ヴィンテージロレックスの人気は、一向に衰える気配を見せない。むしろ近年は、本当に価値のあるモデルを見極めようとする視線が、これまで以上にシビアになっている。
なぜ、約半世紀前に生産された古いロレックスが価値を保ち続け、人々を惹きつけるのか? その問いを明らかにするべく、国内トップクラスの在庫数を誇る「ロレックス専門店 クォーク」を訪ねた。同社の取締役副社長を務める佐藤 顕さんの談話から、ヴィンテージロレックスの現在地を読み解く。
1990年代に芽吹き、世界的なブームに
ヴィンテージロレックスのブームの起点は1990年代にさかのぼる。当時、イタリアを中心としたヨーロッパの愛好家が、ポール・ニューマンをはじめとする初期スポーツモデルの価値に注目し始めた。
2000年代に入ると、専門誌やオークションハウスを通じて情報が共有され、マーケットの輪郭が明確になっていく。そして2010年代にはオークションでの高額落札が相次ぎ、一気に世界的なブームへと拡大した。
「2020年代に入ると、コロナ禍を契機に『時計=資産』という視点が強まりました。ただ現在は投機的な熱狂も落ち着き、ヴィンテージの持つ美的な価値を見極めようとする方が増えつつあります」
主な購入層は、40~50代の団塊ジュニア世代
では現在、どのような層がヴィンテージロレックスを購入しているのだろうか。
「富裕層だけでなく、40〜50代の団塊ジュニア世代のお客様が増えています。若い頃にロレックスへ憧れを抱いていたものの、当時は手が届かなかった世代が、仕事や家庭が一段落し、自分のための時計を選べるタイミングを迎えているようです」
彼らにとってヴィンテージロレックスはファッションアイテムであり、同時に実用品でもある。
「ジーンズやクルマ、バイクと同じように、古いものを大切にメンテナンスしながら使い続けたい、という嗜好を持つ方が多いと感じます。
ロレックスであれば、60〜70年代に生産された個体でも、気兼ねなく使うことができますから。これほど道具としての本質的なクオリティが高いブランドは他にそう多くありません」
そもそも、他の高級時計ブランドと比べてロレックスは「数が多い」と言われる。にもかかわらず、なぜ価値が落ちにくいのか。
「理由は生産規模と思想の違いにあります。50〜70年代のロレックスは、すでに工業製品としての大量生産体制を確立しており、なおかつ高い耐久性を備えた実用品として設計されていました」
そのため、日常の中で道具として使われ、修理されながら受け継がれてきた。結果として、同時代の他ブランドの多くが市場から姿を消したのに対し、ロレックスは現在も一定数が流通し、世界的なマーケットが成立している。
「ただ、当時のままのパーツが残っている個体は意外と少なく、そこに価格差が生まれます。実用性を優先してパーツを新しく交換するのがロレックスのポリシーです。メーカーとしては正しい姿勢ですが、ヴィンテージとしての価値は変わってしまうんです」
つまり、パーツまで含めてオリジナル性の高いモデルほど希少性が高く、価値も落ちにくいというわけだ。
