2026年03月11日 20時50分
AI

約1万人の作家が共同で出版した「Don’t Steal This Book(この本を盗むな)」は、作家の名前がリスト化されただけの内容で、本としての中身がない「空っぽの本」となっています。この本はAI企業が作品を許可なく使用していることに抗議する目的で作成されており、出版を主催した作家は「AI業界は許可や支払いなしに盗まれた作品の上に成り立っている」と批判を述べています。
Don’t Steal This Book
https://www.dontstealthisbook.com/home

Thousands of authors publish ‘empty’ book in protest over AI using their work | AI (artificial intelligence) | The Guardian
https://www.theguardian.com/technology/2026/mar/10/thousands-authors-publish-empty-book-protest-ai-work-copyright
Richard Osman and Jeanette Winterson among authors to publish ‘empty book’ in protest of AI using their work | The Independent
https://www.the-independent.com/arts-entertainment/books/news/author-book-protest-ai-copyright-b2935366.html
「Don’t Steal This Book」には2017年にノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ氏のほか、作家や歴史家、作曲家などが寄稿しています。プロジェクトページの「関連する著者のリスト」から参加した作家の一覧を見ることができます。
イギリス政府では、著作権法を改正して「権利保有者がオプトアウト(拒否の姿勢を明示)しない限りAI企業が許可なしでコンテンツをAIモデルのトレーニングに利用できることを許可する」という提案が協議されています。この提案は多数のクリエイターや議員から反対の声が挙がって1万件以上の意見が寄せられたほか、OpenAIやGoogleも「オプトアウトシステムが不透明でAI企業と権利者の両方に不利益が生じる」として反対意見を示しました。
イギリス政府による「権利者がオプトアウトしない限りAI企業が許可なしでコンテンツをAIモデルトレーニングに利用することを認める」という提案をOpenAIとGoogleが拒否 – GIGAZINE

イギリス政府は2026年3月18日に著作権法改正の可能性に関する経済的影響評価の発表を予定しており、「Don’t Steal This Book」はその約1週間前に開催されたロンドン・ブックフェアで約1000冊が配布されました。「Don’t Steal This Book」の裏表紙には、「イギリス政府は、AI企業に利益をもたらすために本の盗難を合法化してはならない」と書かれています。
また、プロジェクトサイトの「about」ページでは「イギリス政府は、AI企業を利するために書籍の盗難を合法化してはなりません。AI企業は、許可や報酬なしに何百万冊もの書籍をコピーすることで自社製品を開発しています。政府は、この大規模な盗難の合法化を検討しています。私たちは政府に対し、このような行為を阻止するよう強く求めます。AI企業も、他の企業と同様に書籍の代金を支払うべきです。そうでなければ、私たちは空白のページ、報酬を受け取れない作家、そして次に読む本を奪われた読者という状況に陥るでしょう。この本を盗まないでください」と抗議文が掲載されています。
この本の主催者で作曲家のエド・ニュートン・レックス氏は、「AI業界は許可や支払いなしに盗まれた作品の上に成り立っています。これは被害者がいる犯罪です。生成AIは、その学習対象となる作品の作者と競合し、彼らの生計を奪っているのです。政府はイギリスのクリエイターを守り、AI企業による創作物の窃盗を合法化することを拒否しなければなりません」とプロジェクトの意図を語りました。レックス氏はアーティストの著作権保護を求める活動家でもあり、著名人1万3500人が署名している公開書簡「AIトレーニングに関する声明」を主催しています。
俳優労働組合SAG-AFTRAや世界最大の出版社が「AIをトレーニングするためにクリエイティブ作品を無許可で使用してはならない」とする公開書簡に署名 – GIGAZINE

「Don’t Steal This Book」に参加した作家のジャネット・ウィンターソン氏は「大手IT企業へのメッセージはシンプルです。もしあなた方が積極的に私たちを支援できないのであれば(現状あなた方はそうしていません)、私たちの作品を盗むのはやめてください。あなた方のボットは、私たちのように作品を生むことはできません。それを受け入れ、先に進んでください」と述べています。同じく作家のアダム・ケイ氏は、「AIのせいでカスタマーサービスが無能なチャットボットに成り下がり、ソーシャルメディアが低品質のゴミと化しているのは十分に残念なことです。ついでに出版業界もつぶそうとしています。私たちは皆、本を読むためにお金を払っています。ロボットにも同じことができるはずです」と語りました。
イギリスの政府報道官はイギリスメディアのThe Guardianの取材に対し「政府は、人間の創造性を尊重・保護し、信頼でき、イノベーションを解き放つ著作権制度を望んでいます。この問題について、クリエイティブ業界と引き続き緊密に連携し、2026年3月18日までに議会に報告するという約束を果たします」と回答しました。
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