ラジオ レコメンダー” やきそばかおる “の I love RADIO 第95回
今回は趣向を変えて、ラジオ投稿の楽しみに関する雑感を書きました。
昨年11月に『アメトーーク』(テレビ朝日)で「ハガキ職人芸人」が放送されました。もともと同番組のファンCLUBの配信用に収録を始めたころ、とても盛り上がったため、急遽、地上波での放送が決まりました。メインのゲストは南海キャンディーズの山里亮太さんでした。
出演者のひとり、ブティックあゆみさんは「概念覆す」というラジオネームで『水曜JUNK 山里亮太の不毛な議論』(TBSラジオ)で放送初期から番組を盛り上げた有名なハガキ職人です。さまざまなラジオ番組のみならず、『ファミコン通信』『SPA!』の読者投稿コーナーでもおなじみです。
放送では山里さんへの愛が溢れていたほか、山里さんもネタを送ってくれるハガキ職人への感謝を言葉にしていて、笑えて温かい気持ちになる素敵な内容でした。
12月にはNHKラジオ第1放送で特別番組『ハガキ投稿のススメ』も放送されました。メインパーソナリティは山崎怜奈さん。ほかに、お笑いトリオ「トンツカタン」の森本晋太郎さん、若手芸人の大喜利ナンバーワンといわれている赤嶺総理さん、さらに僭越ながら、私(やきそばかおる)の4人でラジオ投稿について50分語りました。
ハガキ職人をモチーフにした漫画も盛況です。『妹は知っている』(雁木万里 講談社『週刊ヤングマガジン』2024年52号から連載中)は1巻〜5巻すべて重版が決定。『さむわんへるつ』(ヤマノエイ 集英社『週刊少年ジャンプ』2025年42号より連載中)は1月5日に1巻が発売されてこちらも重版決定。
さらに、深夜ラジオとハガキ職人を描いた舞台 『はがきの王様』が、松岡昌宏さん主演で5月に東京と大阪で上演されることも発表されました。
そもそも「ハガキ職人」とは
それにしても、なぜラジオに投稿することが再び注目を集めているのでしょう? 私はSNS全盛時代だからこそ”選ばれる言葉”が光るのではないか、と推測します。
SNSにいくらでも投稿できる時代、ある人が「Xのなかから、あなたが気に入った言葉をひとつだけ選んでください」と言われたとします。そこで自分が書いたポストが選ばれたら、どんなに嬉しいでしょう。実際に「ハガキ職人は自己承認欲求の塊」と言われることもあります。私も痛いほど分かります…。
「ハガキ職人」という言葉は1980年代に『ビートたけしのオールナイトニッポン』から生まれました。90年代後半からメールで募集する番組が増えていったため「メール職人」「ネタ職人」と呼ばれた時期もありましたが、メールが主流となっても「ハガキ職人」という言葉が残りました。
自分の「ラジオネーム」を考えてみましょう
「ラジオネーム」は投稿する時に使う、本名とは違う名前のことです。昔は「ペンネーム」と呼ばれていましたが、メールで受け付ける番組が増えるにつれて、いつしか「ラジオネーム」と呼ばれるようになりました。
Xをみると、「ラジオネームってどうやってつけたらいいの?」と困っている方を見かけます。思いついた名前でいいし、普段SNSで使っている名前でもいいのですが、ラジオネームの付け方にはある程度の傾向はあります。
好きなものをベースに考える
好きな食べものの名前をそのままラジオネームにしている人もいます。とはいえ、どうしても被ってしまいがち。なかでも「いちご大福」さんは全国のいろいろな番組で名前を聞きます。
オリジナリティを出すために、好きなものと好きなものをくっつける手もあります。芸人がコンビ名を決める時に、お互いが好きなものをつけるのと同様です。例えば「チョコレートプラネット」は、お互いが好きなもの(松尾駿さん「チョコレート」、長田庄平さん「プラネット」)から決めたそうです。
明るい時間帯のワイド番組では、子どもの名前を入れて「◯◯くん(ちゃん)のママ(パパ)」系や住んでいる地名を入れた「◯◯(地名)の〇〇(ここは自由に)」などがあります。シンプルに自分のニックネームで投稿するのもおすすめです。
番組によっては、パーソナリティがラジオネームを考えてくれることもあります。この場合は考えやすいように自分の特徴(好きなアーティスト、スポーツ、趣味など)をいくつか書いておくのがおすすめです。
