映画『神社 悪魔のささやき』が選んだ観光地ではない神戸

元・東方神起のメンバーとして知られ、現在も日本やアジアで高い支持を集めるジェジュンが主演を務める韓国ホラー映画『神社 悪魔のささやき』は、恐怖表現だけを前面に押し出した作品ではありません。

失われた存在を求める人間の執念や、信仰と呪術のあいだにある曖昧な境界、そして日常のすぐ隣に潜む異界が、物語の中で静かに描かれています。

本作は、物語の冒頭からクライマックスに至るまで、すべてのシーンが神戸市内で撮影されています。

港町や異国情緒といったイメージで語られることの多い神戸ですが、本作に映し出されているのは、そうした表層とは異なる神戸の姿です。

ここからは、映画『神社 悪魔のささやき』の世界観を形づくった神戸のロケ地と、撮影時のエピソードをご紹介します。
映画を鑑賞する前でも、鑑賞後でも、神戸という街の別の表情が、ふと立ち上がってくるかもしれません。

【文・写真】神戸フィルムオフィス

神戸フィルムオフィスは、2000年に神戸市によって設立されたフィルムコミッションです。映画やテレビドラマ、CMなどの映像作品の神戸ロケを誘致・支援し、スクリーンを通して神戸の魅力を世界に発信することを目的としています。撮影許可の取得やロケーション情報の提供、スタッフ・エキストラの斡旋など、映像制作に関わる様々なサポートを行っています。

https://kobefilm.jp/

失われた気配が残る、廃トンネル

【シーン】:祈祷師ミョンジンとマネージャーのユミが行方不明の学生を探しにきた廃トンネル

【ロケーション】:西区(見津が丘)のベルトコンベア跡トンネル

【撮影エピソード】:この映画には複数のトンネルが登場します。いくつのトンネルが登場するか映画館で数えてみてください。熊切監督はトンネルが大好きかも⁉特に1964年~2005年まで神戸の山の土を海に運んだベルトコンベアが敷かれていたトンネルは当時のまま静けさだけが残っている空間です。

教会として生まれ変わった倉庫

【シーン】:牧師ハンジュが韓国人教会で祈りをささげる

【ロケーション】:東灘区の倉庫

【撮影エピソード】:今は使用されていない倉庫で撮影されました。当初は監禁場所の撮影場所でしたが、天窓のある倉庫を熊切監督が気に入って「教会」として撮影(後日、長い階段でも撮影することに)。
エレベーターが動かない倉庫内で、撮影資材を階段で持って上がるのに一苦労。サポーターの学生が大活躍でした。

 何気ない日常が描かれる民家

【シーン】:マネージャーのユミが「日韓文化交流プロジェクト」のポスターデザインについて、佐藤に意見を聞いている

【ロケーション】:長田区の民家

【撮影エピソード】:佐藤役の木野花さんが、神戸弁のイントネーションを何回も練習されていました。

 住宅地のすぐ裏に続く山道

【シーン】:学生たちが、行方不明のユミの妹を廃神社へ探しにいく山道

【ロケーション】:東灘区の山道

【撮影エピソード】:街と山が近く、住宅地からすぐに山に入れるのも、神戸の特徴。山深く見えるこのシーンも住宅地から歩いて5分ほど山に入った場所で撮影されました。

再生された池に生まれる波紋

【シーン】:祈祷師ミョンジンが行方不明のユミの妹の居場所について霊能力を使って探している

【ロケーション】:長田区と須磨区の境に広がる獅子ケ池

【撮影エピソード】:当シーンは自然豊かな山々に囲まれた神秘的な池・獅子ケ池のほとりで早朝に撮影されました。獅子ケ池は、かつて不法投棄などで荒れ放題の場所でしたが、住民の皆さんが中心となり、時間をかけ根気強く清掃活動をされ綺麗に再生されました。今は住民のほか市民の憩いの場となっています。霊能力で生じる池の波紋は撮影スタッフが池に入って板を使って発生させています。

廃屋アトリエという“そのままの空間”

【シーン】:行方不明の学生の痕跡を探すためアトリエにやってきた祈祷師ミョンジンとユミ

【ロケーション】:長田区の丸山バラックリン(角力組)

【撮影エピソード】:神戸電鉄「丸山駅」近くにある廃屋を活用したアトリエ「丸山バラックリン」。映画の雰囲気にあった怪しさを醸し出しています。 映画用に美術セットを組むことなく、現状のままを利用して撮影されました。ロケ地・神戸の幅広さを示すアート⁉なスポットです。

儀式が行われたもう一つのトンネル

【シーン】:儀式の様子(ネタバレ防止の為、詳細は割愛)

【ロケーション】:西区(木見)のベルトコンベア跡トンネル

【撮影エピソード】:ベルトコンベア跡トンネルの内部をうまく活用し、不気味な雰囲気を作り出したシーン。祭壇はトンネルの壁を、生贄の女性が寝ていた場所は撤去したベルトコンベアの基礎部分を利用するなどし、撮影が行われました。

神戸で再現されたソウルの家

【シーン】:祈祷師ミョンジンの自宅・瞑想部屋(韓国ソウル)

【ロケーション】:兵庫区平野エリアの民家

【撮影エピソード】:韓国の伝統的な家屋「韓屋(ハノク)」をイメージした民家は、「丸山バラックリン」を展開する合同会社 廃屋(西村組)が再生した家。こちらの民家では血まみれの浴槽のシーンも撮影されました。また、映画に登場する韓国小皿料理「パンチャン(반찬)」を用意してくれたのは「韓国家庭料理 焼肉ソウル」さん。撮影終了後はスタッフにて美味しくいただきました。



トンネルや山道、廃屋など、『神社 悪魔のささやき』に登場する神戸のロケ地は、いわゆる観光名所ではありません。しかしその分、日常の延長線上にある「異界への入口」として、強いリアリティを持っています。

スクリーンに映し出される風景の多くは、今も神戸のどこかに存在しています。映画を観終えたあとに、「この場所は現実なのだろうか」と感じたとしたら、それは神戸という街の持つ奥行きや懐の深さに触れた証かもしれません。

韓国ホラー映画『神社 悪魔のささやき』。
恐怖の正体は、ぜひ映画館で確かめてみてください。

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