成功者の“知られざる始まり”

 だからこそ、3月21日放送の『森英恵 Butterfly beyond』に強く惹かれたのだと思う。世界的ファッションデザイナーとして知られる森英恵。このドラマは、彼女の知られざる若き日の奮闘を描いている。

 たおやかでチャーミングな森英恵を演じるのは、数々の話題作に出演してきた八木莉可子。

『First Love 初恋』(Netflix、2022)や『おとなりに銀河』(NHK総合、2023)、『潜入兄妹 特殊詐欺特命捜査官』(日本テレビ系、2024)など、どちらかというと“陰”寄りのキャラを演じることが多かった彼女が、ここまで明るい役柄に挑んでいるのは、最初は新鮮に思えた。

 しかし、その新鮮さはすぐに消え、気づけば「この役は、彼女以外には考えられない」と思うようになっていた。

森賢(中島裕翔)という“最強の伴侶”

 実際に、英恵が育った藤井家では、父・徳造(仲村トオル)の帰宅時には全員が起立をして出迎え、どんなにお腹が空いても父が箸をつけるまでは正座をして待機する…など厳格な“家”の在り方が当たり前とされていた。

 そんな時代において、賢の存在はどこか異質に映る。彼は英恵を“家”に縛るのではなく、ひとりの人間として彼女の意思や夢を尊重していたのだ。

 洋裁に夢中になっている英恵を見て、「だったら、いっそ仕事にしてみたらどう?」と洋裁店『ひよしや』のオープンを勧めたのも、賢だった。そして、英恵の仕事が繁盛すると、会社勤めを辞めて『ひよしや』の経営を担う決断までしてくれた。彼の支えがあったからこそ、英恵は“蝶”のようにどこまでも羽ばたくことができたのだろう。

 賢は、「こんないい旦那、いるか?」と思ってしまうほど、理想的な人物だ。しかし、“夢物語”のようにならなかったのは、中島が演じていたからだろう。

 中島は、“両親に安心して紹介することができる有名人”のアンケートを取ったら、確実に上位に食い込むはずだ(完全なる独断と偏見ですみません)。俳優としても、『デート〜恋とはどんなものかしら〜』(フジテレビ系、2015)の鷲尾豊や、『しずかちゃんとパパ』(NHK総合)の道永圭一など相手の両親とも上手く渡り合っていくようなキャラを演じることが多い。

『森英恵 Butterfly beyond』でも、「医者との結婚しか認めん!」と意地になっている英恵の父に、「勝手に押しかけて申し訳ないと思うなら、来るな」と嫌味を言われていたが、誠実に向き合い続けることで、その距離はじわじわと縮まっていった。

「うん、中島裕翔ならそうなるよね」と思わずうなずいてしまったのは、わたしだけだろうか。彼のたたずまいには、不思議な説得力があるのだ。

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