個人的に好きなのは「外に出れば曇る」さん(自虐系)、「大胸筋バキ男(お)」さん、「毛 深子」さん(パーソナリティが命名)あたりです。一度聴くと頭に残ります。
避けたほうがいい名前
一方、避けたほうがいいものもあります。よく言われるのは「下ネタ」「誰かを傷つけるようなもの」。どんなに本文が面白くてもボツになるので気をつけたいところです。パーソナリティやスタッフに「本文は良いのに、ラジオネームが…」と思われて日の目を見ることがないでしょう。
そのほか、やたらと長い名前も「出オチ感」があるので避けたほうがいいかもしれません。
大喜利企画のとんでもない倍率
ラジオネームが決まったら、内容を考えましょう。一言で送ることができる「大喜利」ネタはセンスと反射神経がポイント。競争率も高くなるのでとても大変です。
『山里亮太の不毛な議論』では毎年夏に「大喜利甲子園」が開催されます。リスナーから送られてきた大喜利を2時間ひたすら読み上げ、頂点を競う人気企画で、2〜3万通のネタが届きます。採用されたら大手を振って街を歩けるレベルです。すごいことなのに街の人に気づかれないのがもったいないと思うほど…。
余談ですが、ラジオが聴けるアプリ「radiko(ラジコ)」で1番聴かれたラジオ番組ランキング(2024年、在京エリア)で1位となった『安住紳一郎の日曜天国』(TBSラジオ 日曜 10時〜11時55分)はメールのレベルが高いことで有名です。放送によると、2025年に寄せられた投稿はおよそ101000通。競争率も高いなか、それでも自信をもって送るか、聴くだけで楽しむか…。
また、広島の高聴取率番組『平成ラヂオバラエティ ごぜん様さま』(RCCラジオ 月曜〜金曜 9時〜11時55分)の横山雄二アナウンサーも、『ごぜん様さま』に毎回大量のメールが届くことに触れて「聴いているだけが一番幸せですよ」とSNS(X)にポストしていました。
メモのすすめ
生放送の番組では、募集テーマが放送前に発表される番組と、放送中に発表される番組があります。前者は思いついた時点で送るのがポイント。放送が始まってからだと一気にライバルが増えます。
放送中にテーマが発表される番組も「反射神経」が重要です。急いで記憶の引き出しを開けまくって、なおかつそれを文章化するのはとんでもないカロリーを消費します。そのため、ネタになりそうなことがあったら、日頃から書いておくことをおすすめします。内容に合ったテーマだった時に素早く投稿することができます。
余談ですが、ある芸能人のマネージャーは、担当している芸能人が雑談で話して盛り上がった内容をメモしていたそうです。番組の打ち合わせの時に「最近、何か面白いことなかったっけ?」と思い出している時に、マネージャーが「先日話していた◯◯の話はどうですか?」と助け舟を出したことで大いに助かったとのこと。
我々にはマネージャーはいないので、メモに助けてもらうしかありません。メモをするのは面倒臭いですが、過去に書いたことが背中を押してくれます。(ただ、採用されるかどうかはやはり文面次第です。もどかしいところです…)
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▲30年ほど前に使っていたネタ帳(一例)。ぼかしを入れてあります。
1ページの1行めに書いてあるのはニッポン放送の郵便番号
長さの感覚を手に入れる
テーマ投稿の場合、ほかのリスナーのメールのなかから、自分が面白いと思ったメールをいくつか文字起こしをして、おおよその文字数を把握するのをおすすめします。「そこまでするなんて面倒臭い!」「出すのやめた!」と思うかもしれませんが、一度把握しておくと、どのくらいの長さが妥当なのかが分かってきます。
パーソナリティの口調をまねして読んで、自然に読めるように推敲すると一層読みやすくなります。読んだ時に息が続かないと思ったら、一文が長い可能性があります。ふたつの文章に分けられないか、再考の余地アリです。一説によると、一文が60文字を過ぎると「長い」と受け止められるといわれています。
今は気軽に投稿しやすくなったぶん、ライバルも多くて大変だと思いますが、好きなパーソナリティに一度でも読んでもらえた時の感激は一生モノです。ぜひ、投稿してみてください。ただし、ボツになったからといって落ち込まずに、前向きに…。
固有名詞には、そっと読み仮名を…
