1月期の冬ドラマが出そろった。ミラノ・コルティナ冬季五輪、総選挙など大型イベントが並走する中での落ち着かないクール。22年4月期以来の満点(星5つ)なしではあるものの、次も見たくなる快作は多めの印象だ。「勝手にドラマ評」第65弾。今回も単なるドラマおたくの立場から勝手な好みであれこれ言い、★をつけてみた(主要枠のみ、シリーズものは除く)。
月9ドラマ「ヤンドク!」(C)フジテレビ
◆「ヤンドク!」(フジテレビ系、月曜9時)橋本環奈/向井理
★★★☆☆
元ヤンキーのスゴ腕ドクター参上。橋本環奈のヤンキー設定はさすがに既視感があり、オラオラ系天才ドクターもテレ朝で演じたばかり。新鮮な何かを見たい月9ファンにはいろいろ不親切な味わい。よそ者パワーによる病院改革のジャンルだが、神の手の描写が弱く、患者さんファーストが荒唐無稽な味わいに落ち着いて残念。「自分ヤンキーなんで」を便利使いするより、ここぞという時に元ヤン発動の「ごくせん」のようなメリハリがほしかった。回想シーンの特攻服などコスプレドラマとしてはかわいく、むしろコメディー全振りで医療ドラマに風穴を希望。
月10ドラマ「夫に間違いありません」(C)フジテレビ
◆「夫に間違いありません」(フジテレビ系、月曜10時)松下奈緒/桜井ユキ/安田顕
★★☆☆☆
死んだはずの夫が生きていた。保険金欲しさで事実を隠蔽(いんぺい)する夫婦の選択はミステリーとして申し分ないが、ふらっと帰ってきたヤスケンの不穏と、松下奈緒の驚きがぞわっときた1話がピークだった感。夫が不倫のクズなのは想定内として、子どもの未来より夫に走る妻の女心は個人的にちんぷんかんぷんだった。全方位に不快キャラを配置し、不倫、いじめ、嫁姑問題、マスゴミなど胸くそテーマを全部乗せ。よくできた子どもたちの展開を考えると気が重い。同じ愚か者夫婦でも、NHK「3000万」の愚か者夫婦は自分ごとのような巻き込まれ感があった。
ドラマプレミア23「キンパとおにぎり~恋するふたりは似ていてちがう~」(C)「キンパとおにぎり」製作委員会
◆「キンパとおにぎり~恋するふたりは似ていてちがう~」(テレビ東京系、月曜11時6分)赤楚衛二/カン・ヘウォン
★★★★☆
挫折を引きずったまま小料理店でアルバイト中の大河(赤楚衛二)と、韓国人留学生リン(カン・ヘウォン)の1年の恋。海外の人とのドラマ共演は初めてという2人が、はじめましてから距離を縮めていく大河とリンにぴったり。財閥バトルや復讐(ふくしゅう)劇ばかりでなく、韓ドラはさりげない日常のキュンも得意。韓国人脚本家らのオリジナルで、丁寧なキャラクター造形あっての照れくさいせりふ、展開が自然でかわいい。「思ったこと、全部伝えればよかった」。大切な人を得て、手詰まりだった青春が少しずつ動き出し、小さな輝きに元気をもらえる。「1年の恋」というのがまた切なそう。
連続ドラマ「再会~Silent Truth~」(C)テレビ朝日
◆「再会~Silent Truth~」(テレビ朝日系、火曜9時)竹内涼真/井上真央
★★★★☆
子どものころに埋めたはずの銃が殺人事件に使われ、秘密を共有する幼なじみ4人が23年ぶりに再会。子どもたちが森の中で事件に遭遇するオープニングが「スタンド・バイ・ミー」みたいに不穏。初恋の人が刑事(竹内涼真)と容疑者(井上真央)に、という「ラブ」ミステリーゆえ、主人公のブレブレな捜査も味わいどころ。4人をロックオンした先輩刑事、江口のりこの圧が画期的で、ネチネチと友情の切り崩しが始まった3話から急にテンポが出て面白くなった。とんだ“筑前煮男”爆誕で秋ドラマ界を沸かせたばかりの竹内涼真が今度はシリアスという万能ぶり。
火9ドラマ「東京P.D.警視庁広報2係」(C)フジテレビ
◆「東京P.D. 警視庁広報2係」(フジテレビ系、火曜9時)福士蒼汰/緒形直人
★★★★☆
報道対応の「広報課」に配属になった敏腕刑事を通し、捜査現場の対立と葛藤を描く社会派警察ドラマ。すべての情報が集まり、あらゆる部署とメディアに関わる広報課は確かにドラマ向き。元警視庁記者らが原案で隅々にリアリティーがあり、「警察が作り出す冤罪(えんざい)」「実名報道の是非」などのガチンコテーマに重厚なスピード感あり。捜査力などまるで通用しない組織政治に放り込まれた主人公、今泉の苦悩を福士蒼汰がヒリヒリと立ち上げ、悔しさと自己嫌悪で何かが切れる音が聞こえてきそう。結局何もできなかったという結末も新しく、上等なドラマ性。
火曜ドラマ「未来のムスコ」(C)TBS
◆「未来のムスコ」(TBS系、火曜10時)志田未来/塩野瑛久
★★★★☆
