A24にとって初のシリーズものとなった「X エックス」三部作の成功により、いまやホラー界を代表する映画監督となったタイ・ウエストの初期作『ハウス・オブ・ザ・デビル』が3月27日より公開された。本作は高い評価を受けた出世作で、「X エックス」シリーズへとつながるスタイルを確立した原点とも言える1作だ。
苦い思いを経て再起の1本となった『ハウス・オブ・ザ・デビル』
【写真を見る】いまやホラー界を背負って立つ存在となったタイ・ウエストの“らしさ”とは?(『MaXXXine マキシーン』)[c] A24 / Courtesy Everett Collection
“アラン・スミシー名義(トラブルなどにより、監督作品として責任を負いたくない場合に使用される偽名)”を要求したことからもわかるように、『キャビン・フィーバー2』(09)では方向性の違いでプロデューサーたちと対立したウエスト監督。この苦い経験を経て、ハリウッドから距離を置き、自らがやりたいことを詰め込んだのが、2009年に手掛けた『ハウス・オブ・ザ・デビル』だ。
金欠大学生のサマンサはベビーシッターのバイトを見つけるが…(『ハウス・オブ・ザ・デビル』)[c] 2008 MPI MEDIA GROUP ALL RIGHTS RESERVED.
本作の舞台は、多くの人が悪魔崇拝者の存在を信じていたサタニックパニックに揺れる80年代のアメリカ。コネチカット州の田舎町、奔放なルームメイトとの寮生活に限界を感じた大学生のサマンサ(ジョスリン・ドナヒュー)は、家を借りる資金を稼ぐべく、構内に張り紙が出されていたベビーシッターのバイトに応募する。
トム・ヌーナンが不気味な存在感を放つ(『ハウス・オブ・ザ・デビル』)[c] 2008 MPI MEDIA GROUP ALL RIGHTS RESERVED.
皆既月食の夜、人里離れた立派な豪邸に足を運ぶと、そこで依頼主のウルマン(トム・ヌーナン)から、実は子守ではなく年老いた母親の面倒を見てほしいと明かされる。一晩で400ドルを提示されたサマンサは、怪しさを感じつつ依頼を引き受けるが、それは悪魔崇拝カルトが仕掛けた罠で…。
繰り返し扱ってきた“サタニックパニック”というテーマ
『MaXXXine マキシーン』は、サタニックパニック真っ只中の80年代ハリウッドが舞台[c] A24 / Courtesy Everett Collection
多くのアメリカ国民が“残虐な悪魔崇拝者が子どもたちを誘拐し虐待している”などと信じ、実在しない脅威に対して司法やFBIまでが動く大騒動となった“サタニックパニック”。『MaXXXine マキシーン』(24)でもこの集団ヒステリーを扱い、“ポルノやホラー映画が悪魔崇拝の原因となる”と主張する人々によってハリウッドが糾弾される当時の様子を再現した。
サタニックパニックへと至る背景とも言えるカルト教団の集団自殺事件をベースにした『サクラメント 死の楽園』[c]Magnolia Pictures/courtesy Everett Collection
また『サクラメント 死の楽園』(13)も、ジム・ジョーンズ率いる人民寺院が1978年に行った集団自殺事件がベースとなっており、カルト宗教による脅威という意味でサタニックパニックとも通じる題材を扱うなど、繰り返し映画内で示唆してきた。