読みにくそうな地名や名前の漢字がある時は、読み方を「ふりがな」で書いておくことをおすすめします。例えば「玉城」という名字(地名)は「たまき」「たましろ」「たまぐすく」と何種類もの読み方があります。こうした時も書かれてあると、とても助かります。
プレゼントがある場合は、住所(郵便番号も)と名前(本名)などを最後に書いておきます。宅配便で届くような大きなプレゼントなら、携帯番号も書いておくといいかもしれません。投稿フォームが設けられている場合はそちらに記入します。
改行の落とし穴
スマホ投稿時代の落とし穴のひとつが「改行」に関する問題です。没頭して入力していると、ついつい改行するのを忘れがち。しかもスマホの画面上では改行しているように見えてしまいます。iPadやプリントアウトで見ると、まさに”文字の塊”。
意識して改行することを心がけることで、パーソナリティやスタッフが、すんなりと読むことができます。なかには1行ごとに1行分のスペースをあける方もいらっしゃいますが、内容ごとに塊(段落)をつくるのがおすすめです。
余談ですが、ハガキで投稿していた頃は、単語の途中で改行しないように気を付けていました。単語の途中で改行をするととても読みづらくなるんです。行の終わりが単語で終わる場合も「単語と助詞」で改行すると読みやすくなります。
例えば「グレープフルーツが」で改行してあるのと「グレープフルーツ」で改行して次の行が「が」で始まるのとでは読みやすさが変わってきます。今は画面の表示次第で改行が変わってしまうので、どうしようもできませんが。
とはいえ「ボツ」になるのが当たり前の世界です
ラジオは投稿したメールが読まれると嬉しいし、ボツになると「どーーーん」と落ち込みます。ボツが続くとフラれたような気持ちになり、布団をかぶって、ふて寝したくなります。私も投稿していた頃は何度も経験があります。
先日もある番組で「毎回10通送っているのに全く読まれません」という嘆きのメールが紹介されました。言いたい気持ちは大いに分かりますが、直接クレームを送るのはほぼ自滅行為です(意見には個人差があります)。
ほかに投稿している人のなかには「こっちも毎回ウンウン唸りながら出してるんだから、簡単に読まれると思われたら困る」とスネる人もいるでしょう。
以前、ボイストレーニングの先生がパーソナリティを務める番組に「LiSAの『紅蓮華』をうまく歌える簡単な方法を教えてほしい」という質問が届きました。
するといつも温厚に話している先生の声が険しくなり、「そんな簡単な方法はありません。プロでも何千回も練習しています!」と言っていました。
ラジオ番組によって採用される内容の傾向はあると思います。先述のように、ほかの人のメールを文字に起こして分析したり、書いた内容をパーソナリティの口調で脳内で朗読してみることをおすすめします。それほど、選ばれるのは難しいのです。
私が書くのもおこがましいですが、投稿で大事なのは、センス×努力×運だと思います(あくまでも個人的見解です)。
微調整の日々
投稿が採用されるために”あれやこれや”と考える感覚。昭和っ子特有の”野球例え”をするなら、ストラックアウトで的を抜くために、投げ方を調整する感覚に似ているかもしれません。
的を抜くのは簡単そうにみえてもとても難しい。自分ではとっておきの球(ネタ)を投げたつもりなのにスッポ抜け(ボツ)になってしまう。「どうすれば的を抜けるのだろう」と投球の仕方を再考する。的を次々に抜いている人を見ながら分析する。
そうこうしているうちに、四隅にある的のギリギリの場所に当たって抜けるようになります。さらに変化球(かなり捻ったネタ)でも的を抜くことができるようになったらノってきた証拠。
ただ、どんなに投球フォームを変えても的を抜けないことはあります。その場合はそっと(SNSなどで暴言を吐くことなく)その場を離れるか、サイレントリスナーとして楽しみましょう。
肝心な内容が抜けている
人を楽しませる文章について考えているうちに「そもそも面白い話はなぜ面白いのか?」という点に行き着きます。
フリートークも面白い兵動大樹さん(お笑いコンビ「矢野・兵動」)は、以前、面白くない話はエピソードの肝心な部分が抜けている場合が多いと仰っていました。さらに、ご自身のトークの内容を紙に起こして何度もブラッシュアップしているそうです。そのマメさに背筋が伸びます。