28歳バイト女子の元に「未来から来た」という5歳の息子が現れ、一緒に父親の「まーくん」探し。2人のSFな出会いに節度があり、大味なドタバタ劇にしないチームの志。「マルモのおきて」の脚本家が原作マンガを手がけ、迷子、保育園探しなどの日常を通し、1歩ずつ親子になっていく2人の様子を志田未来と天野優くん(5)が最高の泣き笑いで見せてくれる。セットから小道具まで細かな描写を積んでストーリーに説得力があり、アップとロング、手持ちカメラの長回しなど、巧みなカメラワークが役者陣のうまさを引き立てる。3人の「まーくん」候補もうまい人ばかりで安心して視聴。
水曜ドラマ「冬のなんかさ、春のなんかね」(C)NTV
◆「冬のなんかさ、春のなんかね」(日本テレビ系、水曜10時)杉咲花/成田凌/岡山天音
★★☆☆☆
デリケートだがベッド方面には奔放という新感覚の不思議ちゃん。「名前を知れば安心するんですか」「それはなぜ?」。ぽつりぽつりと反応を楽しむ小悪魔ちゃんでもあり、イメージしていた「考えすぎてしまう人のラブストーリー」とは違った。多様性という大きなテーマを軸に、ドラマというより長回しのドキュメンタリーに近く、静止画のような男女の寝そべりトークは好みが分かれそう。主人公は小説家で、この作品も小説向き。人物たちの哲学的な問いかけは、文字で追った方が脳内宇宙を広げやすい。個人的に、この枠はさっそうとしたお仕事ドラマで見たい。
水10ドラマ「ラムネモンキー」(C)フジテレビ
◆「ラムネモンキー」(フジテレビ系、水曜10時)反町隆史/大森南朋/津田健次郎
★★★★☆
37年ぶりに再会した中学の映研部員3人が、美術教師「宮下未散」失踪の謎を追う。青春パートと現代パートが行き来する同級生ドラマブームのひとつだが、88年の世相や流行からSFチックな事件性を削り出すのがうまく、ウェルメイドな物語の予感。宮下先生役の木竜麻生は今期のキャスティング賞。少年たちのあこがれ、マチルダさんそのもので、ウルトラQのような作品の雰囲気を一身に背負う。NHKの元天文部ドラマに続き、この手の雰囲気がはまる女優さんは貴重。男子3人はマチルダとどんな約束をして、何を忘れたのか、手にする答えに期待。余談ですが私はガルマ派でした。
金曜ドラマ「DREAM STAGE」
◆「DREAM STAGE」(TBS系、金曜10時)中村倫也/池田エライザ/ハ・ヨンス
★★★☆☆
かつての天才プロデューサーが、落ちこぼれK-POPグループを育てて頂点を目指す。韓国推しのTBSが、ついに韓国キャストの方が多いK-POPドラマを日本の脚本で、という次のフェーズへ。1話はソウルが舞台の字幕ワールドで、さすがにターゲット不明で視聴率も異次元のフェーズへ。母親が病気、DV夫、地元との悪縁など韓ドラ要素満載。最先端のK-POPのはずが初披露曲は玉置浩二とか、「頑張れば夢はかなう」とか、全体的に昭和感がすごい。アイドル育成ドラマというより、スポ根の亜種として見れば昭和なベタも楽しい。なんだかんだ画角を1人で支える中村倫也の心意気とありがたみ。
土曜ドラマ「パンダより恋が苦手な私たち」(C)NTV
◆「パンダより恋が苦手な私たち」(日本テレビ系、土曜9時)上白石萌歌/生田斗真
★★★☆☆
動物の求愛行動から、幸せに生きるヒントを考える。雑誌の恋愛コラムを担当することになった編集者(上白石萌歌)と生物学者(生田斗真)の自称“薄っぺらい”コンビネーションがツボ。読者のお悩みをどんな動物視点で解決するのか、1話完結でさっくり楽しめる。「マッチングアプリでモテる人の悩み」「フラれる時のせりふの悩み」など、毎回のお便りが登場人物の人生に重なり、2話の宮澤エマはすてきな後味。「ただ選ばれるのを待っているやつは永遠に選ばれない」。トップモデル、アリアさん(シシド・カフカ)の名言が男前で、マネジャー柄本時生と底抜けのコンビネーション。
日曜劇場「リブート」(C)TBS
◆「リブート」(TBS系、日曜9時)鈴木亮平/戸田恵梨香/松山ケンイチ
★★★★☆
妻殺しの罪を着せられた平凡なパティシエ、早瀬陸(松山ケンイチ)が、悪徳刑事の儀堂歩(鈴木亮平)になりすまして真実を追う。誰かの顔に変えて「リブート(再起動)」するというマンガみたいな概念、ネーミングを発明し、逃亡系ドラマに新ジャンルを打ち出した日曜劇場のガッツ。「儀堂歩」の中にちゃんと「早瀬陸」を感じられる鈴木亮平のすごみが、しっかり物語に引っ張ってくれる。「この人もあの人もリブートかも」という伏線が随所にあり、ネットの考察ファンも楽しそう。「あと16時間」みたいなヤマ場作りも手堅く、戸田恵梨香ら女性キャラがすっきりと自立していてかっこいい。
【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)