台湾を拠点に出版活動を行っている、シャウバ・チャンが主宰する「dmp editions」、ソン・ニによる「nos:books」は、各地のアートブックフェアへの参加を継続している出版社のひとつだ。
旧知の友人同士でもある二人に、アートブックにまつわるQ&Aと、おすすめのアートブック3冊を紹介してもらった。彼女らは、今週末、5月1日から3日間わたり、東京の芝パークホテルで開催される「TOKIO ART BOOK FAIR 2026 by TOKYO ART BOOK FAIR」に参加する。気になった方はぜひ訪れてみてほしい。

シャウバ・チャン(dmp editions主宰)

ソン・ニ(nos:books主宰)
シャウバとソンへのQ&A
──出版活動を始めたきっかけは?
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シャウバ・チャン(SC):最初は紙の手触りや重さへの愛着からでした。そして、異なる作家たちの素材や作品のあいだに対話を生み出したいと思ったのがきっかけです。
ソン・ニ(SN):私自身がアーティストとして、さまざまな出版社と仕事をするなかで、編集や印刷の仕上がりが、観客の受け取り方に大きく影響することを実感してきました。同時に、作家自身もその仕上がりに合わせて制作方法を調整することがあります。例えば漫画家が、印刷に合わせてインクやスクリーントーンを調整するように。自分たちの作品を自分たちの方法で伝えたいと考えたとき、自然と出版を始めました。編集、デザイン、印刷の行程すべてが、私たちにとって表現の手段になっています。
──アートブックを購入する際に重視することは?
SC:自分と共通する関心があるかどうかです。テーマの選び方、本の作り方、あるいは単純に読んでいて心が少し楽しくなるような内容かどうかを見ています。
SN:その本が新しいコミュニケーションのあり方を提示しているかどうかです。それは編集やデザイン、印刷の中に現れるものかもしれません。それを実践しながら、表現として開かれた本に出合うと驚きを感じます。そして、その表現が誠実であることが重要だと思っています。
──最近見て印象に残っている展覧会は?
SC:日本のアーティスト宮島達男の個展「Human Life as Collective Experience」(亜州大学付属現代美術館)です。安藤忠雄が設計した建築空間の中で、音や光、影が組み合わさり、来場者に強い体験を与える展示でした。
SN:昨年12月、「TOKYO ART BOOK FAIR 2025」のために東京を訪れていましたが、スケジュールを見落としてしまい、友人であるリー・キット(Lee Kit)の展覧会「Some broken days and broken fingers」(ShugoArtsで開催)を見逃してしまいました。とても後悔していて、その出来事が強く印象に残っています。
二人がおすすめするアートブック3冊
最近購入した本2冊と、「TOKIO ART BOOK FAIR 2026」で発表予定の新刊1冊を紹介してもらった。
【シャウバ・チャン 選】
最近購入したアートブック2冊
1. 游博任 Yu Po Jen『yopo’s band sketch 2025』(2025年、自費出版)


「台湾のインディーズバンドをスケッチで記録した個人的なノートのような作品。シンプルな線で描かれた演奏者の姿から、その場の空気や記憶が立ち上がってきます」
2. 『Angelo Mangiarotti / Giorgio Casali: Framing the Project』(2025年、Corraini Edizioni刊)


「マンジャロッティの作品理解を深めるための優れた入門書。アーカイブ写真、インタビュー、若い世代のクリエイターによる視点が組み合わされ、豊かな物語が構成されています。
TOKIO ART BOOK FAIR 2026 に持っていく本
3. Chen Etang, Huang Hai-Hsin『A Book of Cats and Dogs』(2026年、dmp editions刊)

ともに台湾出身のアーティスト、Chen Etang(陳藝堂、1983年生まれ)とHai-Hsin Huang(黃海欣、1984年生まれ)による作品集。
「写真と絵画による作品集。日常の小さな喜びを集めた一冊であり、私たちの生活のエネルギーを補充してくれるような存在。愛すべき動物たちへのラブレターでもあります」

SHAUBA CHANG
シャウバ・チャン:台湾の桃園出身、現在台北を拠点に活動している。友人たちと「waterfall」プロジェクト、6号にわたる雑誌『NOT TODAY』を始めたことをきっかけに出版活動をスタート。2016年にインディペンデントなアート出版プロジェクト「dmp editions」を設立し、現代アート出版のプラットフォームとして展開している。dmp editionsを通して、アーティストや作品、そして出版物そのものの構成や提示方法に焦点を当て、実践的かつ実験的なアプローチで出版の制作と流通を探求。彼女にとって本は、現代の表現を拡張するための重要な場であり続けている。
【ソン・ニ 選】
最近購入したアートブック2冊
1. Jimmie Durham『Stone Heart』(2001年、CCA Books刊)


「この本は、アーティストのテキスト、ドローイング、写真、レシピ、エフェメラなどで構成され、歴史、植物学、鉱物学、神話、個人的記憶などさまざまなテーマを扱っています。本の編集も非常に美しく、読者は作家の思考の流れに自然と引き込まれていきます。アート機関による出版とは思えないほど自由で、一般的なカタログのような定型的な印象とは異なります。CCA Booksの出版物はどれもユニークで丁寧に作られていて、現在の視点から見ても、その編集や見せ方は非常に現代的です」
2. 邱亞才 Chiu Ya-tsai『吃書的人(The Man Who Eats Books)』(1996年、深坑工作室刊[自費出版])


「いわゆるアートブックではありませんが、優れたアーティストによる一冊です。邱亞才(1949〜2013)は主に人物画で知られ、その作品は人の内面を見透かすような深さを持っています。本書はエッセイ集で、人や人生についての思索が綴られています。彼は自らをアーティストというよりも作家と考えており、その観察と洞察は非常に緻密です。現代の忙しい生活のなかでは、こうした思考の時間は失われつつあるように感じます」
TOKIO ART BOOK FAIR 2026 に持っていく本
3. Son Ni『Snow Onto the Sea(The River Called Grandma)』(2025、, nos:books刊)


「私、ソン・ニ(Son Ni)によるドローイングシリーズで、約10年をかけて再編集された作品です。二人の祖母の死をめぐる思索が込められています。個人的な内容でありながら、その感情は普遍的で、まるで自然現象のようでもあります。雪が海に降り積もり、やがて溶けて消えていくように、記憶もまた流れ、めぐっていきます。本全体は活版の空押しで仕上げられ、紙と一体化するような線の痕跡を残しています」

SON NI
ソン・ニ:台北出身のアーティスト、Son Niは主にドローイングを中心に制作を行う。2008年に出版レーベルnos:booksを設立し、その後香港のアーティストChihoiが参加。nos:booksは、ドローイング、絵画、写真、コミックなど、アーティストのアイデアを独自のブックフォーマットとして実現し、限定版の出版物として展開している。2020年後半からは、本のためのスペース「nos:bookspace」の運営も行っている。
TOKIO ART BOOK FAIR 2026 by TOKYO ART BOOK FAIR


会期:5月1日(金)13:00〜19:00/5月2日(土)12:00〜19:00/5月3日(日)12:00〜19:00 ※最終入場は閉場の30分前まで
会場:芝パークホテル(東京都港区芝公園1-5-10)2F ホワイエ-Book&Culture-
入場料:一般 ¥1,500/25歳以下 ¥1,000/19歳以下 無料 ※チケット予約制
Instagram: @tokioartbookfair
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