デジタル化が進み、読書の形も多様化する中で、「紙の本の居場所」は問い直されている。そんななか、書籍のオンライン買取・販売の大手「株式会社バリューブックス」(以下「バリューブックス」)が2026年2月に、Ginza Sony Park(以下、「銀座ソニーパーク」)で開催したイベント「本の公園」が、書店界隈に静かな衝撃を与えている。
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銀座ソニーパークに出現した「本の公園」
「本の公園」は、ブック・コーディネーターでPodcast「本の惑星」を主宰するバリューブックス取締役の内沼晋太郎氏と銀座ソニーパークがコラボレーションして生まれた企画。古本市場における需要と供給のバランスによって値段がつかず、古紙回収に回るはずだったものから拾い上げた古本を2万冊ほど集め、誰もがふらりと訪れて、無料で⾃由に読みふけることができる「本の公園」として会場を開放した。
「読むだけなら無料」「トートバッグに詰め放題」――SNSで広がった熱狂
筆者がこのイベントの存在を知ったのは、Xの投稿から。愛読していた雑誌のバックナンバーを大量に発見して喜ぶ投稿や、「トートバッグを買った人だけが入場できるのかと思ったら、入場は無料で好きなだけ座って本が読める」という太っ腹さに感激する投稿など、とにかく熱気がすごかったのだ。
ちなみにネットで拡散したのは、開催当初は「トートバッグに何冊でも詰め放題」のシステムが話題を呼んだことも理由のひとつ。しかしネットで知った多くの人が会場に押し寄せ、本の補充が間に合わなくなったため、4日目の2月10日から、「トートバッグ1枚につき5冊まで」と制限された。そこで客足が止まるかと思いきや、それでも入場者数が大きく減ることはなかったという。
「気になったら確保」 本をめぐる心理戦
筆者が「本の公園」に足を運んだのは、開催日から数日たった平日だったが、入口にはオープン待ちの人も数人いて、オープン直後から盛況。若い人からシニアまで年齢層が幅広く、みんな、すごい熱気で本を探していた。会場内の椅子に座って読みふけっている人も多く、ほとんどの人が手元に数冊の本を積んでいる。
なぜ手元に大量の本を置いておくのか、自分が本を探してみてわかった。目をつけた本があって、少し目移りして再度見ると、もうその本がなくなっているということが頻発する。だから少しでも気になった本は、自分の手元に置いておく必要があるのだ。
また自分の超愛読書があるのを見つけると、嬉しい気持ちが半分、「これを読んだ人は手元に置かず、売ったのか」という残念な気持ちが半分。そして次に見た時にその本が無いと、誰かが見つけて持ち帰ったことにホッとする。そんな、一般の古書店では味わえない心の揺れも、周囲の熱気ゆえだろう。
会場を一巡して気づいたのは、歴史小説、時代小説が多いこと。時代小説は常に新刊が出ているのを目にするので、一定のファンがいるのだろうが、古書としては売れにくいという現象のあらわれなのかもしれない。また筆者が主に読むのは海外の翻訳小説だが、会場で見つけた翻訳小説は、ロアルド・ダールの「単独飛行」1冊のみだった。これも、翻訳小説の刊行数が減っていることを象徴しているのかもしれないと、さびしく思いつつ、運命を感じてその1冊を持ち帰る5冊の中に加えた。中学生の頃に愛読した北杜夫の「どくとるマンボウ航海記」(昭和30年代の出版)があって、これも加えた。
