
大島薫さん(2026年2月26日/司法記者クラブ/弁護士ドットコム撮影)
2026年02月26日 17時58分
「男の娘AV女優」として一世を風靡し、現在は作家・タレントとして活動する大島薫さんが、引退後も出演作品の販売・配信が継続されたとして、都内のAV制作会社を相手取り損害賠償などを求めた訴訟は、東京地裁で和解が成立した。和解は2月24日付。
双方が合意した公表内容によると、AV出演被害防止・救済法(いわゆるAV新法)の趣旨に則った解決となった。大島さんの出演作品について、今後は製造・販売・譲渡をおこなわないことに加えて、すでに流通している商品の回収・破棄も盛り込まれたという。解決金の額は非公表としている。
大島さんは2月26日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見し、「自分の権利を取り戻したような裁判だった」と振り返った。
●AV人権倫理機構の「5年ルール」で販売停止を申請したが…
訴状などによると、大島さんは2014年1月にデビューし、2015年5月に引退した。
その後、AV人権倫理機構が「発売から5年経過した作品は申請があれば販売停止する」とのルールを設けた。大島さんは、この枠組みに基づき販売停止を申請したが、制作会社は応じなかったという。
その後も販売や配信が継続されたことから、大島さんは2023年11月、東京地裁に提訴した。
●違法アップロードにも対応できるように
今回の和解では、制作会社側が今後、大島さんの出演作品を製造、販売、輸出、宣伝しないこと、さらにこれらの権利を第三者に譲渡しないことも確認された。
著作権自体は会社側に残るものの、大島さんには無償で「通常実施権」が付与された。これによって、大島さん自身が、違法アップロードに対して削除要請をおこなうなどの対応がとりやすくなった。
●AV新法前の出演者の救済も
左から伊藤和子弁護士、大島薫さん、神原元弁護士(2026年2月26日/弁護士ドットコム撮影)
大島さんの出演はAV新法施行前だった。
それでも新法の「趣旨に則った」和解が成立したことについて、代理人の神原元弁護士は会見で「法律ができたことで、社会の認識や法の運用も変わった」と述べた。
また、代理人の伊藤和子弁護士は、かつて議論された「忘れられる権利」に言及し、「一度出演すると未来永劫回収できないのは極めて問題だ」と指摘した。
そのうえで、AV新法制定前に出演した人への救済のあり方についても、立法的な検討が必要だとうったえた。
●AV業界内外の課題は残っている
なお、AV業界をめぐる課題は依然として残る。
業界の改善に取り組んだAV人権倫理機構は活動を終了し、現在は別の団体が販売停止機能を引き継いでいるが、停止要請に応じないメーカーに対する強制力は限定的とされる。
さらに、業界の枠外での流通(個人撮影作品や個人間売買)、海外サーバを利用した違法アップロードといった問題も指摘されている。
一度インターネット空間に流通した作品を回収することの難しさも、改めて浮き彫りになった。
