(CNN) 最近ではブラックピンクやBTSなど、どのK-POPコンサートでも楽曲の大半が韓国語であるにもかかわらず、世界中から集まった多様なファンが一緒に歌う光景を目のあたりにする。これは、「韓流」とも呼ばれる韓国カルチャーを世界的に広めることで経済の多角化と再生を図ろうとする同国の取り組みを如実に象徴する場面だ。一方で、韓国カルチャーへの関心が国際的に極めて高まっているにもかかわらず、新しい熱烈なファンの一部が十分に楽しめていない面がある。それがK-ビューティー(韓国コスメ)だ。
韓国を代表する文化輸出品の一つであるにもかかわらず、韓国コスメは広範な層に対応するという点で時折苦戦してきた。韓国の美容ブランドのコンシーラーやファンデーションといったメイク用品は歴史的に色展開が限定的で、明るめから中間的な肌色に重点が置かれてきた。プロモーションもほぼ例外なく、細身で若く、極端に色白のモデルによって行われている。こうした対象を限定したアプローチは明らかに時代遅れだ。世界的な化粧品会社は進化し、インクルーシブ(包摂的)なマーケティングや製品設計が顧客ロイヤルティーや収益の面で必須になっている。
この状況は、固定観念に挑戦してきたK-POPアイドルたちの進歩とも相いれない印象を与える。韓国のボーイズグループ、ストレイキッズのカラフルでふんわりとしたヘアスタイルから、ビッグバンのジードラゴンやエイティーズのソンファのような先駆的な歌手たちのノンバイナリーな衣装まで、K-POPの男性アイドルたちは多様な男性性の表現をずっと育んできた。スカートやコルセット、ヒールといった一般に女性的とみられる衣服を着ることにためらいはなく、メイクやスキンケア用品を使っていることも隠さない。
しかし、韓国における多様性や包摂性は後れを取っている。2025年に同国の文化体育観光部が発表した報告書によると、全国の成人4974人の38%超が文化的多様性の意味を知らなかった。また、54%はメディアを通じて特定の文化や集団に対する固定観念や偏見を抱くようになったと答えた。

ビッグバンのジードラゴン。写真はシャネルの2025年春夏コレクションに出席したときのもの/Stephane Cardinale/Corbis/Getty Images

ストレイキッズのフィリックス。写真は昨年8月22日にソウルで開催されたルイ・ヴィトンのハイジュエリーイベントに参加したときのもの/iMBC/Imazins/Getty Images
韓国における美の基準を考える際には、歴史的に移民に厳格な姿勢を取ってきたことを一因とする民族的均質性や、文化的嗜好(しこう)など、複数の要因を考慮する必要がある。韓国コスメがよりインクルーシブであるべきかどうかは、近年多くの議論を呼んできた。すべてのブランドはインクルーシブを慣例とすべきだと主張する人がいる一方で、それは見せかけに過ぎず、ニーズにきちんと応えていないと論じる人もいる。
あるレディットのユーザーは「高級化粧品会社でデータアナリストをしている友人がいるんだけど、30色以上あるファンデーションとコンシーラーのうち、たった6色が売り上げの95%を占めている。だから、そのブランドにとってはこんなに幅広い色展開は稼ぎよりはるかに多くのコストがかかっている。こういう色から得られる売り上げは率直にいって開発や生産のコストに見合わない」と書いている。「人気のない色は生産を減らしても、絶対売り切れない」
K-POPを超える韓国コスメ

コスメショップが建ち並ぶ明洞の繁華街/Kyodo News/Getty Images
韓国はより多様な社会になりつつあり、国際結婚や世界中から集まる労働力によって外国人の人口が増加している(25年には5%を超え、同国が「多文化社会」とする基準に近づいた)。韓国発のポップグループの人気は国際的な幅広いファン層を生み出し、それが観光の大きな原動力となっている。
調査会社ミンテルの推計で900億ドル(約14兆円)超の規模がある韓国コスメの人気と、韓国カルチャーの国際的な台頭には関連が見られる。「K-POPや韓国ドラマの注目度の高さと視覚文化は韓国コスメの効果に対する認識を高め、『アジア人は老けない』というネットスラングが示すように、アジア人のスキンケアや老化にまつわる通説を支えている」とロサンゼルスの南カリフォルニア大学アネンバーグ・コミュニケーション・ジャーナリズム・スクールのヘジン・リー臨床准教授(コミュニケーション学)は述べた。
ホワイトハウスのレビット報道官は昨年、アジア太平洋経済協力会議(APEC)のため韓国を訪れた際、小売り大手オリーブヤングで韓国コスメを購入し、その体験をSNSで共有した。「これは韓国国内でメディアと世論の大きな注目を集め、従来の韓国カルチャーのファン層を超えて韓国コスメに世界的な注目が高まっている兆しとして広く議論された」とリー氏は述べた。