確かに自分では分かっていても、ほかの人は知らないことも多いです。エピソードトークで良いネタを見つけたら、家族やまわりの人に一度話してみて、伝わるかどうかを試してみるのもいいかもしれません。もちろん、話しても良さそうな内容の時に。
ハガキ投稿 懐かしい話
ここでリアル”ハガキ職人”には懐かしい、”昭和っ子ホイホイ”な話をいくつかお話します。
「ハガキ用修正液」の出現
うっかり書き間違えた時の味方「修正液」。多用すると嫌がられるし、普通の修正液はハガキよりも白いため目立ってしまいます。
現在の主流であるペンタッチ式修正液が発売されたのが1983年。
それから数年して「ハガキ用」が発売されたときは嬉しくて「これで間違えても大丈夫!」と狂喜乱舞したものでした。普通の修正液と比べてクリーム色。当時、開発した方はハガキ職人だったりして…。
ハガキ値上げでまとめて投稿OKに
ハガキの値段は1981年から89年までは一枚40円。その後41円になりました。ここまではよかったのですが、1994年に50円になった時が一大事でした。
まだハガキ投稿が主流だった時代。全国の学生のハガキ職人から悲鳴が起きたのはいうまでもありません。私は大学に入学した頃でアルバイトでハガキ代を稼いでいたとはいえ、これは大きな問題です。
私が聴いていた番組では救済処置として「ハガキの大きさに切った紙を封筒に入れて、まとめて投稿してもOK」となりました。今でいえば”神対応”です。ただし紙はハガキに比べると薄いので、できるだけハガキで送って”存在感”を醸し出すことにしました。
それと正直に言えば「せっかくハガキで送ってくれたんだから、読もうか」とお情けをかけてくれるのではないか、という下心があったことも記しておきます。なんだか、お恥ずかしい…。
ハガキ投稿と私
せっかくですので、ここからは私のエピソードをお話しします。「興味ないよ〜」という方は読み飛ばしていただいてかまいません。
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▲渋谷のラジオ『やきそばかおる ラジオコンシェルジュ』(隔週金曜18時〜18時50分)にて
私は、父が車を運転する時にラジオをつけていたことがきっかけで、ラジオに興味をもつようになりました。小さな頃は「音が聴こえてくるな」という程度の認識です。父はNHKラジオをつけていることが多く、落語や漫才が楽しめる番組や、大相撲中継を聴くのが好きでした。
ラジオ番組を意識して聴き始めたのは、中学2年生の頃でした。兄が使っていたダブルラジカセを譲ってもらって(厳密には「兄が使わなくなったものを勝手に使い始めた」)、むさぼるように聴き始めたのが”ラジオ沼”にハマった全ての始まりです。
実家(山口県)は瀬戸内海に面していて、地元はもちろん、福岡、大分、愛媛の電波も入りました。アナウンサー、自社制作番組の雰囲気、ラジオCM…それぞれのラジオ局の雰囲気の違いを体感していました。
中学生の頃の印象をざっくりいうと、福岡の番組は都会の雰囲気が漂っていました。話のテンポが速く、ゲストも多い。プレゼントも豪華。日曜日のランキング番組には、テレビでおなじみの歌手やミューシャンも毎週のように出ます。夜のワイド番組は福岡の中学や高校の話題がバンバン出ていて、イベントも多く、福岡の中高校生が羨ましい限りでした。
山口と大分はのんびりした雰囲気が似ています。福岡の番組の雰囲気とのギャップも含めて楽しんでいました。愛媛は洋楽・邦楽とも音楽番組が充実していて、ポップな雰囲気のパーソナリティが喋っている印象。道後温泉のラジオCMも流れていて、中学生の私は「いつか行ってみたいな〜」と指をくわえて聴いていたのでした。
ハガキを出して参加するようになったのもこの頃です。
初めてハガキを送った番組は地元のKRYラジオの人気番組『治美のわっしょい!!にちようび』。日曜のお昼3時から放送される1時間の生放送です。
同局の吉田治美アナウンサーが、曲をかけてものまねもしながらテンポよくハガキを紹介していました。治美さんはとにかく芸達者。大学生のアシスタントはいますがディレクターはおらず、ワンマンDJのようなスタイルで曲も自分でかけていきました。
番組では、まわりにいる変わった先生、家族、そのほか面白かったエピソードならなんでも受け付けていて、リスナーが留守番電話に吹き込んだ声をオンエアする「ワシの言いたいこと30秒」というコーナーもありました。
