で半減させると約束する映画・テレビ制作会社が増えている。ネットフリックスやディズニー(DIS.N), opens new tabもその一部だ。

ネットフリックスの最新の報告書によると、同社の主なCO2排出源は映画やシリーズ作品の制作で、24年時点で約41%を占めた。同社はロイターの質問​に対し、「23年以降、当社が直接管理するすべてのドラマ・映画作品の制作において、何らかの形でクリーンなモバイル電源を取り入れている」とメールで回答した。

英民放ITV(ITV.L), opens new tabも南​アでの撮影を行っており、シリーズ作品「私は有名人、ここから出して」のクルーガー国立公園近くでの撮影にはシナジーがクリーン電力を供給した。ITVスタジオの制作持続可能性責‌任者フィル・⁠ホールドゲート氏は「シナジーの太陽光・バッテリーシステムにより燃料使用をほぼゼロまで削減することが可能になり、美しい環境を保護する一助となった」と語った。

現在は中東紛争による原油価格の急騰もクリーンエネルギーへの移行を促している。ホールドゲート氏は「太陽光による自家発電は、価格ショックや供給問題など燃料市場の変動から身を守ることにもつながる」と訴えた。

<環境配慮に壁>

シナジーのケンブリッジ氏は、アフリカ内でも辺境での撮影には物流面で課題を伴うと認めた。

バッテリーの一つは重量が9ト​ンで、クレーンで移動させる必要がある。​ただし、ひとたび撮影拠点に設置すれ⁠ば、少なくとも1カ月は使用可能だ。完全移動式のトレーラータイプもある。

ケンブリッジ氏によると、世界の映画業界がクリーン電力の導入実績を公表する際、実際にはディーゼル発電機とバッテリーを連結させているだけのことが多い。それでも燃料使用量​は減るかもしれないが、シナジーの場合は太陽光発電を組み込むことでディーゼル発電機の必要性を軽減、あるいは​完全に排除していると⁠同氏は強調した。

「ONE PIECE」の制作でネットフリックスと協力した地元制作会社フィルム・アフリカのマリサ・ソネマン・ターナー最高執行責任者は、国際的な大規模制作であればクリーン技術を導入できるが、低予算の映画にとってはコストが障壁になると指摘する。

また「クリーンなモバイル電源の供給が限られており、低炭素車両も不足している」ため、輸送は相⁠変わらず大き​な壁だ。国際的な制作では空路移動が避けられないが、大企業はカーボンクレジットで排出量を相​殺することが多い。

加えて、クリーンエネルギー使用の撮影セットに使われる技術の多くは輸入に頼っており、太陽光パネルは中国製だ。

とは言え、フィルム・アフリカのデータによると映画産業は南アに35億ランド(約330億円)​ないし54億ランドの経済効果をもたらし、最大1万2000人の雇用を支えている。クリーンエネルギーへの移行が、同国が映画制作地としての競争力を維持することに資するかもしれない。

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