俳優は「芸術家」である以上、感性と才能は欠かせない。しかし同時に、「個人事業主」として自分自身をマネジメントする立場でもある。そのため、自分をブランド化するマーケティング思考や経営センスも求められる。今回は、有名大学の経済学部・経営学部出身の俳優5人を紹介し、彼らの「ブランド戦略」とあわせて解説する。第3回。(文:編集部)
賀来賢人(青山学院大学経営学部)
【注目ポイント】
恋に翻弄される純朴な青年から、80年代を駆け抜ける破天荒なツッパリ高校生まで——作品世界のトーンに合わせて大胆に役柄を演じ分ける俳優、賀来賢人。
そんな彼が、実は青山学院大学経営学部に進学していたことをご存じだろうか。
青山学院大学の経営学部は、経営戦略やマーケティング、会計、消費者行動などを体系的に学べる学部だ。
いわゆる「MARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)」の一角として安定した評価を受け、華やかさと堅実さを併せ持つポジションにある。
だが、大学生活を送る賀来は葛藤を抱えていた。高校時代にスカウトをきっかけに芸能界入りしており、すでに俳優としての一歩を踏み出していたからだ。
多くの学生と同様、「ひとまず大学へ」という気持ちで進学した賀来だったが、在学中に映画『銀色の雨』(2009)で主演を務めるチャンスをつかむ。そこで彼は、安定よりも挑戦を選び、大学を離れる決断を下した。
その後の活躍は周知の通りだ。『今日から俺は!!』(2018、日本テレビ系)での全力のコメディ演技、さらに『ニッポンノワール-刑事Yの反乱-』(2019、日本テレビ系)で見せたシリアスな存在感。
ジャンルを横断しながら主演級俳優としての地位を確立し、いまや日本の映像界に欠かせない存在となっている。
とはいえ、大学での学びが無意味だったわけではないだろう。そもそも経営学は、市場や組織を分析し、限られた資源をどこに投下するかを考える学問だ。賀来のキャリアを振り返ると、その思考法はどこか通底している。
賀来はインタビューで、自身を「自分教」の教祖だと語っている。
「自分を神様にして、自分の宗教をつくるような感じで。自分にできないものは何もない! って信じ込むと、だいたい、いい方向へいくことが多くて」(「「肩書き」を乗り越えた先の心地いい日々――賀来賢人、焦ってばかりの20代終える」『Yahoo!ニュース』特集)
自己を信じ切る姿勢は、俳優という不確実な職業において最大の武器となる。
経営を学んだ青年は、最終的に「自分」というブランドを徹底的に信じ、育て上げる道を選んだのだ。
編集部