実は松村邦洋さん(山口県熊毛郡田布施町出身)も『わっしょい!!にちようび』のヘビーリスナーでした。学生時代に「ワシの言いたいこと30秒」に出演してビートたけしさんのまねをしていました。あまりの面白さに(山口弁で)「ぶち(とても)すごい人がおる!!」「こんな面白い人が山口におるんか!」と感心しきり。
しかも広島の番組『柏村武昭のサテライトNo.1』にもヤングスタッフとして出演していた根っからのラジオっ子です。今もニッポン放送『高田文夫のラジオビバリー昼ズ』(金曜日)、福岡のKBCラジオ『PAO〜N』(木曜日)、山口のKRYラジオ『松村邦洋のOH-!邦自慢』にレギュラー出演。いずれも人気長寿番組ばかりです。
すっかり松村さんの紹介になってしまったので、話を元に戻します。
中学2年の時、初めてポストに投函した際の感想は「なんか、よく分からんけど恥ずかしい」「いけん(いけない)ことをしてしまった」(ともに山口弁のニュアンスで)という印象でした。
恥ずかしい気持ちは、作文を人に見られる時の恥ずかしさに似ています。自分で書いた、とっておきのネタなのに、読まれるとなるとなぜか恥ずかしいんです。
「いけないことをしてしまった」というのは、夢中で、かつこっそりと聴いている番組の世界の内部に足を踏み入れてしまう感覚です。さらに「自分のハガキがウケなくて、しらけさせてしまったら申し訳ない」という気持ちもあります。
「だったら出さなければいいんじゃないの?」と思われそうですが、今になって思えば、あの時、13歳だったやきそば少年が勇気を出して一歩前に進んだ(ハガキを出した)から、今があるのです。
1通目は理科の先生について書いたのですがボツ。2通目は、もはや何を書いたのか全く覚えていません。「やっぱり、自分は聴くだけに留めておいたほうがいいのかも」と社会の厳しさを知り、「それでももう1通出してみよう」とカップ焼きそばの作り方をネタっぽく書いたところ、晴れて読んでいただきました。
初めて採用された回を聴いたのは父のカーラジオ。地元のショッピングセンターに家族で買い物に行く途中のことでした。
「本当に正しい、カップ焼きそばの作り方!」という声が聞こえてきて「ん?覚えのある内容!」と耳をそばだてると、私のラジオネームと拙い文章を治美さんが読んでいるではありませんか。ラジオにハガキを送っていたことは家族には言っておらず、ひとりだけ顔がみるみる赤くなっていきます。「どうしよう、どうしよう、ハガキが読まれよる!」
カーラジオの音量が小さめだったため、助手席にいた私はボリュームを上げようかどうか迷いましたが、ここで急に上げると不自然です。この時だけは「ラジオが聞こえなくなるから、誰も話しかけんで」と念じます。とはいえ、耳を澄ましても聞こえてくるのは「ややウケ状態」のスタジオの様子。
「あれ?あまりウケてないな…」と肩を落とした時には次のリスナーのハガキに移っていました。私の輝かしいハガキデビューはほろ苦いものがありました。
こうなると、ラジオにハガキを出して読まれたことを家族に白状するかどうか悩むところです。ハガキが紹介されて5分ほど経過しています。人間の記憶は忘れるもの。先ほどの「カップ焼きそば」がスベっていたことも家族の印象に残っていないでしょう。
私は蚊が鳴くような声で「実は、さっき、ラジオでハガキが読まれたんよ」と顔を赤らめながら告白しました。一瞬の間が開きましたが、両親とも「なんだか、よく分からないけど、良いことが起きたのには違いなさそう」と察してくれました。
「音量が小さめで良かった。ボリュームも上げなくて良かった。記憶に残ってなくて良かった」と思ったのはいうまでもありません。その日の夜はお祝いに中華料理を食べに行くことになりました。あの日食べたエビチリの味は忘れません。せっかく読んでもらったのに、スタジオがややウケで味わったしょっぱい気持ちを、甘辛で美味しいエビチリがどこかに追いやってくれました。
思えば、ボツになっても出し続けたからこそ今があるのです。37年前の自分に会ったら「この先も書き続けろよ。ただ、もっともっと面白く書けよ」と言ってやりたいです。
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▲ハガキを書く時に使っていた水性マジック。宛先は太い丸ペン。自分の住所は細いペンで。
