民放連編集広報部は2026年3月10日、「民放online」で初となるイベント「つくる人をつくる ローカル局プロデューサーの仕事論」を会員社限定、対面とオンラインの併用で開催した。厳しさを増すローカル局の経営環境下でプロデューサーが直面する課題や挑戦、そして今後の持続可能な番組・コンテンツ制作のあり方について議論した。会員社82社から148人の申し込みがあった。

    登壇者はいずれもベテランの制作者やプロデューサーである後藤一也・北海道文化放送メディア局映像プロデュース室部長、荻野弘樹・山梨放送メディアプロデュース局長、宮田輝美・関西テレビ放送報道情報局報道センター専門部長の3人。コーディネーターは村上圭子・メディア研究者/東京財団上席フェローが務めた。

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    <コーディネーターを務めた村上圭子氏>

    後藤氏は若手制作者の育成事例として「北海道ドキュメンタリーワークショップ」を報告した。ローカル局は「習作の場がない」状況だとして外部と連携した学びの場が必要との考えのもと、ワークショップを立ち上げたと経緯を説明した。北海道内6局の若手制作者が集まり制作技術を共有する同ワークショップでは、著名な制作者による講義に加えて若手自身も語る”対話型”を採用。「正解を押しつけず、深く考える力を守る環境が必要」と述べた。村上氏はこれに対し、「日々の業務で多忙なローカル局で、思考する時間をどう確保するかが鍵」と応じ、育てる環境を効率的に整備する重要性を訴えた。このほか後藤氏は、自ら監督・プロデュースしたウェブドキュメンタリー『灯りのようなものが、たしかに』を紹介。外部団体の出資を活用し、収益化よりも上映会や対話の場づくりを重視した取り組みで、作品を通じて社会課題に向き合う”社会に開いたメディア”の形を模索したものだという。

    若手の育成に関して、荻野氏は”現場の越境”を掲げた。「制作も営業も、背中を見て覚える時代ではない。会社全体の事業構造を理解してこそ、制作の自由度は増す」とし、若手プロデューサーに営業セールスへの同行を徹底しているという。また、地域に根ざしたドラマ制作で自治体の協賛を得た例を挙げ、東京支社の営業マンである後輩から「何とか夢を叶えたい」と相談を受けてドラマのプロデュースに至ったと明かした。村上氏は「ローカルだからこそ多様な挑戦が可能。作品を作りたい、と若手が言える環境も重要」と応じた。荻野氏は、ラジオコンテンツの可能性についても言及し、『リスタート~ギャンブル依存症回復への道』(2024年民放連賞ラジオ準グランプリ)などの事例を紹介し、ラジオが持つ地域密着の特性を活かし、社会的課題を取り上げる重要性を強調した。

    ドキュメンタリー番組『ザ・ドキュメント』(外部サイトに遷移します)プロデューサーを務める宮田氏は、制作現場での課題と実践を共有した。人員減少や放送枠削減といった厳しい現状を示しながらも、「若手や報道記者以外からも制作者を募り、報道の殻を破りたい」と語る。また、地上波放送で埋もれがちな番組を配信等で展開したことが番組の認知や受賞につながったとして、全国公開した映画『揺さぶられる正義』を挙げ、「コンテンツの出口を広げることで価値が生まれ、社内での仲間づくりにもなる」と述べた。村上氏は、「報道が抱える矛盾すら作品で問い直す姿勢が、ローカル局のドキュメンタリーの強み」と評しながら、制作と組織、公共性の三つを同時に動かす難しさと可能性を浮かび上がらせた。

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    <左から関西テレビ放送の宮田輝美氏、山梨放送の荻野弘樹氏、北海道文化放送の後藤一也氏>

    質疑では、若手が日々のニュースに追われ、番組の企画やプロデュースの育成が難しいとの問題提起に対し、後藤氏は局の垣根を越えて「言葉で教えるだけでなく、背中を見せる場を作れたら」と提案。荻野氏は「面白い人物に出会ったら継続取材させる」と、日々の積み重ねが番組化につながるとし、宮田氏は「相談に対し無関心であることが若手の芽をつぶす」と述べ、企画の種となる”個人の興味”を起点に深掘りする重要性を示した。

    同イベントは、講演会・パネルディスカッションおよびイベント参加者との意見交換を通じ、「民放の明日を切り拓く共通の広場」としての「民放online」の役割を果たすことを目的に開催したもの。

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