チャートは出版業界各社やIPマーケティングにとって
重要な指標になるのでは

――海外に作品を届けるためのプラットフォームに対する支援についてはいかがでしょうか。現在、世界共通で使えるプラットフォームは日本以外の企業によるものが主流です。ですが、プラットフォーム自体も日本発のものができると、より届けやすくなるのではないでしょうか。

早坂:まさに令和7年度の補正予算で、日本のプラットフォームに対する支援についても検討しています。日本発コンテンツの海外売上を拡大するため、政府予算を252 億円から 556.3億円まで倍増させることになりました。この中でも、海外への流通プラットフォームの支援を新設しました。ユーザーにとっては、便利で面白いコンテンツがたくさんあることが最も大事だと思いますので、例えばアニメと出版のプラットフォームが連携し、海外の消費者にコンテンツを楽しんでいただくような仕掛けを作るなど、流通の面でも後押ししたいと考えています。また、その中で日本の作家やクリエイターが成長し、世界展開していくことを目指しています。

――今年度(令和7年)の補正予算における、それ以外の支援予定されている支援についてもお伺いできますでしょうか。

早坂:エンタメ政策5原則を軸にしながら支援策を具体化しているところです。一例を挙げると世界的なヒットを狙える作品の支援を行う大規模作品制作支援やロケ誘致、流通プラットフォーム拡大支援などです。コンテンツを翻訳して供給したり、プロモーションやプラットフォーム間の相互送客をしたりといったように、コンテンツ単位ではなく事業単位での支援を計画しています。

(▼コンテンツ産業成長投資支援事業の概要 令和7年度補正予算 ※2026年1月6日取材時点)

――作る側も届ける側も、両方支援していくということですね。

早坂:はい、そうです。ほかにも就労環境整備など、バリューチェーンの始まりから終わりまでの支援をするつもりです。

――ビルボードジャパンでは2025年11月からブックチャートをスタートしました。出版業界に対して、どのような影響を期待されますか。

早坂:思わぬ旧作がチャートの上位に登場したりしていて、興味深いですね。このチャートを見た人が周囲の人に自分の好きな本をお薦めし、興味を持った人が紙や電子で買うという動きが起きてくると、新しい読者の開拓に繋がると思います。

意外な本が上位にチャートインしていたり、平成の小説が人気だったりするなど出版業界の方がご覧になると、もっと多くの気づきがあるでしょうね。そこから、業界の皆様が読者との接点の変化や傾向をとらえることによって、各社のビジネスの創意工夫に役立てることができるのではないでしょうか。そこがビルボードのチャートのすごく大きな可能性だと感じています。

コンテンツ産業の広い視点で見ると、音楽やアニメなど他のチャートも横断して見ていくことで、今どういうコンテンツがヒットしているのか、どういうふうにプロモーションを仕掛けていけばいいのかも見えてくると思います。IPを全体で考えてマーケティングしていく方にとっても、非常に重要なチャートになりそうですね。

――ジャンルごとなどに詳しく見ていくと、漫画は最新刊がヒットしていますが、小説などは平成に発売された作品が根強い人気を誇っています。読者のニーズと離れないようにするために先ほどの適正配本制度において、新刊に偏ることがないよう、業界の意識をチューニングしていく必要があると感じています。

早坂:書店で雑誌があまり売れなくなってきている中、売り上げの基盤になっているのはロングテール作品です。ですので、例えば注文に対して作って届けるという限りなく在庫レスに近いようなモデルでロングテール作品が流通していくと、もう少し利益構造も変わってくると思います。あとは、本屋さんに行くと作家さんの新刊に合わせてうまく工夫して本が並べられていますよね。そこをフックに既刊本が売れていくように、需要と供給を最適化できるケースもあるのではないかと思います。

――ビルボードでは、現在総合チャート以外に、ジャンル別や初版が発売された年号別など9種類を発表しています。他に、どのようなチャートがあれば良いと思われますか。

早坂:現状のブックチャートは日本で売れた本のランキングですが、海外でどれだけ日本の出版物が読まれているかということについても、可視化できると良いですよね。

――そうですね。音楽だけでなく、本のグローバルチャートも目指していきたいと思っています。最後に、海外展開に向けて日本のコンテンツの強みを教えていただけますでしょうか。

早坂:作品の多様性に尽きると思います。日本は他の国に比べてコンテンツを表現する上での自由度が高いので、そこが魅力なのではないでしょうか、あとはクオリティの高さも強みですよね。ゲームやアニメなど、日本は素晴らしい技術を持っていると思います。これまで培ってきた日本人の多様な価値観や、コンテンツに対する幅広い嗜好に応えてきた土壌が、まさに今後海外に出ていく時の大きな強みになるのではないでしょうか。

プロフィール

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早坂悟

経済産業省 商務・サービスグループ 文化創造産業課 課長補佐

2024年4月より経済産業省コンテンツ産業課にて、主にコンテンツの海外展開に関する政策を担当。
2024年7月に組織改編で、コンテンツ産業課、クールジャパン政策課、伝統的工芸品産業室の3課室が統合され、文化創造産業課が設置される。
2025年6月より出版業界の担当を兼任。

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