APECに先立ち日本に立ち寄ったホワイトハウスのレビット報道官=2025年10月28日/Andrew Harnik/Getty Images
国外で韓国コスメ製品の普及が進んでいることも、支持層の拡大を後押ししている。24年には韓国が美容製品の対米輸出国としてフランスを抜いて1位となり、出荷額は17億ドルに達した。現在、韓国の美容ブランドは全米の店舗で広く販売され、米小売り大手コストコやターゲット、セフォラなどで取り扱われている。セフォラは今年1月にオリーブヤングと提携。オリーブヤングは今年、初めて米国に自社店舗を開設する運びとなり注目を集めている。パリからワルシャワに至る欧州の都市でも韓国コスメ専門のコンセプトストアが開店しており、現地の小売業者や薬局も韓国コスメの取り扱いを拡大している。
未発売ながら多数の予約
韓国コスメは、世界的に一層求められるようになる中で、韓国人や東アジア系の肌色にとどまらない、より幅広い顧客層に対応する必要がでてくるだろう。
メリッサ・アルファー氏は、子どもたちのK-POP愛をきっかけにタレントエージェントの仕事を辞め、元免税店コンサルタントのウーゴ・デ・モンドラゴン氏と協力して、ソウルを拠点にメラニンが豊富な肌向けのスキンケアブランド「K+ブラウン」を設立した。「K-POPのどのコンサートやイベントでも、観客は多様性に満ちている。濃い肌色の少女や、ヒジャブを着用している人、ラテン系の女性、アフリカ系米国人などだ」とアルファー氏は語った。「有色人種の間でK-POPや韓国カルチャーはとても盛り上がっているが、韓国コスメとなると彼らが反映されているわけではない」

K+ブラウンはメラニンが豊富な肌向けに開発された初の韓国コスメをうたっている/K+BROWN
K+ブラウン初の製品は、より色の濃い肌の保湿改善を目的としたバイオミメティックセラムだ。2月末に発売予定で、すでに数千人の予約を受けているとアルファー氏。スキンケアブランドの立ち上げという判断は、メイクで欠点を隠すよりも長期的な肌の健康や保湿、バリアー機能の保護を重視するという従来の韓国コスメの理念と一致している。
国内ブランドも順応し始めている。16年から展開している韓国コスメブランド「ティルティル」は、23年にファンデーション「マスクフィット・レッドクッション」で世界的な注目を集めた。当時は「ポーセリン」「アイボリー」「サンド」の3色展開。韓国国内市場で3色展開は珍しくなかったが、ティルティルが米国や欧州に進出するにつれ、欧米のインフルエンサーから合う色が見つからないとの批判が高まった。そこで同ブランドは24年までに6色を追加し、合計9色にすると発表。現在は40色展開で、要望に応じて最大150色までカスタマイズ可能となっており、韓国コスメ分野で有数のインクルーシブを体現している。

ティルティルはもはや多様性のニーズを真に理解したグローバル美容ブランドだとグローバル事業部門責任者モニカ・パーク氏は語る/Courtesy TirTir
一方、韓国コスメ大手アモーレパシフィック・グループ傘下のブランドを扱うソウルの体験型マルチブランドストア、アモーレソンスでは、カスタムカラーのファンデーションやリップスティックを作る区画が設けられており、近年観光客が必ず訪れたい場所となっている。
ミンテルの美容・パーソナルケア部門インサイトの責任者アンドリュー・マクドゥーガル氏は、韓国コスメについて「世界的な主流になった」と指摘する。しかし「韓国外では、多様性と代表性に対するはるかに大きな需要がある。韓国コスメ市場が順応できれば、さらに成長する」との見方を示した。
◇
原文タイトル:K-pop broke taboos by being inclusive. Now, K-beauty is starting to do the same(抄訳)
