
作品データ
原題
ARCO
制作年・国
2025年/フランス
上映時間
1時間28分
監督
監督・脚本:ウーゴ・ビアンヴニュ 脚本:フェリックス・ド・ジブリ 製作:フェリックス・ド・ジブリ、ソフィー・マス、ナタリー・ポートマン アニメーション監督:アダム・シラード 編集:ナタン・ジャカード 音楽:アルノー・トゥロン
出演
<日本語吹替キャスト>:黒川想矢(アルコ) 堀越麗禾(イリス) 梶裕貴(ミッキ) 山里亮太(ドゥギー) 前野智昭(ストゥイー) 落合福嗣(フランキー) 伊駒ゆりえ(クリフォード) 日向未南(アルコの母)
公開日、上映劇場
2024年4月24日(金)~TOHOシネマズ 日比谷、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズ(なんば、二条、西宮OS)、MOVI京都、アップリンク京都、シネ・リーブル神戸、MOVIXあまがさき ほか全国公開
〜新しさとノスタルジーを感じさせる極彩色のフランス発SFアニメ〜
長期休みにスポット的にテレビ放送する海外のアニメ(カートゥーン)番組が好きだった。人物や動物の造形、描写に未知の面白さがある。人の目と手を通すことで実写にはない感覚的な要素が加味されている気がする。本作もまさにそんな新鮮な驚きをくれる1本だ。
ナタリー・ポートマンが製作総指揮、NEONが配給権を獲得したフランス発のSFアニメーション。2025年世界各国の映画祭で絶賛された『ARCO/アルコ』がいよいよ公開される。アカデミー賞長編アニメーション部門にもノミネートされた本作。絵柄や人物描写、色使いもふだん見慣れているアニメーション映画とは違った趣きを感じる。まるでアールヌーボーの世界。彩度が増し、より色鮮やかな印象だ。まず、その美しさに眼を奪われる。
2075年、気候変動が進んだ世界では完全に人類とロボットとの共棲社会が築かれている。子守りロボットはもちろんのこと、学校、警察、工事現場、街のあらゆるところにロボットが配置され、必要な時だけ稼働させるようプログラムされている。多忙な大人は家庭内には不在で必要なときだけホログラムとなって現れる。そんな日常のなかにどこからか、虹色の光と共に少年が不時着する。そして、謎の三人組がその少年の行方を追っているのだった。偶然、アルコ少年を保護した少女イリスはアルコを匿い、やがてアルコの世界に自分も連れて行ってほしいと願うようになる。
アニメーションの世界も背景や人物造形のリアルさによって実写との垣根がわからなくなりつつある。3Dアニメともなるとなおさらだ。しかし本作は3Dモデルを活用した上で、2Dの世界でこそ表現できる豊かさを見せてくれる。手描きの質感を保ちつつ効率化を図れるソフト「TVPaint」の採用も製作に大きく貢献した。
ユーゴ・ビヤンヴ二ュ監督は『E.T.』や『となりのトトロ』の系譜となる作品を目指し、あえて2Dという表現方法を選んだ。プロデューサーのフェリックス・ド・ジブリーと2013年に立ち上げた「Remembers」は開発だけでなく、”実際にものを作る場”として機能するスタジオを目指したという。工程を細分化せず、一人のアニメーターが担当カットに長く関わる体制を採った。さらに本作は外注をいっさい行わず、パリの3つのスタジオで映像・音響・音楽の全工程をこなした。徒歩圏内で行き来できる距離という徹底ぶりだ。
大きな起伏はないが、成り行きを見守っているだけでワクワクする。たとえば実写であれば延々何かの運動を見せることには限界がありそうだが、アニメーションならアングルを変えることで飽きさせない。俯瞰ショットには絵画的なダイナミズムがあり、リアリティを追求した表現とは別次元のファンタジックな世界観を味わうことができる。SFドラマだからこそ常識からの逸脱が可能になって、違和感なく物語を味わうことができるのだ。
ちなみにアルコイリスはスペイン語で虹の意味。スクリーンからアルファ波が出ているのではないかというぐらいうっとりしてしまった。吹き替え版で子どもたちにも広く楽しんでもらいたいが、言葉の響きの洒脱さと絵柄との相性も大きな魅力のひとつ。ぜひ字幕版もお薦めしたい。
(山口 順子)
公式サイト:https://arco-movie.jp
配給:AMGエンタテインメント ハーク
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