
マネジメント関連の本を並べた書棚の中段に面陳列で展示する(紀伊国屋書店大手町ビル店)
本はリスキリングの手がかりになる。NIKKEIリスキリングでは、ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチし、本探し・本選びの材料を提供していく。
今回は、定点観測している紀伊国屋書店大手町ビル店だ。2月はビジネス書の売れゆきがあまり振るわなかった。話題の新刊などが乏しく、息の長い売れ筋中心の販売になっていたようだ。そんな中、書店員が注目するのは、約2万人の働く人と接してきた組織開発コンサルタントが、「違和感」をキーワードに組織を良くする鍵を解きほぐした一冊だった。
「持ち味」の違いが嚙み合っている組織
その本は勅使川原真衣『組織の違和感』(ダイヤモンド社)。副題に「結局、リーダーは何を変えればいいのか?」とある。著者の勅使川原氏は東大で教育社会学を修めた後、外資系の組織・人事コンサルティングファーム勤務を経て、2017年に組織開発を専門として独立、個人の能力でなく「関係性」という切り口から組織を良くする提案を行っている。本サイトの連載「私のリーダー論」でも25年12月に、上・下2回にわたって脱能力主義の考え方や人物像をインタビューで紹介した。そんな著者がコンサルタントとして積み上げた知見をまとめたのが本書だ。
「車は、アクセルやブレーキ、エンジン、タイヤというバラバラの機能があって初めて走行できる。……存在価値を発揮する組織とは、この個人の凸凹、『持ち味』の違いが嚙(か)み合っている組織に他なりません」という。
そんな組織を実現するため、本書はあえて個人の「違和感」に着目して問題をひもとくというアプローチを取った。「これを言っていいのかな」「あれは聞かないほうがいいかな」と疑心暗鬼になって、結果的に「決めつけ」が横行しているのが、多くの職場の現在地ではないかと著者は見る。
これを解きほぐすきっかけになるのが、そうしたコミュニケーションの現場で感じた違和感だ。自分はどうして違和感を抱いたのか。解釈の入っていない「気づき」をそのまま出してみる。「決めつけない」ところから始めるのだ。
会議で伝えたことに部下の反応が悪かったときに「ちょっと今、反応がなかったから不安になったんだけど」と口に出してみる。そうするとその違和感が「私の問題」から「私たちの問題」へと変わり、職場の課題へと変わっていく。「違和感を察知した瞬間にこそ、組織が変わる兆しが見えている」と著者は言う。
自分を知り、相手を知り、組み合わせる
①自分の解釈のパターンを知る②相手の解釈のパターンを知る③それらを踏まえて、組み合わせる――この3ステップを地道に踏んでいくことで無理なく自分が変わり、ひいては職場が良い方向へと変わる。これが著者の示す組織改革の手法だ。
その土台となる観察の仕方から始まり、自分を知るにはどうすればいいか、相手を知るために使えるフレームワーク、組み合わせを考える思考法、さらには違和感を乗り越えるための話し方や振る舞い方まで、違和感をきっかけに組織を良くする方法が順を追って語られていく。
「1月に入荷した本だが、ここへ来てよく売れるようになった」と店長の瓜生春子さんは話す。年度替わりの異動の季節が近づき、改めて組織づくりへの関心が高まる時期なのかもしれない。
4位に『半導体覇権』
それでは、先週のランキングを見ていこう。
(1)デジタル広告の内製化戦略田中秀和著(パノラボ)(2)読売消滅橋本弘道著(ビジネス社)(3)取引適正化法制の解説と分析長澤哲也著(商事法務)(4)半導体覇権日本経済新聞社編(日本経済新聞出版)(5)組織の違和感勅使川原真衣著(ダイヤモンド社)
(紀伊国屋書店大手町ビル店、2026年2月23日~3月1日)
1位は代理店依存からの脱却を説く広告戦略の解説書。読売新聞社の苦境を描いた元同社社会部次長の著書が2位に入った。3位はフリーランス法など取引適正化法制を解説・分析した実務書。4位には半導体をめぐる覇権争いを国家・地域・企業の思惑から立体的に解き明かした本が入った。今回紹介した『組織の違和感』は5位だった。
(水柿武志)
