もしも夢が叶わなかったら、今頃生きていなかったかもしれない

――主演映画『黄金泥棒』は田中さんにとって映画では10数年ぶりのコメディになります。金(きん)の盗難で主婦が逮捕された実際の事件から着想を得た作品ですが、脚本を読んで、どんなところに魅力を感じましたか。

田中麗奈(以下、田中) 私が演じた美香子というキャラクターが身近な存在として描かれていて、しっかりエンタメになっているんですけど、実際にあった事件のリアリティと、主婦が秀吉の金茶碗を盗みに行くというぶっ飛んだ展開が面白いなと思いました。シュールな笑いで、分かりやすく描かれていないマニアックさもあって、自分で面白いところを見つけていく作品だと思いました。

――美香子というキャラクターをどのように捉えましたか。

田中 天然なところがすごくあって、リズムというか、彼女のマインドが独特なんです。序盤は日常がかすんで見えていて、何を見ても感動しないし、自分の中から湧き出るものもないし、孤独感もある。いつの間にか普通でいることに自分を押し込んでしまって、自分自身を見失った状態から、人生を取り戻していくお話だと思っているので、だんだん美香子が生気を取り戻して、目に力が宿っていく変化を楽しんでいただけたらうれしいです。

――美香子に、すんなり寄り添うことはできましたか。

田中 私も5歳の頃から女優になりたくて、小学校も中学校もその思いで生きてきたんですけど、ある時、なれないかもしれないという不安に苛まれていて……。そんな時に映画『がんばっていきまっしょい』(98)のオーディションを受けたのですが、あの作品がなかったらどうなっていたんだろうと今でも思います。この職業に就けたから充実した日々を送っていますが、もしも夢が叶わなかったら、今頃生きていなかったかもしれないとも思うので、その部分は美香子と重なるところがありました。もう一つは、子どもが生まれたばかりで現場に立てない時期に、子育ての日々は幸せなんだけど、このまま仕事が来なくなったらどうしようという恐怖や閉塞感を感じていて。ちょうどコロナ禍もあって人にも会えない時期だったので、余計にそう感じていたのかもしれません。そういう気持ちを前半の美香子に重ねて演じていました。

――盗みをすることで生き生きとする美香子の姿がユニークでした。

田中 自分にしかできないことをやると目標を決めた時の美香子は本当に強いんですよね。実はすごいポテンシャルを持っていたんだと、見ている側も気づいていく。しっかりと幼少期のエピソードも描かれているので、美香子ならそういうことになるかもしれないという説得力は、ちゃんと脚本にもありました。

リアリティから外れないコメディという新しいジャンル

Leave A Reply