読んでもらえると嬉しい理由
では、自分が出した投稿が読まれると嬉しいのはなぜなのでしょう。理由はさまざまだと思います。
・好きなパーソナリティに「選ばれた」気持ちになるから(先述)
・番組のノベルティグッズがもらえるから
・知り合いに自慢できるから
番組のノベルティグッズがもらえると嬉しいですが、今はグッズがない番組も多いです。私の場合は「自分がハガキに書いた文章で、人が笑ってくれることに喜びを感じたから」という気持ちが大きかったのです。先述の『わっしょい!!にちようび』はハガキが面白いとアシスタントの方がケラケラと笑ってくれました。
「誰も笑わせたことがない私が、ハガキに書いた文章で笑ってもらえた!」
今までに味わったことがない快感でした。とても大人しくて、学校でもいつもひとりだった私。この時の衝撃は今でも忘れられません。
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▲録音したカセットテープの一例
自分に課したルール
1998年くらいまではハガキで投稿していました。この頃、自分にあるルールを課していました。それは、それぞれの番組に投稿するのは週に5通以内にすること。それもひとつのコーナーにつき一枚と決めていました。
自分ルールを作ったのには、ハガキがたくさん買えなかったこともありますが、実は妙なプライドがあったのです。
たくさん出して一枚採用されるよりも自信作に絞って、パーソナリティやスタッフのみなさんに「コイツ、面白いな」と思われたかったのです。
ほかの人からみればどうでもいいことです。自分でも「若干、気持ち悪いこだわり」と思いますが、当時は真剣だったのです。結局、「センスが良い」と思われたかったんですね。その夢はいまだ実現せず…。
この時に「複数考えたネタのなかから、ひとつに絞る」眼力が鍛えられました。「ひとつのコーナーにつきひとネタ」にしていたのですが、どうしても絞れなかった時はふたネタ出していました。
ただ、この時に気をつけていたのが、似たような内容のものを出さないこと。むしろ逆の内容のものを投稿して採用されると、「番組はこっちのほうが好みなのか」と分かるようになります。
コサキン
全国各地で放送されていた番組で、特にハマってハガキを出していた番組のひとつがTBSラジオの小堺一機さんと関根勤さんの「コサキン」シリーズ。「コサキン」は何から何までが”独特”なんです。
番組で話題にする芸能人も宇津井健さん、水木一郎さん、冠二郎さん、里見浩太朗さん、高橋英樹さんなど、ほかの番組がイジらない人をネタにしていました。
ユニークな曲を次々に発掘していき、それらの曲は「コサキンソング」としてリスナーの間で人気になったり、ラジオなのに、リスナーから届いた笑える写真を紹介して、ふたりがデラゲラ笑っている様子をリスナーも楽しんだりと、どこか画期的。リスナーも表現力に秀でた人ばかりで、文章の書き方の勉強になりました。
現在は『コサキン ポッドキャストDEワァオ!』として毎週金曜日に配信されています。面白いネタを聴く度に表現の可能性を感じます。
時代は変わって
高校生・大学生の頃は同じ地域のリスナー仲間とラジオのイベントに行っていました。SNSが発達した今は、距離が離れていても仲間をつくりやすくなりました。面白い番組の情報交換も積極的に行われています。番組のイベントが開催されると飛行機で駆けつける人もいます。
10代の頃に、学生向けの夜のワイド番組を聴いて育った人も30〜50代。好きなアイドルやミュージシャンを追っかけるように、パーソナリティや番組の応援をしているというわけです。なかにはネタではなく、ファンレターを送る人もいます。
もちろん、メールを送らずとも応援に繋がります。SNSで番組の面白さをポストしたり、番組のグッズを買ったり、まわりの人にラジオの話をしたり、そしてもちろん、ひとりで聴いたり(再生回数が反映される)、応援の仕方は自由です。
今回はラジオの投稿に関する雑感を書きました。といっても私が書くのもおこがましいような話もありましたが…。
長文を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。次回はインタビューに戻ります。
<了>
