©2022 Riceboy Sleeps Production Inc.

 幼い息子を連れて韓国からカナダへ渡った未婚女性。異国で生きる不安と孤独、望郷の念を描き、16ミリフィルムならではの情感漂う画面で捉えた秀作だ。韓国からカナダに8歳で移住したアンソニー・シム監督が自身の経験を織り込みながら、移民としてのアイデンティティーの揺らぎや親子の情を繊細に表現している。

 孤児院でたくましく育ったソヨン(チェ・スンユン)。恋に落ちて、共に暮らした相手は、生まれたばかりの子と彼女を残し、自死してしまう。

 婚外子となった息子の将来を考え、ソヨンはカナダへ移住。工場で働きながら、懸命に子育てをする=写真。

 母に愛されて育った息子ドンヒョン(ドヒョン・ノエル・ファン)は、小学校へ入学した途端、人種差別に直面する。弁当箱に詰めたのり巻きを「臭い」「ライスボーイ」とからかわれたり、発音しにくいとして教師から英語名を提案されたりする。

 自分の名前は自己認識の大本だ。それを手放すように求める暴力性に教師は気付かない。求められた方も、受け入れるしかないのが悲しい。

 1999年、15歳となったドンヒョン(イーサン・ファン)は髪を金色に染め、「デービッド」と名乗っている。食卓で飛び交うのは、ほぼ英語だ。

 親子の暮らしはすっかり落ち着き、ソヨンにプロポーズする韓国系カナダ人のサイモンも現れる。

 だが、思いがけない状況が彼らを襲う。それはソヨンが、息子を韓国へ連れて行き、亡くなった父親の家族に会わせようと決意する契機になる。

 ソヨンがサイモンに語る「高麗葬」の話が深い。日本の“姥捨山”とほとんど同じだ。初めて訪れた故国で母を背負い、山上にある父の墓参りに赴くドンヒョン。その姿に高麗葬の話が重なる。親が子のために、子が親のためにできる事とは─。ソヨン親子が交わす情が胸に迫る。

監督/アンソニー・シム

製作/カナダ、1時間57分

3日からムービルなどで上映

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